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トドの産業医(4) パワポ手直し編

 産業医を取得したと同時に勢いあまって法人を作ってしまったトドの産業医が、将来本当に独立した産業医事務所に育ちあがるまでの道標を書いていきます。
 さて、なんとかチラシを作り上げたトド。次は営業用のパワポを作り直すことにしたようです。


※今回のパワポ編はAMANO SCOPE 天野眞也さんの影響を受けております
(途中私が曲解してしまっている部分がありますが、皆さまはぜひ本家をごらんになってください)

結論

①産業医を雇う(産業保健を行う)メリットとリスクについて明確に伝える
②スペックだけでなく、自分のストーリーについても考えてみる
③目指すのは「さりげない」営業。パワポ読み上げはNG。


トドの産業医:パワポを練り直す

トドは悩んでいた。
営業用パワポを作り直さないといけないことはわかっている…。
でもどんなことに気をつけないといけないのかさっぱりわからない。
とりあえず…youtubeでなんかないか見てみるか?尻をポリポリ搔きながら「法人営業」で検索をかけてみる。
上から3番目に気になるサムネが出てきた。

ほう。「法人攻略のキホン」とな。

…これすごいじゃん!?

トドは単純である。
自分が営業素人である以上、まずはプロの考え方をまねることからやってみようと思った。


只野トド、メリット、デメリットについて考える

たしかに考えてみれば懇親会で会った8割以上の社長さんは「産業医」の名前すら知らなかった。一方で『産業医』の名前を知っている社長さんになんで選任したのか聞くと
「従業員が50人を超えたから…」
「とりあえず選任しないと労基に怒られるし…」
「法律で決まっているから…罰則あるんでしょ」
と明らかに『いやいや』『しぶしぶ』な理由が決め手になっていた。

初めて訪問したスネ夫社長も言っていた。
「『なぜ』利益を削ってまで安全衛生委員会をしないといけないの?」
これは言い換えると
「産業医、産業保健が企業に『どんな利益』をもたらすんですか?」
という質問につながるんじゃないかと思った。とりあえずここで文明の利器チャットGPTさんに聞いてみる。

トド:舞台は日本です。 目の前に従業員数50名を抱える中小企業の社長さんがいます。 法令上の問題で、やむをえず産業医を雇わなければならなくなりました。 しかし社長としては産業医を雇うお金があったら、設備投資などに回した方がメリットが大きいと考えているようです。「なんで産業医を雇う必要があるんですか?」「産業医を雇ってどんな利益があるんですか?」と、産業医である私に質問をしてきました。 あなただったらどういう風に説明して社長を説得しますか?具体的なメリットを挙げて教えて下さい。

中小企業の社長さんに対して、産業医の雇用の重要性と具体的なメリットを説明する際には、以下のポイントを考えて説明してみることが効果的かもしれません。
①法的コンプライアンスの確保:
日本の労働基準法や労働安全衛生法などの法的要件により、従業員の健康管理や安全確保が求められています。産業医の雇用はこれらの法的要求を満たす一環として重要です。法令違反を避けるためにも、産業医の存在は欠かせません。
②従業員の健康管理と生産性向上:
産業医の定期的な健康診断や健康相談により、従業員の健康状態をモニタリングし、早期に健康問題を発見できます。健康な従業員は生産性が向上し、仕事に対する取り組みも前向きになる可能性があります。
③労働環境の向上:
産業医は労働環境の評価を行い、労働条件の改善に関するアドバイスを提供します。安全で健康的な労働環境を整備することで、労働災害や健康被害のリスクを減少させることができます。
④従業員の満足度と定着率の向上:
健康面や安全面で従業員をサポートする姿勢は、従業員の満足度を高める要因となります。従業員が安心して働ける環境が整うことで、定着率の向上や離職率の低下に繋がる可能性があります。
⑤社会的イメージと健康経営の強化:
産業医の雇用は、企業の社会的責任を示す一環として評価されることがあります。健康経営を推進する取り組みは、企業の信頼性やブランド価値を向上させる一因となる可能性があります。
⑥予防医療の重要性:
予防医療の考え方は、病気の発症を未然に防ぐために重要です。産業医の存在は従業員の健康を維持し、将来的な医療費の削減にも寄与する可能性があります。

