シャルケ対ライプツィヒ_1

シャルケ対ライプツィヒ 分析 ~何十年か前にタイムスリップしたのか?持たせたいVS持たせたい~ [2019年3月マンスリー分析③]

ライプツィヒ分析3試合目。チャンピオンズリーグR162ndLegのマンチェスターシティ戦で0-7の大敗を喫した後、テデスコ監督を解任する処置に出たシャルケとの、フェルティンスアレーナでのアウェーゲームです。

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ゴール  シャルケ 1  :  1  ライプツィヒ

ライプツィヒ 14’ヴェルナー

スターティングメンバー

まずはスターティングメンバからです。

ライプツィヒは、前節のアウグスブルク戦はふくらはぎの違和感でメンバーを外れたポウルセンがスタメン復帰。それ以外のメンバーは変わっていません。シャルケの方は、10番ベンタレブが、子供の出産の立会いと、鼠蹊部の負傷で欠場、(出産の立会い、という事情をクラブに伝えておらず、無断欠場とみなされ、U-23チームに落とされたそうです。)そして͡コノプリャンカ、ブルグシュタラ―に代わり、ナスタシッチとルディ、ウートがスタメン入り。ミッドウィークのシティ戦から3人メンバーが変わりました。

ライプツィヒ 守備

まず守備からです。

この図のように、序盤、ライプツィヒは4-3-3でプレーしていました。ザビツァー、アダムス、カンプルの3センター、ヴェルナー、フォルスベリ、ポウルセンの3トップです。ではまず、この4-3-3時の守備戦術について。

ライプツィヒは、ハーフライン付近に第一プレッシャーラインを設置し、守備的プレッシングでセット。そこから、攻撃的プレッシング(強度は低いですが、DFラインのパス回しをスイッチにプレッシングを行うことなので、当てはまります)をかけます。相手が3バックなので、3トップで3対3でプレッシング。なので、3バックからは自由を奪う事ができますが、システムの構造上、アンカーがフリーになっています。そのアンカーへの対応策が、図に示したものです。その上図のように、ボールから一番遠い位置にポジショニングしているFWが、アンカーを見ることで、パスを出させないようにし、フリーの選手を消していました。しかし、この4-3-3での時間も序盤だけ。10-15分ごろにはいつも通りの4-4-2に戻していました。

はい、こちらです。左SHにフォルスベリが入り、ポウルセンとヴェルナーの2トップです。こうすることで、第一プレッシャーラインは2人になったので、3バックに対して2対3の数的不利になっています。そして、アンカーもフリーのまま。この状況は、

この図のように、右CBにパスが出たところで、左SHのフォルスベリが出ることで、3対3を作り、4-3-3時と同じように、ボールに遠いFWがアンカーを見る形です。それに伴い、SHのフォルスベリが一列前に出ている左サイドは、SBのハルステンベルグが相手WBを見て、逆にSHが出ていない右サイドは、SHのザビツァーが相手WBを見る、という守備戦術で守っていました。また、前半は図のように左SHのフォルスベリが一列前に出て3対3を作る役割を担っていましたが、後半は、右SHのザビツァーがその役割を担うシーンが多かったです。

組織的守備

では、このライプツィヒ分析で、2試合連続具体的なコンセプトを読み取ることができなかった組織的守備のフェーズについて。

ライプツィヒの組織的守備は、ガツガツボールを奪いに行く守備ではなく、待ち構えて、スペースを消し、相手がブロックに入ってきたところでデュエルの強さを生かして、奪い、カウンターアタックに移行、というものです。待ち構えて奪う事ができれば、自分達から出て行って背後にスペースを空けるのではなく、相手が出てきているので、その相手の背後にはスペースがあります(相手の中盤の背後)。なので、ボールを奪った後1、2本のパスでライン間に進入することができ、相手のDFラインに対応をさせることができます。DFラインなので、その後ろはGKだけ。なので中々相手はボールにアタックできない(背後にスペースができるため)のでDFラインを押し下げる事ができます。そして、相手もDFラインに5人も6人も残しているわけじゃありませんので、スペースも広がっているので、カウンターに移行できれば、得点の可能性が大きくなります。

ここまでの組織的守備は、中央にボールがある時です。サイドにボールがある時は、分析1試合目のニュルンベルク戦で書きましたが、このチームの代表的なコンセプトが姿を現します。

