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山田哲人とゴールデングラブ賞

山田哲人の守備が好きだ。

派手さはない。だが堅実だ。
遊びもない。だが無駄な動きがなく華麗だ。

そして何より美しい。


そう、山田哲人の守備は美しいのだ。
センター前に抜けそうな打球を逆シングルで取って捌くプレーも、ライト前に抜けそうな打球を回り込んで捕球し捌くプレーも、無駄な動きは一切ない。難しい打球も簡単そうにさらっと捌く。その洗練された動きは凛と咲く花のように美しい。

そんな山田哲人は随分前から目標に「ゴールデングラブ賞」をあげている。しかし、未だ受賞したことはない。
ならば、ゴールデングラブ賞、通称GG賞はどうすれば受賞できるのか?

シーズンを通してそれぞれのポジションで最も守備力に卓越した選手を、ベストナインと同じ選出方式によって表彰する賞で、プロ野球記者による投票を行い得票数のいちばん多かった者が受賞となる。

守備力に卓越した選手が獲れるのだ。卓越とは「群をぬいてすぐれていること」。ただ、シーズン成績の数字が良ければ獲れるものではない。ほかの選手と比べて、記録、記憶で上回らなければならない。

今シーズンの山田哲人は失策3,守備率.995とリーグトップの成績を残している。昨年の失策5,守備率.992と比べると確実に良くなっている。
併殺数も昨年83→今年87と試合数が減りながらも増やすことに成功。これもリーグトップの数字だ。確実に昨年よりレベルアップしている。"記録"は十分だ。 

そして、"記憶"のほう、今年はファインプレーも多く見られた。
4月22日の試合では珍しいダイビングキャッチを見せ、5月5日には満塁のピンチを4‐4‐3のダブルプレーでしのいだ。1,2塁間の打球は足を使ってしっかり回り込み捌いた。そして、山田の十八番 センターに抜けそうな打球を逆シングルやスライディングキャッチでことごとくアウトにした。

さらに、大事な首位攻防戦の初戦、8月26日にもセンターに抜けそうな打球をスライディングキャッチで俊足のバッターをアウトにし、見事プロ野球ニュースのPlay of the dayに選ばれた。
そして、9月24日の試合では、雨でグラウンドのコンディションは悪いなか、イレギュラーバウンドした打球にうまく対応し、併殺を取ることに成功。解説の宮本慎也さんにもお褒めの言葉をもらった。
また、優勝を決めた試合でも1アウト2塁の場面、セカンドランナーを3塁でアウトにするという好判断を見せ、失点を防いだ。

優勝争いをする中でも、冷静にいつも通り華麗なプレーで確実に勝利に結びつけた。間違いなく山田哲人の守備はチームの優勝に大きく貢献した。


そして、9月9日の試合ではセ・リーグタイ記録6人目の二塁手ゲーム11補殺という珍(?)記録を達成した。



ここで私は思った。

”今年こそ、いけるんじゃないか?”

成績は間違いなく申し分ない、あとは印象。しかし、ここが一番難しい。

山田哲人の守備の持ち味は「堅実さ」。冒頭で述べたように、派手さがあまりない。

しかし、美しさがある。その美しさに記者の方々に気づいてもらえるか、そしてその美しさをどう評価してもらえるかにかかっている。
派手さはないが堅実で美しい山田哲人のプレースタイル。

まさにそれを感じたのが9月28日の試合でセカンドライナーをジャンピングキャッチしたプレーだ。
山田の頭の上を超えていきそうな打球を絶妙なタイミングで、ジャンプの最高到達点でキャッチした。正真正銘のファインプレーだ。
だが、派手に見せるなら、ジャンプした時に足を大きく開けたり、着地で一回転をしたり、大きく動いた方がより、アクロバットに見える。
だが、山田は真上にまっすぐ綺麗に飛んだ。スローで見ると笑ってしまうほどピーンとつま先まで綺麗にまっすぐだった。無駄な動きを削ぎ落とした洗練されたプレー。まさに、派手さはないが美しい。

これが山田哲人らしくて好きだ。無駄な動きはしない。洗練された美しさ。注目して見ないと分かりづらい山田哲人の守備の魅力。
ゴールデングラブ賞を獲るのには難しいプレースタイルかもしれないが、多くの人に見てもらえさえすれば獲れると思っている。注目して見てもらえさえすれば、多くの人が山田哲人の守備の美しさに気づき、魅了されることだろう。
まさに私がその一人だ。山田哲人の守備に魅了されている。山田哲人の守備に感動さえ覚えている。山田哲人の守備の魅力を知っていることに幸せさえ感じる。


きっと、もっと派手なプレーをしてアピールしたほうが獲りやすいのかもしれない。それでも、アウトにできる打球を確実にアウトにし、ファインプレーもクールにさらっとピッチャーを助ける。あまり目立たない。そんな山田哲人の守備が好きだ。

そして、その堅実な山田哲人らしい守備でゴールデングラブ賞をもぎとれると信じている。


静かに美しく凛と咲く山田哲人という花が多くの人の目に留まり、日の目を浴びる瞬間が来ることを待ち望んでいる。


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