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オルガンから学ぶ倍音の話【Part5】

【Part4】からの続き
まとめです。
チェロやヴィオラやヴァイオリンのような弦楽器は
基音に加えて
基音の1オクターブ上の第2倍音
1オクターブ上の完全五度の第3倍音
2オクターブ上の第4倍音
2オクターブ上の長3度の第5倍音
2オクターブ上の完全五度の第6倍音
3オクターブ上の第8倍音
更に高次の倍音まで大量の倍音を含んでいて基音の方が少ない楽器です。
整数倍音が多い楽器は明るく音抜けが良い音色になる傾向があります。
弦楽器は管楽器に比べると音量はかなり小さいですが
その割には音抜けが良く目立つ楽器です。
そして弦楽器は倍音を操り様々な表現が可能な楽器です。

まずはフラジオレット、ハーモニクス
弦楽器では敢えて弦をしっかり押さえず少し浮かせた状態で
倍音を出す演奏技法がありますが
実はコレは倍音を出す奏法というよりも大量の倍音を含む弦の振動に
震えないポイントを強制的に作る事で基音や特定の倍音を制限して
特定の倍音だけを取り出す奏法です。
弦長の真ん中でフラジオをすれば1オクターブ上の音が鳴りますし
1/3や2/3の場所でフラジオをすれば1オクターブ上の完全五度が鳴ります
1/4や3/4の場所でフラジオをすれば2オクターブ上の音が鳴ります

またボウイングでは指板寄りを弾くか駒寄りを弾くかで音色が変わります。
コレは弓毛が弦に触れている位置で
弦の振動を制限するフラジオ効果が僅かに効いているので
弦中央に近づく事で大きい次数の整数倍音が減少し音がコモり
弦の端に近づく事で大きい次数の整数倍音が増加し明るい音になる訳です。

そしてSul GであったりSul D、Sul C
コレは高音弦のローポジションで普通に弾けるフレーズを
意図的に低音弦側のハイポジションで弾く奏法ですが
ボウイング位置を弦中央に近づけるという意味で
指板寄りを弾いたのと同じ効果を左手の運指側でもより強く行うものです。
ハイポジションで弾く事によって
弦中央に近づく事で大きい次数の整数倍音が減少し音がかなりコモります。

更に弦楽器では非整数倍音を出す事も出来ます。
弓毛を弦に噛ませて引っ掛ける時に鳴るガリっとした音は
強烈なアクセントを付けてくれる非整数倍音で
パーカッション効果があります。
また弓圧を極端に少なくして弓速を極端に速く動かした場合
カサカサとした音色を作ることが出来ます。
フィンランディアでは霧の中のような雰囲気を
カサカサ音のトレモロで出したりしています。
コレも基音以上に弦のタッチノイズ成分を増やし非整数倍音を混ぜます。
音に空気を混ぜるとか、スモーキーに弾くとかと言われる奏法です。

弦楽器は左手の押弦で基音の音程を創り
ボウイングでやフィンガリングで倍音を操り
敢えてノイズや5度上、3度上などの成分を混入させて
音色を創る楽器なのです。
【完】

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