チャットGPT様より

ふむ…まあ言われてみれば確かにそうだと思う。ただどうもふわっとしている。可能ならば具体的な数字でこのことを知りたい。

なにか役に立ちそうなデータがないか自分なりに調べてみる。
といってもトド、論文検索に全く慣れていないので、とりあえずいつものグーグル先生に頼ってちょこちょこっと調べてみた。

1)メリットについてフォーカスを当てる
「健康経営の推進について」経済産業省 令和3年度版

投資リターンは3倍、健康経営銘柄の離職率は全国平均の1/4
利益率だけでなく、ステークホルダーに対しても高評価をもたらしうる…か?

 正直なかなか解釈が悩ましいところもあるけれども、健康経営を意識した産業保健活動が、企業にどんなメリットをもたらしうるのか…数字で示した資料の一例としては使えるかもしれない。

産業医と就活生に関する調査
 株式会社セイルズさんが実施。
【調査期間】2023年6月1日(木)〜2023年6月2日(金)
【調査方法】リンクアンドパートナーズが提供する調査PR「RRP」によるインターネット調査
【調査人数】1,001人
【調査対象】調査回答時に 就活生 と回答したモニター
【モニター提供元】ゼネラルリサーチ

みんなそんなにメンタルのこと気にしてる??

これとか調査元が産業医事務所であることがばれなければ、それなりに企業に対してはアピールになりうる…か?

2)デメリット・リスクについてフォーカスを当てる
 トドの場合は精神科専門医を売りにしているので、一応リスクを強調した資料も探してみた…というかどちらかというとリスクを強調した資料の方が多いような気がする。

企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット
 内閣府が発行している資料。この6ページ目をグラフ化したり、数字を強調して休職した場合のリスクを示している記事が多かったりする。
下図は一例。

「『音』で心を鍛える法人向けオンライン音声研修サービス「Mental-Fit」がβ版の提供を開始」の記事より抜粋

「第3回日本人の就業実態に関する総合調査(2018 年調査)」結果
  「メンタルヘルス」の状況について、過去 3 年間で、落ち込んだり、やる気が起きないなどの精神的な不調(メンタルヘルス上の不調)を感じたことがあるかどうか、無業者を含む全数に聞いたところ、不調を感じたことが「ある」と回答した人が、33.1%と 3 分の 1 を占めた。また、不調を感じた人の2割強が通院治療を必要としていた…とのこと。

 ごめん…これじゃあやっぱりみんなメンタルのこと気にするわね。

男性は30代、女性は20-30代が突出。
週実働時間が80-89で4割以上が不調を経験。

我が国の労働者におけるメンタルヘルス関連疾患によるプレゼンティーズムの生産性への影響と賃金損失の推定
 うつ病のプレゼンティーズムによって具体的にどの程度の損失が生じるのか数字でも表している資料。 
 個人におけるプレゼンティーズムの労働損失は男女ともにうつが最も高く、生産性への影響も大きい。
 1人当たり4週間におけるプレゼンティーズムによる賃金損失額は最低賃金(737円換算)で39245円。年代に応じた時給では72951円。年間(52週)にすると最低賃金で510185円。年代に応じた時給では948363円…。
 10年臨床をやってきた肌感覚的には、残業制限が解かれるまでにだいたい3ヶ月。そのあと元のペースに戻るのに結果的に1年近くかかるので、うつ病からの復職者が10人いたら、休職そのものの損失に加えて、復職後も950万近くの損失が生じる…まさしく中小企業にとっては死活問題だと思う。

 さて、恐らく今後産業医の経験を積んでいったり、もうちょっとまともに勉強していけば、もっと有益なデータのある論文と出会える日が来ると思うが…とりあえず今は手持ちの武器でやっていくしかない!
 トドは上記のデータをもとに、なんとか形だけでも「企業に対する産業保健導入のメリットとリスク」のデータを作り上げた。


