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ビルドアップにおける「マークの外し方」を考察 ~All For One~

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先週はお休みしました。

今回はいつもとは違ったことを書こうと思います。いつもは試合分析だったりチーム分析ですが僕が現地観戦した試合で感じたこと、そこから考えたことについてアウトプットしてみたいと思います。
#わっきーサイクル

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今回僕が考えるきっかけとなったのは埼玉スタジアム2002で行われたJ1第34節浦和レッズ対ガンバ大阪です。試合としてはガンバ大阪が3対2で勝利。浦和は他会場の結果によっては16位に転落し昇降格プレーオフを戦うことになるかもしれませんでした。

まずは一応スタメンを見ておきましょう。

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ホームの浦和は3-4-2-1。攻撃では3-3-2-2に可変していました。GKは西川、フィールドプレーヤーは岩波、鈴木、槙野、橋岡、山中、柴戸、青木、柏木、長澤、マルティノスの10人。興梠は家族の事情でメンバーから外れました。
アウェーのガンバは東口、キムヨングォン、三浦、菅沼、藤春、小野瀬、遠藤、倉田、矢島、アデミウソン、宇佐美の11人がスタメンに名を連ね、システムは3-3-2-2(5-3-2)です。

ここからタイトルにもした「ビルドアップにおけるマークの外し方」について考察していきたいと思います。この記事では浦和のビルドアップをもとに考察していきます。

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この試合浦和は相手のガンバがハーフライン付近に第1PLを設置し、構える守備でしたのでボールを保持することには苦労していませんでした。
その中で最前線のCFマルティノス(11)は相手DFと常に駆け引きを繰り返しておりこまめに動き直してマークを外そうとしていました。
しかし、周りの味方(セカンドトップ気味の柏木(10)、左IH長澤(7)、右IH柴戸(29)など)は足を止めていてパスコースを創出する動きが少なくマルティノスが孤立している状態となっていました。
それにより、

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マルティノス自体はマークを外していて縦パスを受けれる状態なのに周りがパスコースを作っていないため相手からするとマルティノスにパスが出るのはわかり切っている状態で、孤立している且つ相手の複数の選手に狙われてしまっています。なのでボールを保持しているパスの出し手側からするとパスがとても出しにくくパスコース自体はあるけどパスを出しにくい状態となっていました。
ということはボールが前進しないということです。この試合の浦和はマルティノスが完全に孤立したことでビルドアップが困難になり特に前半は攻撃が全くうまくいきませんでした。

ではここで「マークを外す」について考えてみたいと思います。
マークを外すというのは、死角に入る動きや死角から前に出る動き、ステップやアジリティで相手の重心の逆を取る動きで自らをフリーにすることです。
次にこの「マークを外す」というプレーを局面に分けて考えます。
まずクロスが上がってくるエリア内ではどうでしょう。ゴールが非常に近いエリア内では少しのずれやマークの外れが決定的なプレーに繋がります。攻撃側からすればたった一人であってもストライカーがマークを外してフリーになりそこに精度の高いクロスが入ってくればOKですよね。それでゴールになるわけですから。
では「ビルドアップ」の場合はどうでしょうか。僕はエリア内とは大きく話が変わると考えています。
エリア内のクロスが入ってくる局面というのはボールを正確に前進させるのではなくシュートを打つ・決めることが目的なので前述のようにたった一人でもフリーができればゴールになり得ます。
しかしビルドアップの局面では相手の守備組織は崩れておらず対峙する人数が多い。決められたシステム・タスクに基づいて立ち位置を取る10人の相手がいます。
もしもこのビルドアップの局面でもエリア内と同様にたった一人であってもマークが外れていれば充分ボールを前進させる可能性は高くそれでOKなのであれば先ほど記述したガンバ大阪戦の浦和のようなことにはならないはずですよね。だってマルティノスはフリーですしボール保持者からすればパスコースはありますから。

じゃあなぜビルドアップの局面ではエリア内同様にはいかないのでしょうか。僕は「相手の意識が分散されていないから」だと考えています。
エリア内の場合、相手はゴールに向かって戻らないといけないしその中でマークを管理しないといけないしボール保持者も確認する必要があるし...で既に相手の意識は分散されています。だから何人もがマークを外さなくてもゴールを奪うのは充分可能です。
この考え方でいくといくらエリア内と言ってもクロスと言っても、相手が完全に守備組織を整えた状態から無理やり上げる「上げさせられた」と言われるクロスは効果的でないことが分かりますよね。
しかしビルドアップの場合はゴールに向かって急いで戻るというように激しく動いているわけではないですから相手(攻撃側)を除く外的な要因から意識が分散する可能性は大幅に低くなります。ですのでベースは意識が分散されていない状態。相手のボール回し、自分のタスクに守備側は集中しています。
だからビルドアップの局面ではたとえマークを誰かが外したとしても、パスコースがそこしかないと相手はその選手に意識を集中させることが出来るのでパスコースが一つだとビルドアップが難しくなるのです。
ここからは少し数字を用いたいと思います。

