清水エスパルス対湘南ベルマーレ_1

清水対湘南 レポート ~”良かった”清水を走力と11番で破壊~ [2019J1リーグ第5節]

インターナショナルマッチウィーク明けの第5節。今だ未勝利のホーム清水と、ここまで2勝2敗の8年目曺貴裁監督率いる湘南の試合を今回は取り上げます。試合は、1-3で湘南の勝利。清水も先制された後追いつきますが、湘南がCK2発と松田のゴラッソで3点を奪い、順位を5位に上げました。清水は、特に前半良い内容でしたが、トンネルを抜け出すことはできず。

もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。

J1リーグの分析マガジンはこちら↓(3節で清水について書いています)

ゴール 清水エスパルス 1 : 3 湘南ベルマーレ

清水 43’金子

湘南 23’菊池 45+1’フレイレ 70’松田

スターティングメンバー

まずはスタメンから。清水は、前節神戸戦で終盤に同点ゴールを挙げた鄭大世がスタメン入りし、中村は体調不良でメンバー外となったため左SHには石毛が入り、今シーズンJリーグデビューを果たしてから2試合連続ゴールを記録した滝は、U-20代表の遠征帰りということでベンチスタート。湘南は、右シャドーに武富が入り、菊池と松田がボランチを組み、斎藤がメンバーから外れ、前節仙台戦からは1人スタメンが変わりました。

清水・攻撃 湘南・守備 ~前半良かった清水しかし後半...~

まずはホームの清水の攻撃、湘南の守備から。

SB(松原、エウシ―ニョ)が高い位置を取って、SH(石毛、金子)がインサイドレーンにポジショニングします。

湘南は、敵陣ではアグレッシブにプレッシングをかけますが、この4-4-2と5-4-1のマッチアップだと、第一プレッシャーライン(山崎)が1対2の数的不利を抱ええています。もしこのままで行くと、山崎がかなり献身的に守備をするのでカバーできるかもしれませんが、さすがにフルは無理なので、

この図のように、CF山崎の脇から持ち運んで数的優位ライン間に持ち込まれ、ライン間へのパスコースを与えてしまいます。

ですが、湘南はプレッシングを大きな武器の一つとしているチームなので、やはり相手の4-4-2に噛み合わせをハメるプランを用意していました。

このように、右SH武富が1列前に出て、CF山崎と2トップを形成し、相手2CBに2対2でプレッシングをかけ、それに伴って右WB鈴木が相手左SB(松原)、右CB山根が相手左SH(石毛)を担当します。左サイドは、そのままなので、左SHの梅崎が相手右SB(エウシ―ニョ)、左WB杉岡が相手右SH(金子)を担当。こうすることで、フルマンツーマンにして、プレッシングをかけていました。では次に自陣での守備。

自陣での守備は、全くプレッシングを行わず、5-4-1ブロックを組んで3ラインをコンパクトにし、ライン間、DFライン裏のスペースを消して構えます。

続いてそれに対する清水の攻撃の重要なコンセプトを紹介します。

コンセプト①

CB(立田、ファン・ソッコ)、もしくはボランチ(竹内、河井)から高い位置を取っているSB(松原、エウシ―ニョ)がボールを受けると、インサイドレーンにポジショニングしているSH(石毛、金子)が、斜めにランニングして、インサイドレーン裏に飛び出す。そこに、SBがスルーパスを出し、飛び出したSHからの折り返しなどのプレーでゴールを狙う。

コンセプト②

CBやボランチからライン間に縦パスを打ち込んで、近距離に位置しているアタッカーのコンビネーションで中央突破。

この2つのコンセプトを、前半は上手くできていて、ライン間に縦パスを入れることもできていましたし、インサイドレーン裏にスルーパスが出てSHが飛び出すシーンもありました。43分の同点ゴールも、ライン間の右インサイドレーンで受けた鄭大世が左足でシュートを打ち、そのシュートが相手DFに当たってコースが変わったところを金子が拾い、シュートを決めました。

しかし後半、清水は、前半のような攻撃はできませんでした。

この図のように、後半は湘南のSB(松原、エウシ―ニョ)に対するプレッシャーがより強くなったように感じました。とても激しくSBにプレッシャーをかけ、SBに前を向かせず、バックパスをさせていて、SBからSHへのスルーパスという攻撃をさせず、ブロックから追い出し続けました。その強度の高いプレッシャーを、90分フルでかけ続けるのは、相当なものです。さすが湘南、これぞ湘南、という象徴のようなプレーでした。

清水は、この湘南の絶え間ないプレッシャーを交わしてゴールを奪う術は持っておらず、ずっと湘南のブロックの外でボールを回すことになってしまっていました。

清水・守備 湘南・攻撃 ~湘南対策なしへの疑問~

湘南の攻撃の分析に行きましょう。

清水は、いつものことですが、可変システムを採用せず、4-4-2でセット。清水は第一プレッシャーラインが2人なので、湘南が3対2の数的優位を獲得しています。そして、清水は、その数的不利に対しての明確な解決策、プレー原則は準備されていませんでした。なので、

