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ヴァイオリンのE線の話 【後編】

ヴァイオリンのE線にはまだまだ特殊事情があります。
E線以外の弦は芯線と巻線の2層構造になっています。
ところがE線だけ巻線のない1層構造な事がほとんどです。
これによって何が起きるかというと裏返りという現象です。
ホイッスル音とも言いますがオクターブ上の音がピャーッ!と鳴ります。
E線の開放弦のEでしか出る事はあまり無く、ほとんどの演奏では
E線の開放弦は音が極端に立つのでA線との繋がりが悪くなる事から
滅多に使うことは無く普段は全く気にせず無対策ですが
E線の開放弦を使わないと絶対に演奏出来ない曲に出会う事があります。
主に4重音の構成音として最高音にEが配置されている場合
E線開放弦を使わない事は不可能です。
バッハの無伴奏やベートーヴェンの運命で出てきます。
こういう時にだけ使う秘密兵器が決して裏返らないE線です。
3種類ありますので紹介します。

Pirastoro No.1
E線なのに巻線を用いた2層構造です。裏返りません。
音色にも不自然さはありません。価格は少し高めです。
ループエンド用、ボールエンド用の2種類売っています。
一番バランスが良いと思います。

Kaplan Non-whistling Violin E String
以前はLaplan Solutionsという名前でしたが、Non-whistlingというド直球な
ネーミングになりました。その名の通り絶対に裏返りません。
どんなに裏返そうと思って弾いても無理です。裏返り防止効果は最強です。
ただ音色は少し暗めです。ボールエンド弦しか有りませんが
ヒル型アジャスターでもボールエンドが付けられる金具が付属しています。

Warchal Amber
先ほど紹介した2種はE線専用モデルでしたが、こちらは4本セットです。
そして特徴は巻線は採用していないので1層構造なのですが
開けてビックリのネジネジのコイル状の構造となっています。
どうやって張るの?と悩みますが気にせずに
直線状に伸ばしてしまって大丈夫です。
直線に伸ばしても巻き癖が残りますが、これが裏返りを防止します。
4本セットなので他の弦との音色の繋がりも良いです。
裏返り防止効果は先程の2種よりは若干弱めですが
4本とも良い弦なので、裏返り対策は気にしない方でも
普段使いで4本セットで使える弦です。
E線の単価は高めなのですが4本セットの価格は良心的と思います。
ループエンドとボールエンドの2種類があり
張力にもミディアムとハード(FORTE)の2種類があります。
私はハードしか使った事がないですがそれほどキツくは思いませんでした。
個人的には低張力弦が好みなのでミディアムも試してみたいです。

逆に裏返りやすいE線の特徴は金メッキ、プラチナメッキのE線です。
まあほとんどのE線が該当しちゃいますよね・・・
安くてメッキなしのE線専用銘柄はOptima Gold Brokat です。
裏返り防止効果のある弦では有りませんが
そもそもそんなに裏返らない弦ですし、しかもメチャクチャ安いです。
しかしメッキ無しの宿命か錆びやすいので寿命が短いです。
安いと割り切って1ヶ月で張り替えるサイクルで使うのもアリと思います。
ただ最近、錆びにくい様にコーティング加工したPremium Streelモデルや
ブラスメッキモデル、金メッキモデルも販売されてます。
コレ等は、せっかくの安さや裏返りにくさという長所が活きていない
ごく普通のE線になっちゃってるのが少し残念です。

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