只野トド、自分のストーリーを考えてみる

 さてトドがうんうん唸っている横で、未来@兼業産業医先生が興味深いnoteを書いていた(トドは購入済み)。

未来@産業医「コネなし兼業産業医の仕事のはじめ方」(無料部分)より抜粋

ついでに埋め込まれたツイートの返信内容をみると、未来先生がどれほどの修羅場や苦悩を潜り抜けて今の立ち位置にいるのか垣間見ることができる。

この記事がどうして売れているのか?
もちろん営業に有益な情報が豊富に含まれているというのは事実だろう。
でもそれだけでは不十分で、
①兼業産業医として熱意をもって突き進む若手時代の未来先生が
②全然売れなかった時期、修羅場に苦しんでいる様をまざまざとリアルに描き出したうえで、
③自分なりに考え、チャレンジし、失敗しながらも、どうやってそこから抜け出し、今の充実した日々を過ごせるようになったのか?
というパーソナルなストーリーが1本あるから魅力的なのだと思う。

結局自分を売り込むには、自分独自の強み・特徴も打ち出さないといけないわけだ。スペックだけでは人は動かない。
相手を動かすには、私だけのパーソナルなストーリーも必要になる。

…すいません。調子に乗りました。

説教臭く、偉そうなことをつらつら語っていたけれども、要はトド、自分という等身大の人となりについて、社長さんや人事の人にも知ってもらいたいなあ…と思っただけなのである。で、まずはなんで自分が産業医を目指したのか?というところをまとめてみた。

トドは正直言うと、ただの一介の精神科医として生きるつもりだった。
それなりに経験を積み、それなりの報酬のハイポ病院でまったり生活していくつもりだったのである。
 ただ2021年のある日義兄が仕事中に生き埋めになった。
 ちょうどその4日前に義母の葬式が終わったばかりで、義父はパニックに陥り、妻も色々な負荷が重なって不安発作を起こした。
 当時1歳、3歳の子供を連れて急いで病院にかけつけたものの、義兄はすでに低酸素脳症の状況だった。妻に先に帰るよう言われ、泣き叫ぶ子供たちを連れて家まで車を飛ばしたことを覚えている。そして義兄は亡くなった。
 「こんなことが…あっていいのか?」そうつぶやいたことを覚えている。

トドのモノローグより

この経験が恐らく産業医をしようと思ったきっかけである。

でもこれは決して自分を選んでもらう『メリット』のカテゴリーにはならない。だからトドは『ご挨拶』の中に、この思いを埋め込むことにした。

文章が相変わらず長い

うむ…マーケティングとかストーリーテーリングとか難しいことはトドにはよくわからないけれども、少なくともどういう思いで産業医活動をすすめたいのか?については人事、労務の方に伝わるんじゃないかなあ…と思った。


只野トド、パワポデザインを外注する

さてここまでなんとかパワポの内容については作ってきたが、それでおしまいではない。
 同じ内容を伝えるのなら、先方により印象に残るように表現してもらうのが吉だ。

なんかないかなあ…ん?ココナラに営業パワポ作りますとかあるやん。
PRO認定されている人にして…ポートフォリオも見比べて…。
お!この人ええやん!?PHAINO DESIGNさんにしよう!

早速相談メールを打ってみる…。
30分後に返事が来た!?早い!?
というか基本的に返信が30分~60分以内に来る。
具体的な予算、どういう目的で使うのか?
どういった人がみるのか?
フォントの使い分けはどうするか?
すりあわせをしていく。
事前にロゴやチラシ、名刺のデータ、
もとの文章やパワポスライドを用意していた方がスムーズ
なようだ。
持っているデータは全てお渡しした。

それにしても8月17日夜に依頼して、
18日にサンプルデザインチェック。
8月21日には全スライドのデザインが完成…。
驚嘆するくらい早い。
いや…本当にプロなんだなあと感動する。
以下一部抜粋。

トド、渾身の一枚。作成期間1週間(この1枚)!
PHAINO DESIGNさん作。作成期間5日(15枚)!
名刺、チラシのイメージに寄せて全部作り直してくれた…。

いやね…わかってはいたよ?
でも改めて思う。
『やっぱすごいわプロは!!』

デザイン及びに掲載を快諾してくださったPHAINO DESIGNさま!
本当にありがとうございました!


トド気づく 本当に真似だけで良いのか?

