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卒業して8ヶ月…九大MHAの思い出

この記事は九州大学医療管理・経営学専攻22期 Advent Calendar 2022 12日目の記事です。

noteを書き始めようと思って3日坊主になり放置しておりました。今回、九州大学MHA(Master of Health Administraition;医療経営管理学修士) 22期の皆様からお声掛けいただき、久しぶりにnoteにログインをしております。お声をかけてくださった松岡さんに感謝です。


なぜ九大MHAに進学したのか

普通、医師がMHAなんて学位に関心を持つことが無いと思うので、ここに至るまでの経緯を簡単にお話させてください。

私は2012年に山口大学医学部を卒業しました。私は循環器内科学に興味を持ち、当時山口県で最も心臓カテーテル手術件数の多かった徳山中央病院で初期研修をしました。

そこで「心臓が悪い人はたいてい他の臓器も悪い」ということを感じ、一度系統だって全身を診察できるようになりたいと考え飯塚病院の総合診療科で1年間後期研修を行い、そのまま同院の循環器内科の後期研修を行いました。

同院では重症かつ複雑な患者さんを多く担当し、「心不全の緩和ケア」に関心を持ちました。

その後は飯塚病院 連携医療・緩和ケア科に所属し、緩和ケアについて系統的に学びつつ、院内外の心不全緩和ケア活動に取り組むことになります。

上司や先輩の誘いもあって「九州心不全緩和ケア深論プロジェクト」「心不全緩和ケアトレーニングコース」などのプロジェクトに携わりました。私にとって「心不全緩和ケアの普及・啓発・実践」がライフワークになりました。

いろんな方の支援を受けて、飯塚地区では一つの心不全緩和ケアのモデルケースのたたき台を作ることができました。今度はそれを他の地域や国レベルで実装するために、医療の質や医療経済に対するエビデンスが必要だと考えるようになり、2020年4月に九州大学大学院医学系学府医療経営管理学専攻に入学しました。


大学院入学と同時にCOVID-19の流行

COVID-19の流行が始まったばかりで混乱の中、完全オンラインで講義が始まりました。

当直明けに上島コーヒーを飲みながら受講

スペックのしょぼいノートパソコンで、当時まだ不安定さが残るZOOMの講義になんとか耐えつつ受講をしていました。最初は食卓の上にパソコンを置いて講義を聞いていましたが、椅子に1日8時間も座っていると腰と尻が痛くなりとても続けられる状況でなかったので、即PC用のチェア、デスク、サブディスプレイを用意してオンライン講義用の環境を整えました。この頃は何を注文するにしても欠品だらけだったのですが、サンワダイレクトだけは即日発送をしてくれました。いまでも愛用しています。

上の写真にもありますが、PCでLIVE講義をみつつ、iPadでスライドにメモをしながら、別ディスプレイにはSlackを写して、生徒同士の裏チャットで知識を共有していました。

オンライン大学院考えている皆様、サブディスプレイ、ペン書きできるタブレット、長時間受講に耐えられる椅子は絶対にあったほうが良いです。

九大MHAでは毎週火曜日の朝から晩まで講義があり、時折土日に集中講義があります。私は有給と当直明けの休みを活用しながら受講を続けました。こうした大学院進学を支えてくれたのは職場の理解と同僚の支えあってのものです。本当にありがたい限りでした。


授業を邪魔する長男(0)

授業の思ひ出

肝心の学びについてですが、講師も院生もみな初めての完全オンライン環境にも関わらず、私はかなりのクオリティで学ぶことができたと思います。オンラインだと授業を聞きながら疑問があってもすぐに調べることができますし。

その学びに貢献してくれたのが同期で作ったSlackワークスペースです。授業を聞きながら、裏でSlackのチャットでやりとりをしていました。

ZOOMのチャットだと講師の先生も見るのでお上品なことしかかけないのですが、この裏チャットでは同期だけでざっくばらんにいろんなことを話すことができました。

てか裏チャットが存在する、なんてことをオープンにしないほうがいいんですかね汗 まあいっか…どうせ先生達もわかっていたことでしょう…w

裏チャット、といってもふざけることはそんなになく(多分)、学んだことを即アウトプットしたり、予備知識を共有することで学びを深めることに貢献したと思います。こうしたチームチャットツールにおいて、投稿の心理的安全性はとても重要です。

自分のミスを気さくに共有できる仲間たち。
それにしても医療安全管理論のレポートでインシデントを起こすとは…

学んだことを即アウトプットできるというのはすごく大事だと思います。

あと試験対策として、オンラインで勉強会もやりましたね。みんな直接顔をあわせたり、飲みに行くわけではないので、全員お互いが「こいつはめちゃくちゃ優秀なんじゃないか…」と良い意味で緊張感を持って、探り探りの中で接していました。馬場園教授も「そのせいか20期は成績が良かった」と話していました。ほんとかなあ…。

当時私は卒後9年目の医師だったのですが、9年目となると前線で働きながら後輩を教育する機会も多くなり、一方的に新しい知識を暴露するという機会は少なくなります。

その意味では、大学院では毎週ものすごい量の新しい知見にふれることができ、とても日々楽しく過ごしていました。コロナ巣ごもり期でもありましたし、人生で一番本を読んだ時期かもしれません。