上図のように、サイドにボールがある時は、逆サイドを捨ててボールサイドにスライドし、圧縮。ボールサイドに密集と数的優位を作り出し、その密集地帯でボールを奪い、カウンターへの移行を狙います。

シャルケの攻撃

シャルケは、前述のようにCLでの0-7大敗の後、テデスコ監督が解任され、シュテフェンス氏が暫定監督として指揮をとっています。なので、当然細かな戦術を落とし込むことができないのは仕方がありませんが、この試合のシャルケは、何十年か前にタイムスリップしたような、とても単調な攻撃をしていました。とにかく低い位置からロングボールを放り込み続ける、という攻撃です。攻めの手段はそれ一本。ただでさえとても単調な攻撃ですが、その上、前線のウート、エムボロにロングボールがあまり納まらなかったので、セカンドボールを拾うこともあまりできず、具体的なコンセプト、プレー原則や攻撃のバリエーションがない、唯一の攻めの手段も上手くいかない、という最悪の事態に。なので、いくつか惜しいチャンスもあったものの、あまり得点の可能性は感じませんでした。

ライプツィヒ 攻撃

続いてライプツィヒの攻撃について。

この図のように、配置はいつもと変わりません。SBが上がって幅を取り、SHはインサイドレーンにポジショニング。2ボランチ+2CBの4人でビルドアップを行う、というものです。しかし、配置は同じですが、内容は違いました。今までは、2ボランチ+2CBの4人がライン間にポジショニングするアタッカーへの縦パスを探りながらパスを回し、その間にアタッカーがボール保持者とのタイミングを見計らい、縦パスを引き出し、そこに縦パスが入れば、コンビネーションでの中央突破か、SBに展開してクロス攻撃、というのが攻撃の流れでした。しかし、この試合は、そこまでの具体的で落ち着いた攻撃というよりは、手数をかけず早くゴール前に迫りたい、シュートを打ちたい、というような攻撃に見えました。なので、これまでの試合よりロングボールが多いように感じましたし、2+2の4人でじっくり縦パスのコースを探りながらパスを回すという時間は短かったです。

僕がこのライプツィヒの攻撃を見て、ライプツィヒは、シャルケが具体性、デザインのない、単調な攻撃をしている(テデスコ体制時からそうでした)、というのはスカウティングで分かっていたはずなので、あえて自分たちの攻撃時は、長くボールを持たず、シャルケにボールを渡すような攻撃をして、シャルケにボールを長い時間持たせ、カウンターを喰らうリスクを抑え、逆に自分達がカウンターアタックでゴールを狙う、というプランで試合に臨んだのだろう、と思いました。そして実際、ボールポゼッションは五分(シャルケ51%、ライプツィヒ49%)、パスの数もほぼ同じ(423本/413本)。明らかにロングカウンターを一番狙っているシャルケに51%ボールを持たせ、点を取れて勝てたのですから、この戦術を採用したことは成功だったと言えます。

試合は、14分にザビツァーのドリブル突破からのクロスでエリア内が混戦になり、ヴェルナーが決めて先制。このゴールが決勝点となり、0-1でアウェーのライプツィヒが勝利しました。

総括

序盤は、ヴェルナーとポウルセンの間にフォルスベリが入る4-3-3でプレーしたが、15分ごろからはいつも通りの4-4-2。プレッシングのフェーズではハーフライン付近に第一プレッシャーラインを設置し、ボールから遠い方のFWがフリーとなっているアンカーをマーク。組織的守備のフェーズでは、待ち構えて相手がブロックに進入しようと前がかりになったところでデュエルの強さなどを生かしてボールを奪い、相手が前がかりになっていることで空いている相手の中盤の背後のスペースに入り込んで相手のDFラインに対応を強い、カウンターを仕掛ける。攻撃では、配置は変わらないが、いつものようにじっくり2+2の4枚でビルドアップし、ライン間への縦パスのコースを探る時間は短く、できるだけ早くゴール間に迫ることを目指すような攻撃をしているように見え、具体的なコンセプトのない単調な攻撃をしてくるシャルケにボールを持たせて、カウンターを受けるリスクを抑え、逆に自分達はカウンターでゴールを目指す、というプランだった。

シャルケは、とにかく低い位置からロングボールを放り込む攻撃を続け、ライプツィヒも手数をかけずゴール前に迫ろうとし、相手にボールを持たせようとするプランで、両チームがカウンター狙い、というとても渋くて固い試合になり、まさにこの試合は何十年か前にタイムスリップしたような試合でした。

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