さていよいよパワポが完成した。
あとはアマノスコープに則って、
まずばしっと自己紹介!
次に産業医を雇うメリット!
最後に弊社の強味アピール!

これぞジェットストリームアタック!!!!

自信満々にふんすふんす鼻息荒く粋がっているトドを見て、ジト目の妻が刺してきた。

「はあああああああ!」

思い出すトド

「…ああ…ええ…すいません」
『わかればよろしい』

はてさて困り果てたトド…今の勤め先にいる先輩産業医に早速相談してみた。

ご…後光が…

ぽんぽこ先生はトドの医学生時代からの友人。
産業医としてのキャリアは10年を超えているベテランである。
超大手人材派遣会社でもともと働いていて、
「産業医になるために」学士編入した先生である。

「ぽんぽこく~ん。今ちょっといい?」
「ん?ええよトドちゃん」
「ぽんぽこくんもさ~最初は当然新米産業医だったわけじゃん?」
「ん?そうだよ」
「その時ってどうやって営業したの?うち社会人経験もないし、全く想像がつかなくて…なんかアマノスコープさんとかをみると、なんていうか…こう…うーん…なんだ?『初めまして!私はでかいトドと言われます!身長190㎝!トド産業医の只野トドです!産業医を雇うとこんないい面があります!弊社の強みは〇〇、〇〇、それでは早速プランを!』みたいな感じでやるのかな?とか思うんだけれども、これまで産業医の仲介会社とかで営業をうけてもそんな営業されたことないし、全てに通用するわけではないと思っているんだけれども…。でもずばっと突き進んだ方が良いのかうーん…みたいなね?」
(ぽんぽこ先生途中で笑い始める)
「そうねえ…まあ新人営業マンあるあるだけれどもね。最初の頃はスライドに書いてあること、ご挨拶、メリット、コスト、全部元気に読み上げるとかね…よくやるけどそれは聞く側は苦痛だよね」

特にトドちゃん。君の場合はね。
君が伝えたい内容、体感しているエネルギーの
0.001%くらいできっと相手にはちょうどいいよ。

0.001%…

「別にアマノスコープさんの営業が間違っているとかそういうのではなくて、そもそもの売り方、売り物が違うんだよね。それにキャラにもよるしね…そもそも伺った時点で相手方は僕らが産業医で精神科の専門医であることをある程度知っている状況だと思うんだよね。
もちろん初めて産業医を導入する会社さんの場合は、産業医ってこういうものですって簡単にはお話しするよ?でもそこからは
『どういった経緯で今回産業医を検討することになったのか?』
『どんな困りごとが起きているのか?』
『今の産業医さんはどういった活動をしていますか?』とか。
『メンタルヘルス対策はもう必須な時代になっていますけれども、いかがでしょうか?』とかそういうことをさりげなく聞く感じだよね。
『メンタルヘルス不調となると、大切な社員さんをどこの病院に繋げたらいいかわからないし、繋げた病院とうまく連携が取れないことも多いですから、そういった病院探しやもともとの連携がある病院を探しますよ?』とかね。そういう話をすると、人事の人も『ああ、任せやすそうだなあ』『面倒減りそうだなあ』とか感じてくれるわけだよね。これが個人のメリットにもなるわけだよね?
そのうえで『リスクのこととかきちんとフィードバックさせていただきます。ご希望があれば、他社でもよくありますが、産業医とは別に精神科顧問医という形でお手伝いすることも可能ですよ』と言ってみるとかね」

『ただここはトドちゃんの場合は0.001%のエネルギーで伝えてね?(2回目)』

「さりげなく営業するスタイルだよね。それでいいと思うけれどもね」
「な…なるほど…」
「まあ僕も新入社員時代は突然初日から外でビル指さされてね。『はい、あそこの上から下まで、これ持って営業やってきてね?』っていきなり言われてね。わけもわからず、なにも答えられなかったんだけれども…でもそこからスタートするわけだよね。それでちょっとずつ型を身に着けていくもんなんだよ…」
「そうかあ…」

ま、あれだな…。
トドの場合は『0.001%』だけまず頭に入れて営業やね。

いつの日か本当に独立して食べていけるようになるため
トドは今日も動き続けます。


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