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下野どわぁふ

東京にエルフがいるのなら、栃木にドワーフがいたっていいじゃない。

なんてことを、仕事中に考えてしまった。

一目見て「この人ドワーフじゃね?」って

いたんです、今の職場に。

僕の持っているドワーフのイメージにピッタリの人が。

一目見て「絶対、この人家に木製のジャッキとか持ってる」とか、「趣味で鍛冶屋とか営んでそう」とか、そんな失礼なことを、次から次へと想像してしまう。

本人には絶対に言えないんだけど、いろんな人にこの話をしたいと思ってしまう。

その人は女性なのだけど、背がとても低くて非常にゴツい手足をしていて、陽気でいつも騒がしい人だ。

その人のことを知ったのは、僕が職場に配属されて1週間目くらいの頃だったと思う。

その人は、その部署の上長らしき人と、激しい口喧嘩をしていて、何だか不穏な状況に思えた。

ところが、会話を聞いていると、どうやら口論ではなく冗談を言い合ってらしく、僕は勝手に肝を冷やしていたわけだ。

それでもあまりにもインパクトがあり過ぎて、僕は「この人には近寄らないでおこう」と心に決めて、できる限りそうしていた。

ところがある時、棚卸しで同じ班になってしまい、一日一緒に仕事をすることになって、仕方なしに色々話してみると、とても陽気なおばちゃんで、開けっぴろげで、よく笑ってよく怒る、何というか親しみのわく人だった。

適当に合わせて話をしていたら、今では仲の良い職場の知人になっていた。

今ではこの人に会うのが楽しみで仕方がない。

だって、友達にドワーフがいるんですよ。

あ、僕の中での話だけどね、「ドワーフの友達」って話は。

背景のストーリーを考えてしまう

いや、この人は普通に日本人で、普通のただのおばちゃんでしかないんだ。

ただのおばちゃんでしかないのは、重々承知しているし、こんなことを思ってしまうのは失礼を通り越してヤバいことなのかもしれないけれど、もう本当にどうしようもなく「この人は異世界から現代日本に紛れ込んでしまったドワーフに違いない」と思ってしまう。

絶対に違うのはわかっているのだけれど、多分旦那さんが仕事中に大怪我を負ってしまい、怪我した旦那さんと子供たちを食わせていくために、どこかの炭鉱にでも潜って石炭を掘っている最中、落盤か何かでお亡くなりになったはずが、何かの間違いで僕の前に現れたのだと、思わずにいられなかったのだ。

そうなるともう、僕の頭の中で話は転がり続ける。

いつかその話を書いてみたい

いつか、この話をどこかに書きたいと、そう思ってしまった。

相方は、多分社会に出たてで、何の感慨もなく仕事をしなければという漠然とした義務感で、工場で働き始めた少年で、人間関係が苦手だから、人目のつかないところでぼっち飯してる時に、たまたま陽気な鼻歌と共にドワーフさんが現れて、ベンチの横に腰掛けて、ストゼロでも飲みながらアルコールバーナーか何かでスキレットをあっためて、分厚いベーコンを炙り始める。

で、「こっちのベーコンはいいねぇ!安くてとっても美味しいわ。あっちのベーコンは癖があって美味しくなかったわ。やっぱり豚が違うのよね、豚が!」みたいなことを1人でブツブツ言いながら、カンパーニュの切れっぱしにベーコンのせて、一口で食べてしまう。

少年は、何だこいつみたいな目でドワーフさんをガン見してたら、ドワーフさんはもう一枚分厚いベーコンをスキレットで炙って「食べる?」って勧めてくる。
「い、いただきます」って恐々ベーコンを受け取って口にしてみる少年。

それをみながら次のストゼロを開けて、満面の笑みのドワーフさん……。

そんな、よくわからない出会いから、何だかよくわからない異文化コミュニケーションが始まるという話が、どうしても頭の中で浮かんでしまう。

これを、この想いをどうにかして成仏させなければいけない。

僕のEvernoteに「下野どわぁふ」というノートができてしまった。

とりあえず、メモだけでも貯めておこう……。

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