ライプツィヒ対ホッフェンハイム_1

ライプツィヒ対ホッフェンハイム 分析 ~4分で修正したナーゲルスマン&WBがSBに出て行く弱点~ [2019年2月 マンスリー分析④]

ラストとなるマンスリー分析ホッフェンハイムpart4。最後はホッフェンハイムの指揮官、31歳青年監督ナーゲルスマンが来シーズン監督に就任することが決まっているレッド・ブルグループの代表格、ライプツィヒとのアウェーゲームです。

もしこの記事を気に入っていただけたら、このnoteのフォロー、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。

前回のホッフェンハイム分析part3はこちら↓

3つの分析をまとめたホッフェンハイム分析のマガジンはこちら↓

ゴール ライプツィヒ1:1ホッフェンハイム

ライプツィヒ 89'オルバン

ホッフェンハイム 22’クラマリッチ

スターティングメンバー

ホッフェンハイムは、守備時のものを図に表しています。ダイヤモンド型4-4-2。前節のハノーファー戦で良いコンビネーションを見せたクラマリッチ、ジョエリントン、ベルフォディルの3人が揃って先発。しかし、ハノーファー戦で復帰したフォクトは、この試合はまたもメンバー外。後に書きますが、この試合でも攻撃面でフォクトの不在は影響していました。ライプツィヒは5-3-2です。(この分析で出てくるホッフェンハイムのアダムスは、ハノーファー戦に出場したヌフと同じ選手です)

ホッフェンハイム 守備

まずはホッフェンハイムの守備から。ナーゲルスマンのライプツィヒ対策についてです。

システムはスターティングメンバーの章にも書きましたが、ダイヤモンド型4-4-2です。

対策は、前節のハノーファーと同じ5-3-2のシステムということもあって、ハノーファー戦と同じ守備戦術です。

まず、第一プレッシャーライン(ベルフォディル、クラマリッチ)が相手3CBの中間にポジショニングし、プレッシングは行わず、持ち運ばせない。持ち運ぶ、という選択肢を消すことで、ドリブルでのブロック進入ルートを消します。そして、中盤は、IH(デミルバイ、アミリ)+トップ下(ジョエリントン)の3人で、相手の3MF(デンメ、ザビツァー、ライマー)をマンツーマンでそれぞれ掴みます。これでMFにパスを受けさせず、パスからのブロック進入ルートを消します。ボールを前に運ぶためにはドリブル、パスの2つがありますが、この2つのコンセプトで、そのドリブル、パスでブロック進入ルートを消しました。これで、中央封鎖が成立。そして、これはこのホッフェンハイム分析で毎回書いているので、図を使っての詳細な説明は省略しますが(part1のデュッセルドルフ戦、part2ドルトムント戦で詳細に書いています。)、中央を封鎖したので、サイドにパスを出させます(この場合は、CB(コナテorオルバン)→SB(クロスターマンorハルステンベルグ))。そして逆サイドを捨ててボールサイドにスライドし、片側圧縮。ボールサイドの数的優位を生かしてボール奪取からカウンターに移行するか、中央(CB)に戻させて同じことを繰り返し、相手のビルドアップを後方でビルドアップを停滞させます。

中盤のマンツーマンがずれ、フリーの選手ができてそこからピンチを迎えるシーンがありましたが、上手く抑えることはできていたと思います。

ホッフェンハイム 攻撃

続いて攻撃の分析です。

上の図のように、守備時のダイヤモンド型4-4-2から、アンカー・グリリッシュが2CB(アダムス、ポシュ)間に下りて3バック化、ジョエリントン、クラマリッチのシャドー、ベルフォディルが1トップとなる3-4-2-1に可変します。ライプツィヒは、IH(ザビツァー、ライマー)がホッフェンハイムのボランチを見ます。