上図のように、2トップ脇のスペースを左右のCB(主に右CBの山根)が使い、時間がある状態でズバズバライン間に縦パスを入れ、ダイレクトでスピーディーな攻撃を湘南は展開していました。

清水は、この図のようにSH(石毛、金子)が出るシーンはありました。しかし、事前に練習をして、落とし込まれたプレー原則ではありませんでした。なぜなら、SHの出て行くタイミングが遅く、寄せるスピードも中途半端だったからです。「俺が行かんとあかんっぽいな・・・」という感じです。なので、出て行くことは出て行っていますが、湘南のCB(対象は右の山根、左の小野田)へのプレッシャーにはなっておらず、時間を奪うことができていなかったので、SHが出て行っても縦パスを入れられていました。

ですが、湘南が3バックでプレーすることは絶対に清水のヤン・ヨンソン監督はじめスタッフ陣も分かっていたはずです。しかし、SHの出て行く守備は、プレー原則で落とし込まれたものではない、中途半端なものでした。もしも、本当に練習で出て行く守備を、湘南対策を落とし込んでいなかったのなら、それはそれは問題でしょう。

しかし、もう一つ考えられる原因があります。それは、選手のコンディションが悪かったから。しかし、その可能性はあまりないでしょう。なぜなら、SHの石毛、金子の2人共、代表チームに招集されていたわけではないので、2週間のインターナショナルマッチウィークでの疲労、という理由は成り立ちません。なので、この可能性は無いと言っていいでしょう。

これらを踏まえると、成績以上に清水の未来は暗いのかもしれません。ヤン・ヨンソン監督の日本語をインタビューで話したりする部分は好印象ですが。

湘南 11番・山崎の脅威

この章では、個人のパフォーマンスにフォーカスします。湘南のCFを務める11番、山崎です。

この試合、山崎のプレーは絶大な存在感を誇っていました。2つのゴールに繋がったプレーを紹介します。

(山崎の落としを受けたのは梅崎でした。)

1つ目のシーンは、1点目のCKになったカウンターのシーンです。エウシ―ニョからパスを受けた竹内が金子に縦パスを入れ、金子の北川へのパスが短くなったところを小野田が奪います。そうすると、攻め残りをしていた山崎が、下りてパスコースを作り出し、小野田がそこに縦パスを入れます。山崎が河井を背負いながらワンタッチで梅崎へのポストプレーをこなし、梅崎が運んで山崎にスルーパス。ファン・ソッコがクリアしたので、CKを獲得しました。

では2つ目。

こちらは2点目のCKを獲得したシーンです。ゴールキックを山崎が松田に落とし、松田から山根に展開。石毛が出て行きますが間に合わず、山根が少し下りてCBのファン・ソッコから離れることでフリーになった山崎に縦パスを入れ、山崎がワンタッチで鈴木にスルーパス。松原が空振ったので鈴木が抜け出し、クロスが相手に当たってCKになりました。

この2つのシーンは、両方、下りて相手CBから離れることでフリーになり、縦パスを引き出しています。(1つ目は下りた後に河井につかれていますが)この動き出しが重要なポイントで、どうしてもCBとなると、激しくコンタクトされてしまいます。ただ単にCBを背負った状態ではなく、そのCBから離れることでフリーになり、自分に有利な状況を作り出しています。それから、トラップせずにダイレクトで正確なポストプレーができる、というのも良い所です。このようなFWは日本に中々いませんので、もっとゴール数が増えれば(まだ0ゴール)、A代表にも呼んでほしいくらいの選手だと個人的には思っています。

総括

清水 前半は、攻撃の二つのコンセプトが上手くいき、ライン間に縦パスが入る回数も多く、良い攻撃ができていた。しかし、後半は、湘南の前半より強度の高くなったプレッシャーにSBを封じ込まれ、SBが持っても、SHにスルーパスを出すことはできず、ブロックの外に追い出され続けた。守備では、第一プレッシャーラインが数的不利を抱えていたが、明確な解決策は用意されておらず、SHの出て行く守備は中途半端。2トップ脇からズバズバ縦パスを入れられた。湘南が3バックであることは当然ヤン・ヨンソン監督も分かっていたはずだが。本当に対策が練習から落とし込まれていなかったのなら、成績以上に未来は暗いのかもしれない。

湘南 敵陣での守備では、相手2CBに対して、右SHが一列前に出ることで、フルマンツーマンを作り出してプレッシングをかける。自陣では、プレッシングを全く行わず、5-4-1ブロックを組んでスペースを消して構える。攻撃では、相手2トップ脇から左右のCB(主に右CB山根)がライン間に縦パスを入れ込むことができ、ダイレクトでスピーディーな攻撃を展開することができた。また、CFの山崎が素晴らしいプレーを見せ、何度も縦パスを引き出してポストプレーをこなし、攻撃の起点となっていた。また、縦パスを引き出す時の、少し下りて相手CBから離れてフリーになる動き出しもとても良い。日本にはなかなかいないタイプのCF。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

ご支援いただいたお金は、サッカー監督になるための勉強費に使わせていただきます。