彼女たちのコズミック・イラ Phase22:フリーダムキラー

戦後の処分を受けているアグネス、そしてルナマリアとヒルダ、シンの登場です。とりあえずアグネスの尊厳を破壊しています。

アグネスについては本当に扱いに困るというもの。生還したからには、何かしらのポジションに収めねば……という物書きの性みたいなものがありまして、フリースタイル創作の生贄となってもらうことにしました。

次回はルナマリアとヒルダのシャワーシーン。公式レズセクハラのカップリングです。


ミレニアム艦内の一室。殺風景な室内の中央に椅子が置かれた、捕虜に対する尋問を行うために設置された部屋。その椅子には後ろに回した手に拘束具を装着され、非常に居心地が悪そうな表情の女が座っていた。

「まさか生きていたなんてね。あんたもてっきりあの核爆発に巻き込まれたか、ファウンデーションの連中の手に掛かって死んだとばかり思っていたよ。」
「私だってそう思っていましたよ。それが思った以上に元気そうで……本当に安心しました。」

椅子に座り拘束された女、アグネス・ギーベンラートは2人の女性軍人に見下され。まるで汚物を見るような視線を一身に受けていた。

「性格に多少の難はあるとは思っていたが……多少どころではなかったようだね。」

腕を組んでアグネスを見つめる、固めに眼帯を付けた強面の女軍人、ヒルダ・ハーケンはアグネスの実に何が起きたのかを全て把握して、呆れ顔を崩さずにはいれなかった。

「一歩間違えればヤマト隊長やアークエンジェルのクルーの人たちまで危なかったって時に……本当、この子ってば……!」

ヒルダ以上に呆れた表情を浮かべ、腰に手を当てながらアグネスを見下ろす彼女とは同年代の女軍人、ルナマリア・ホークは怒り半分、安堵半分といった様子で腐れ縁となる彼女へと目を向けていた。

「しかし、よくもまぁあんな戦場で見つけることが出来たね。」
「ギャンに乗っていたから嫌でも分かりますよ。ヒルダ隊長は私のゲルググに乗り換えていましたし。あれに乗って戦場をフラついているのなんてこの子くらいですよ。」
「離反した時の機体にそのまま乗っているなんて……そんな大した扱いを受けてなかったみたいだね。」
「うぐぅっ……ぐぬぬぬ……!!!」

生き恥を晒していた上に、かつての同僚たちから容赦なくこき下ろされるアグネス。しかし、彼女の行いを鑑みれば、この扱いは生易しいものであるといえた。

「な、なぁ……ルナも、ヒルダ隊長も、もう本当はそんなに怒ってないんだろ?コノエ艦長は戦力が欲しいって言ってたし、アグネスだってもうどこかに裏切ったりなんて……」
「黙ってな坊主!こういう馬鹿にはある程度分からせておかないと、次に何をしでかすか分からないんだから。」
「シン!あんただってこの子のやったことがどれだけ重い罪か分かるでしょ。そんなアグネスとまた一緒に戦うんだったら、今のうちに言いたいことは言っておくべきなのよ。」
「うぅぅぅ……は、はい。すみませんでした。」

アグネスの正面へ置かれた椅子に跨り、背もたれ部分に手を乗せてルナマリアとヒルダを窘めようした少年、シン・アスカ。しかし彼は逆に2人の女性からそれぞれ一喝され、小さな声で謝りながら顛末を眺めていた。

「くぅぅぅぅ……わたしがこんな、山猿なんかに情けを掛けられるなんて……!っていうかあんた、なんでそんな余裕ぶっていられるのよ!?」

アグネスとしては同性の元同僚から怨嗟の眼差しを向けられる以上に、これまで見下していた異性の元同僚から憐れみの目を向けることが何よりも屈辱であった。かつての問題児からそれ以下の扱いを受けるアグネス。彼女は自然とシンに対して声を荒げていた。

「いや、だってほら……裏切りとか割と慣れているし。もっと厄介なのがいたから、別にどうということもないっていうか……どうでもいいかな……なんて思っててさ。」
「なぁっ……!?ど、どうでも……いい!?あんたみたいな男にまで……この私がっ……!」

『月光のワルキューレ』の異名を持ち、鳴り物入りでコンパスへと参加していたアグネスであったが、配属先のヤマト隊にはザフトアカデミー時代の同期、シンとルナマリアが同じく配属されており、彼女の立場は隊の中でも最下位なのであった。