この試合のホッフェンハイムの攻撃は、上手くいっていませんでした。ハノーファー戦で良い連係を見せた3人を近い距離にこの試合も置きましたが、その3人にボールを送り届けることができた回数は多くありませんでした。その理由は、「フォクト不在」「2ボランチ(デミルバイ、アミリ)に対する相手のマーク」の2つだと思います。まず1つ目「フォクト不在」から。相手の第一プレッシャーライン(2トップ)に対して3対2の数的優位を保持していますが、フォクトがいない3CB(ポシュ、グリリッシュ、アダムス)では、第一プレッシャーラインを突破するパスや、1人の数的優位を生かしてドリブルで持ち運んでプレッシャーラインを突破し、数的優位をもっとゴールに近いエリアに持ち込むことはできませんでした。そして、2つ目の「2ボランチに対する相手のマーク」について。2ボランチに相手IHがついているので、2ボランチが余裕を持ってボールに触れず、前を向けていなかった。ということは、ビルドアップに関わる3CB+2ボランチの5人で上手くボールをゾーン3に運べなかったということです。なので、シュルツ(左WB)が大外からの裏抜けへのスルーパス、というシーンが前半に多くありましたが、それも通らず、チャンスを多く作り出すことはできていませんでした。しかし22分、ベルフォディルがプレスバックしてジョエリントンと2人で挟んでデンメからボールを奪ってのカウンターでクラマリッチが決めてリードして前半終了。

ライプツィヒ ラングニックの修正

0-1でホッフェンハイムのリードで迎えた後半。頭からライプツィヒの監督・ラングニックが修正を行います。まずは選手交代から。

HT:イルザンカーOUT→テイラー・アダムスIN

今冬ライプツィヒと同じレッドブルグループのニューヨーク・レッド・ブルズ(MLS)から加入したテイラー・アダムスを投入します。

上図のように4-2-2-2(4-4-2)にシステム変更。ラングニックのこの修正の意図は、下図をご覧ください

はい。まずは、中盤のホッフェンハイムのマンツーマンを外す、という狙いがあったと思います。トップ下のジョエリントンに対して2対1の数的優位を生み出し、IH(デミルバイ、アミリ)には、マークを持たせない。これでマンツーマンを外しました。そしてそれと同時に、サイドで相手SBに対して2対1の数的優位を獲得することもできました。また、SH(ザビツァー、ライマー)が中にも入っていって、ホッフェンハイムに誰がマークするのか、という問題を生じさせ、チャンスを作る、という効果もあったのかな、と思います

しかし、このラングニックの修正は、ほとんど効果を発揮しませんでした。

それはなぜでしょうか。

49分、ラングニックが修正してからわずか4分での出来事です。ナーゲルスマンがシュルツにメモを渡しました。そこから、ホッフェンハイムの守備が修正されます。メモにはシステム変更が書かれたいたんでしょう。その修正がこちら。

ナーゲルスマンの修正 ダイヤモンド型4-4-2→5-3-2

上図のようにダイヤモンド型4-4-2から5-3-2にシステムが変わりました。

そして戦術について。まず最初は、第一プレッシャーラインの2トップが相手ボランチをバックマークで消します。そして、時々強度は低いですが、バックマークプレスを行います。そして、2トップのバックマークプレスでは対応できない前線への飛び出しには、IHが追跡します。相手SBには、WBが出て行って対応し、SHには左右のCBがパスが入れば、出て行って対応します。

しかし、SHがサイドで受けて左右のCBがサイドに引っ張り出された時、中央にはCB2枚しか残っていないので、相手の2トップ+逆サイドのSHの3人に対して2対3の数的不利に陥ってしまいます。

しかし、ナーゲルスマンはそこもしっかり準備していました。

上図のように、今回の守備の分析にも、ここまでのホッフェンハイムの分析記事にも書いていますが、普段から行なっている逆サイドを捨ててボールサイドにスライドして片側圧縮し、ボールサイドに密集・数的優位を作り出すコンセプトを利用し、逆サイドのWBが中央まで絞って、3対3の数的同数を確保していました。

