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アレント『人間の条件』覚書き part 2

だんだんついていくのが大変になってきたハンナ・アレントの『人間の条件』。覚書きの第二弾です。

前回も述べたように、アレントは人間の生活を「労働」「仕事」「活動」の三つに分けた。「労働」とは私的空間において、人間の生命の維持のために行われる。「仕事」とは、人間が永続的に残るものを作ること。そして「活動」とは、公的空間において人々の間で行われる営みのこと。古代においては、人間を人間足らしめるのは、言い換えれば人間を政治的な生き物にするのは公的空間における活動だった。多くの人間が対等な立場で言論を交し合う公的空間での活動こそが人間の自由を証明するものであり、一方で生命の維持の必然により行われる労働は、一段と低く見られていた。そして生きるために強いられた労働を避けるために、古代の人々は奴隷を必要とした。

活動によって生み出された言論は、仕事を通して文字化される、あるいは記録されることによって後世へと残る永続性を獲得する。一方で労働は何も残さない。労働とはしごく動物的な営みにすぎない。

しかし、近代に入って状況が変わる。それまでは低く見られていた労働が、ロック、アダム・スミス、そしてマルクスの登場により至上の価値を持つようになる。労働こそがすべての富を生み出す源泉であり、労働はその生産性により資本の自己増殖を誘発する。それはまるで生命が増殖するかのようである。

と、今日はここまで。2000年代くらいの初期のインターネット空間というのは、たしかに古代の公的空間のような趣があった。現在の公的空間はどこに見いだされるのか?メタバースなのか、あるいは?

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