馬場園教授との2ショット

ゼミは対面がよかった…

ゼミについては、対面が良かったな…と感じます。私は馬場園教授のゼミに参加していましたが、基本はオンライン開催でした。オンラインだとどこにいても聴講することはできるのですが、どうしても聞くばかりになったり、質問のやり取りも形式張った感じになってしまいますよね。ZOOMだと同時にしゃべると声が聞こえなくなっちゃいますし、誰が喋ってるかわからなくなります。

ずーっとオンラインでしたが、最終ゼミの時、初めて対面で行われました。ちなみにテーマは「『国家』と医療」でした。

これがめちゃくちゃ自分の印象に残っていて、あーもっとゼミを対面で聞きたかったなー…と思うようになりました。

対面だと議論のスピードも早く、同時に複数の人と話すことができます。即席のディスカッションも発生しやすいのではないかと思います。

私のゼミでの研究テーマはMedical Neighborhoodにしました。おいおい、心不全の緩和ケアはどこに行った、と思われたかもしれません。

これは大学院に行かなければ触れることのできなかった概念だと思います。これまで私は「心不全の緩和ケアチームは、費用対効果に優れる」みたいな研究を出そうとしていましたが(いやこれはこれで必要だけど)、そもそも担い手がほぼいないわけです。なので「どうすれば心不全の緩和ケアを地域に実装できるか?」という命題を優先して考えるようになりました。

そう考えると、地域包括ケアシステムとは異なるヘルスケアシステムのアップデートが必要で、結果Medical Neighborhoodにたどり着きました。

成果物は難産でしたが、自分の大学院における学びの集大成になり、そしてこれからのライフワークの起点になりました。

私はTwitter でMHA進学に関する相談を受けることが何度かありましたが、「大学院にいけば論文をかけますか?」と尋ねられたことがあります。

それに対する回答は在学中に論文化まで目指す方は、ある程度コミットする時間の確保と経験値、スピードが重要です。私はsubmit直前まで温めた論文がまだ手元にあります…。

最終発表 with 次男(0)
自分はトップバッターだったので、後は気楽に聞けました。笑

卒業式で初対面

20期が初めて全員顔をあわせたのは結局卒業式でした。ずーっとオンラインで顔あわせていたのに、初めて顔をあわせるとなんだか不思議な感覚になりました。

もっと飲みに行ったり、プライベートでも交流したかったなあという気持ちにもなりますが、いまでもゆるくSlackでつながっているので、コロナが落ち着いてきたらぜひとも集まりたいなという思いです。

運良く総代としてガウンを来て卒業証書を授与させてもらいました。
4年に1回、MHAから総代が選ばれます。次は2026年卒業の人たち…だと思います。

九大MHAで学ぶ意義

医療の分野は職人気質の人が多いと思いますが、職人だけあつまっても医療は成立しません。人材マネジメントやオペレーション、マネジメント、医療経営・医療経済、政策、疫学といった、普段は注目されないものの重要な領域がある一方で、その学びは軽視されがちです。MHAでは医療に特化したヒト・モノ・カネ・情報などのマネジメントに関することを系統だって学び、最初の一歩を踏み出すことができます。

MPHとMBAの中間的存在、と言われることがあります。私自身も一時期GLOBISのMBAに単科性として通っていましたし、周りには複数MPHに通う先輩や後輩がいましたが、それらの話を聞いてもMHAでの学びは独自性が高いように思います。

もしかすると皆さんに関心があるかもしれない話題として、転職活動について少し触れます。

残念ながら「 MHAだから転職できた」といえるほどMHAの知名度がないのが現状です。なのでキャリアチェンジやキャリアアップに学位を活用されようとする方は、「○○を学び、実践できるようになった」といえるものを身につけることを意識して学ばれると良いと思います。

私は大学院修了後、2022年8月に現在所属している福岡ハートネット病院に異動をしました。当院では「ありたき姿」として医食住の街づくりを掲げており、これが自分の研究したMedical Neighborhoodにも近いモデルだと考え、ビジョンの一致から転職に踏み切りました。

福岡ハートネット病院のありたき姿

大学院では「パワー(地位)がないとシステムの変革には携われない」というアドバイスもいただき、現在は総合内科・循環器内科の診療に加え、地域連携支援部部長を拝命し、ありたき姿の実現に向けて取り組んでいます。

私はMHAで学んだ①患者数や医療機関の数などのオープンデータ ②地域包括ケアシステムや医療計画などの知識 ③MHAで知り合った人の繋がり などを活用し、在宅医療部門の立ち上げを行いました。

転職したときにはノーマークでシュートを打てるくらい環境が整っていたので、私が転職して4ヶ月で強化型在宅療養支援病院の届け出を行うことができました。今後は仲間を増やし、新しい景色を見るために日々邁進するつもりです。

チャレンジし続ける日々で大変なこともありますが、それでも自分のやりたいことを、これからの医療で必要だと感じている仕事を、学びを生かして実践するというのはとてもやりがいがあることだと感じています。

もし、このnoteを読んでMHAに興味を持たれた方、進学してみたいけど疑問がある方、大森と一緒に福岡市でMedical Neighborhoodを作りたいという方、お気軽にご連絡お待ちしております!

ここまで読んでくださりありがとうございました!

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