しかし89分、ライプツィヒのオルバンに同点ゴールを決められ、追いつかれてしまい、1-1のドローになってしまいました。この失点は、ナーゲルスマンが後半の修正に採用した戦術の弱点が原因になっていました。まずは、失点シーンの最初の図のご覧ください。

WBは相手SBに出て行く、というタスクが与えられていますが、ハルステンベルグ(左SB)がボールを持ったところで、カデジャーベクが相手左SHにピン止めされていたこともあって、出て行けず、CFのサライが行きます。それによってフリーになったカンプル(ボランチ)にパスが出ます。では次のシーンをご覧ください。

サライがハルステンベルグに行ったので、カンプルにはアンカー(このシーンは右IHのポジションにいますが)のグリリッシュが出て行かないといけなくなります。そして、テイラー・アダムス経由でグリリッシュの背後でフリーのザビツァーにパスが入ります。では次のシーン。

そして、フリーになっていたザビツァーから左サイドでこれまたフリーになっていたハルステンベルグにスルーパス。ハルステンベルグのクロスにオルバンが合わせて決めました。

では、この失点の発端は何なのでしょうか。それは、最初のハルステンベルグ(左SB)にサライ(CF)が行ったところです。ここは、カデジャーべクが、ライマーにピン止めされていたので出て行けなかった。しかし、このシーンは、WBがSBに出て対応する、というコンセプトの弱点が出ていたと思います。低い位置で受ける相手SBに対して、DFラインにポジショニングするWBが出て行くのは距離が遠いです。なので、WBがSBに出て行く、というコンセプトを用いているチームは、どんなチームでも距離が遠くてWBが出て行くのをためらい、他の選手が行かないといけなくなるシーンがあります。このシーンもライマーがピン止めされていなくても、カデジャーべク距離が遠く、出て行けなかったと思います。ですが、もっとカデジャーべクが違うポジション(SHやWG)で、ハルステンベルグに近距離であれば、他の選手に受け渡すことが出来たと思います。

また、その他にも、オルバンが上がって来て、ポシュがマークしないといけなくなったので、ザビツァーに対して誰もマークすることができず、ザビツァーをフリーにしてしまったこと。カデジャーべクはそのままライマーをマークして、ライマーに合わせて絞ったが、ハルステンベルグに対応したサライがマークを継続せず、離したことで、ハルステンベルグをフリーにしたことが原因になっていました。

ナーゲルスマン・ホッフェンハイム 総括

守備 中盤はマンツーマンを採用し、相手MFを全員掴んでパスでのブロック進入ルートを消す。次に、第一プレッシャーラインは、相手が2CBでも3CBでも2トップをチョイスし、持ち運ばせない。これでドリブルで持ち運んでのブロック進入ルートを消す。この2つのコンセプトで中央封鎖。そしてサイドに出させ、片側圧縮。そしてボールサイドの密集を生かしてボール奪取→カウンターアタックへ移行。または、中央に戻させて後方でビルドアップを停滞させる。(ドルトムント戦の前半のようにCFがボランチを消すバックマークプレスをかけて、IHがSBに出る、というような戦術の場合もある)

攻撃 相手の第一プレッシャーラインに対して数的優位を保持し、ビルドアップを行う。しかし、選手のタイプからも分かるが、バルセロナ、M・シティのように徹底して繋ごうとするわけではなく、縦に入れれるならどんどん入れて、アグレッシブに、ダイレクトに攻撃。WBの攻撃参加からのクロス攻撃が得意の形。

トランジション(攻守の切り替え) ポジティブトランジション(守→攻の切り替え)は、縦志向の強いカウンターアタックで後方から多くの選手が飛び出す。ネガティブトランジション(攻→守の切り替え)は、ゲーゲンプレスで、近くのパスコースから消していき、遠くのパスコースに誘導してそこを狙って潰す、というようなコンセプトが含まれている。

3月は、そのナーゲルスマンが来シーズンから監督に就任することが決まっているライプツィヒを分析していきたいと思います。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、このnoteのフォロー、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

ご支援いただいたお金は、サッカー監督になるための勉強費に使わせていただきます。