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お父ちゃん⑤

話は、お父ちゃん④に戻って、僕が小学校2年生の頃から、父の酒での酷いエピソードをあと2つ程と、それから彼が改心し、僕ら家族の為に大好きなお酒を4~5年一切飲まず、一生懸命働き続けた期間のことを、締めの前に出来るだけさらっと書こうと思う。

2.〈みつおっさん殴られ前歯折れる事件〉

コタツ選手権の頃は、一番酒を飲んでいたのだと思う。仕事がない時は朝からやくざ映画を観ながら飲んでたし(小学校低学年で行ってきます!の時間帯に仁義なき戦いとか...)、そんな飲み方のせいか顔色が青白いというか黄色掛かってた。

そういう生活をしていると、必然的に良い出来事は起こらない。

僕の運動会の前日、じいちゃんの一番末っ子のヤクザ者(背中に昇り鯉の刺青)の、”みつおっさん”と、僕の家の近所で、体は細くとても小さい意地の悪そうな顔をしていて、父と同じ大工をしているのだが、父以上に酒癖が悪く、揉め事や争いごとが好きでクセの強い、”ヨンボーおっさん”と父の三人で僕の家で飲んだのだ。

絶対的に悪い事しか起きないと感じた母は、それは今でも謎だが、自分と弟を家に置いて、じいちゃんばあちゃんの家に避難していた。

やはり19:30過ぎた頃だろうか、”みつおっさん”と、父の怒鳴り合いが始まり、”ヨンボー”は、それを焚き付ける。

1階の襖を挟んで直ぐ横に寝ていた僕は、(弟は寝ていた)襖をそっと開けその状況を見た。

すると、もう既にグデングデンの父のパンチは余裕で空を切り、”みつおっさん”にボコボコにされていた。今思うと、最初からこうなるように仕向けられた会だったのかも知れない。

僕は、幼いながらに、”みつおっさん”を少しだけ開けた襖の隙間から睨み付け、いつか殺ってやろう。そう思ってたし、今でも健在な”みつおっさん”を見付けた時には、三つ子の魂百まで。ではないが、狙っている気持ちも少しある笑。それよりも”ヨンボー”の部屋には入らず、玄関の上がりかまちの所に座り、意地汚く焚き付けるシーンを見たことの方が幼い僕には怖かった。

次の日の運動会は、勿論父は欠席で、家に帰ると昔ながらの氷嚢で真っ赤になった顔面を冷やして仰向けに寝ていた。

その喧嘩で、前歯一本折れたのだが、暫く経ってからの夏、スイカを食べている父が、「前歯から種が出しやすいけん丁度ええんよー笑」と言った時は、なんだか人間の強さを感じた。

3.〈飲酒運転軽トラ海落ち事故〉

同じ時期、もう一つ大きな出来事があり、酔狂を始めた時に、父から一時逃げる為、母が弟をおんぶし、僕の手を引いて少し高台にある丘まで逃げるのが常だったのだが、その岡から見える海添いの道路を、猛スピードで軽トラが夜の夜中僕らが逃げた直ぐ後に走って行った。。

「あれお父ちゃんのじゃなかったか?」

と母は僕に聞いたが、それ以外の誰だと思うのか?と聞きたかった。

そのままその場所と違う3m程ある崖から、軽トラごと海に落ちたものの、潮が引いていて大きな岩も無かった為、奇跡的に無傷で、翌日、知り合いの近建設会社のクレーンに引き上げてもらい、警察のお咎めも無く事が済んだということもあった。

お父ちゃん⑥に続く

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