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上図の中に書き込んだように先に述べたパスコースが一つしかない状況は、相手の意識レベルの高さを1-5(5が一番高い)の5段階で評価した時に、マークを外したとしてもマルティノスへの意識レベルは4,5くらいとなり、マルティノスを狙い撃ちできる状態。
そこでビルドアップを円滑にしスムーズに前進するためにはどうするのかという話になるのですが、結論から言えば「相手の意識を分散させる」ことになります。もっと簡単に言えば「複数のパスコースを作る」ことになります。「複数のパスコースを作る」と聞くとなんだそんなに簡単な話か、となりがちですが僕の感覚ではその「複数のパスコースを作る」の一歩先、「どう」複数のパスコースを作るのかが議論されていないんじゃないかと。
なのでこの記事ではそのビルドアップにおける「マークを外す」を考察し、「マークを外す」を定義づけしてみようというわけです。

では「相手の意識を分散させる」について書いていきます。
相手の意識を分散させるということは、自チームの個々人に対する相手の意識レベルが4,5になっていないようにする必要がありますよね。マルティノスへの意識が4,5にならないようにしないといけないのです。
相手の意識レベルを下げるためには「複数のパスコースを選手間に作る」べきです。選手間であるべきなのは、相手の目の前で受けても潰されてしまうし、それはパスコースではないから。
相手の選手間に位置取り、パスコースを作ることで相手は攻撃側の一人に対して複数の選手が意識をしなくてはならなくなります。その意味でハーフスペースは効果を発揮していて、ハーフスペースに位置どってパスを引き出すことで基本的に相手はCBとSBがその選手を意識しますよね。
このように相手の複数の選手に自らの存在を意識させている選手を複数作り出すとどうなるのか。
「相手の意識が分散」します。例えば、相手が4バックだとすると相手SBはハーフスペースに位置取っている選手(IH)と大外で幅を取っている選手(WG)が気になり、CBはハーフスペースの選手(IH)とCB同士の間に立つCFが気になる。CHの選手はハーフスペース(IH)も気になるけど自分の手前にいる攻撃側ACも気になる。
この状況だと、攻撃側のIH,WG,CF,ACに相手(守備側)は意識が分散していることがわかると思います。複数のパスコースを作ることで守備側のSB,CB,CHは各々が攻撃側の複数人を意識しているので必然的に一人の選手に対してレベル4,5くらいの意識を向けて対応することはできず、レベル1-3くらいになります。

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そうなると守備側はどの選手も誰か一人に対して強度の高いマークが難しくなりますから攻撃側としてはフリーが生まれます。つまり「マークを外せている」わけです。ここで「マークを外す」というワードが帰ってきましたが、ビルドアップの局面ではここまで書いてきたように複数の選手の立ち位置によって相手の意識を分散させて自チームの個々人に対するマークの強度を低下させることではじめて「マークが外れる」のです。
つまりビルドアップでは「一人」のマークを外すために「チーム」の立ち位置、動き出しが必要。ですからビルドアップは「All For One」なのです。
また、それだけではありません。「一人」のマークを「チーム」で外したとき、「チームのマークも外れています」。な先ほどから述べているように一人のマークを外すためには相手の意識を分散させ個々人に対するマークの強度を低下させなくてはなりません。この「相手の意識を分散させる」ができている時というのは「一人」だけでなく「複数」のマークが外れています。なぜなら相手はどの選手に対しても意識レベルが下がっており、レベル4,5のような強度の高いマークはできずレベル1-3くらいの強度になっているからです。
一人のマークを外すための動きによってチームのマークを外すことが出来る。チームのマークが外れているということはボール保持者からすると「複数のパスコースが生まれている」ことに繋がります。複数のパスコースがあるとボール保持者はラインを超えるキーパス(縦パス)が入れやすくなり前進がスムーズになります。ですから「相手の意識を分散させる」はビルドアップにおいて非常にキーを握るコンセプトになっていると思います。

[まとめ]

今回はいつもとは目線を変えて「ビルドアップ」の局面における「マークを外す」ということの定義づけにトライしました。本文中でも触れたように一見「なんだそんな簡単なことか」と読者の方が感じるような記述もあったかもしれませんが僕自身はこの記事で書いたことはあまり議論されていない、語られていない部分だと感じていますし、この定義づけは意味のあるものだと信じています。

エリア内とビルドアップにおける「マークを外す」の違い、ビルドアップで非常に鍵を握る、大原則ともいえる「相手の意識を分散させる」こと。そしてビルドアップとは「All For One」であり、それが出来た時「個人」だけでなく「チーム」のマークも外せているということ。また、これはビルドアップにおいて重要であると同時に攻撃における大原則でもあるのかなと。

以上、現地観戦で得たインプットからのアウトプットでした。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

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