「そんなことよりアグネス。俺やルナ、ヒルダさんに取っちめられるのはともかく、一番大事なことを忘れていないか?」
「えっ?大事なこと?」

シンから発せられた言葉に呆気に取られ、不思議そうな顔をするアグネス。そんな彼女に対してヒルダが口を開く。

「ここはコンパス所属艦のミレニアム。今は艦長のコノエ大佐が一番上の階級だけど、本当はもっと上の階級の男がいるんだよ。」
「あっ、あぁっ……あぁぁぁっ!!!」

ヒルダの言葉によって、シンの言う“大事なこと”を思い出すアグネス。彼女は顔を引きつらせ、身体を震わせて、全身で恐怖を表しているのであった。

「あんた、ヤマト隊長が帰ってきたらどんな顔をするつもり?この前まで散々ちょっかいを出した挙句、戦場で撃とうとした女が一体どの面下げてここにいるのかしらね。」
「ち、違うのっ……あれは、シュラが……あいつが私のことを認めてくれて……!受け容れてくれたから……!」

ミレニアム所属ヤマト隊隊長、キラ・ヤマトは現在休養中で不在だったものの、いずれは帰還をする予定となっていた。自身が刃を向けた上官、ヤマト隊長に対して、アグネスは決して顔を合わせることなど出来ないのであった。

「そういや、フリーダムキラーなんて俺の異名、どこに行っても聞かなかったぞ。」
「アグネスあんた……いつもシンに言っていた悪口の一つみたいに勝手に作ったんじゃ……」
「キラのやつなら気にしないだろうけどね。あんたが裏切ったことも、この坊主にヘンなあだ名を付けたこともさ。」

もはやアグネスの精神力は尽きていた。目からは大量の涙が零れ落ち、自らの行いを悔やんでも悔やみきれない後悔に苛まれる。そんな彼女に対して、シンはとどめともいえる一言を突き付ける。

「まぁいいっか。アグネス、フリーダムキラーって異名は、お前に譲ってやるよ。」
「っ………!?うぅぅっ……あぁっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!バカっ、バカぁっ!何もそこまで言わなくてもいいでしょ!?私だってずっと後悔してたんだからぁっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「いぃっ……ちょっ、アグネス!?」

シンの一言が感情の決壊を呼び起こし、アグネスは室内に響き渡るほどの声で号泣し始めてしまう。

「あーあ……ギャン泣きだよ。」
「シンっ!いくらなんでも言い過ぎよ!あんた加減ってものを知らないの!?」
「えぇっ!?お、俺のせい!?ルナもヒルダさんも散々キツく言いまくっていたのに……」

ルナマリアの言葉に理不尽さを覚えるシン。しかし、彼の言葉は的確にアグネスの尊厳を蹂躙しており、徹底して彼女の心身に恥辱と屈辱を刻み込んでいた。そして性質が悪いことに、シンはそうした自分の言動が然程問題ないと考えているのであった。

「こんなやつをよくキラは手懐けていたね。やっぱり准将の肩書きを伊達じゃないか。」
「すみませんヒルダさん、こいつ本当は……まだまだ十分な問題児だったりするんです。」
「バカバカバカバカバカぁっ!このヤマザルっ、死ねっ、いつか絶対に殺してやるっ!ひぐぅっ……うぅぅぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!」
「な、なんか泣いてるついでに物騒なこと言ってるぞ!?」

女心という概念に微塵も理解力がないシン。だが決して悪気を持って汚い言葉を口にすることは多くないため、ルナマリアやヒルダといった年上にとっては、母性を刺激するような側面も持ち合わせていた。

「ま、とりあえず手錠を外して、こいつをシャワーにでも連れてってやるか。営倉暮らしもそろそろ終わりだけどね。」
「はい。ついでに私たちもシャワーを浴びるとしましょうか。」
「くぅぅぅ……俺がそんなに悪いことしたっていうのかよ……!?」

気付けばシンの周りは女性だらけとなっていた。しかし、彼はそのことにすら特別な意識を感じてはいなかった。果たしてこの環境が彼の女心に対する理解力を高めるのか。そして、ルナマリアとの関係に進展は期待出来るのか。彼は殺風景な部屋に一人取り残されるのであった。

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