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【紀行文】MOA美術館の茶室にて安らぎのひと時を ~MOA美術館その2

 北斎の絵については、タコ(蛸と海女)かと神奈川沖の大波(神奈川沖浪裏)が印象に強い。
 今回のメインは神奈川沖浪裏であった。北斎のぶっ飛んだ発想や奇抜なアイディアは、様々な解釈とパロディー・オマージュが生まれているようだ。 今回、アニメーション映画となっているものもあった。

神奈川沖浪裏

 この日、芸術作品の鑑賞とそして少々美術館周りを逍遥して気を紛らわしたいと言う思いがあった。最近妙に不安感に取りつかれて、しょうがないのだ。
 外は霧でけぶっていたが、雨は上がっており、傘を差さずに歩けるようである。このタイミングを逃すまじと、美術館の庭園内にある茶室へ向かった。

茶室 一白庵へ

茶室「一白庵」へ

園内の門

茶室「一白庵」とあることから、日本庭園とセットであり、なかなかに雰囲気が変わり、趣があってよかった。
 茶室と言うよりも抹茶の飲める喫茶と言うべきであろうか、多くの人がいた。店内に入ると通常の抹茶を飲めるメニューと何やら芸術家が造った抹茶碗で特別に飲めるメニューがあるという。
 特に予約客もいなかったようなので、その芸術家の抹茶碗で飲むこととした。通常客の座っているテーブルの奥に畳敷きの部屋があり、茶室風になっている。

床の間に飾られていた掛け軸と茶花


 釜や書院造の棚などがあるが、どうもあまりここでお茶を点てている雰囲気はなかった。部屋に通されたので、床の間の掛け軸を見た。滝壺の絵であり、涼しげな感じがよかった。
 やがて襖が開き、和服姿の女性が茶菓を持ってきた。干菓子と水色の飴を固めたようなものであった。こちらを口に含み味わっていると、じきに抹茶碗が運ばれてきた。

釜は置いてあるが、使う気配はなかった
出された干菓子

 少々お茶のたしなみがあるため、こういう時は気後れせずにいただけるのは嬉しい。芸術家のお椀は、ずんぐりむっくりとした形で、厚ぼったく、素人くさい感じがした。一言でいえば、あまり出来が良くないと思った。
 よくよく聞いてみると、これは先ほどアニメーション作家が人間国宝の指導を受け、初めて造った抹茶碗であると言う事だった。
 これでは素人が作った茶碗と変わらないのではないかと思ったが、そう言ってしまっては場がしらけるので、なかなか芸術家らしい、面白い風景があると言うような、差しさわりのない話をしてその場をやり過ごした。
 茶室は改めてみてみると素敵だった。
 抹茶を飲み心を落ち着かせ一息ついた後、ゆっくりと立ち上がり、給仕の方にお礼を言って茶室を出た。園内をゆっくり散策し、ふたたび美術館に戻った。

窓の向こうに煙る熱海の町

 時間があったので、もう一度最初の展示室から、流しで見て回った。30分ほどで見終わり、出口近くの喫茶店で持参した文庫本を読むことにした。
 窓の下の熱海の町はあまりよく見えなかったが、それでも大きく開けた窓の向こうの景色というのは、心を軽くさせる。
 少し落ち着いたという感触を持って、この日は帰宅した。夕方はだいぶ涼しくなり、夏も終わりが近づいているのかもしれぬと思った。




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