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アパレルと小売の未来_07

今後もEC強化が進行していき、リアル店舗が縮小していくとリアル店舗の存在意義は無くなってしまうのでしょうか。小売に関する書籍などを読むと、「店舗の役割が変わっていく」と書いてあることが多いです。

ECがないブランドや会社では、商品を店舗でしか購入できず、「購入」という大きな存在意義がありました。ECができると、リアル店舗の「購入」という存在意義が小さくなります。ECでは、どこにいても、好きな時に購入でき、商品を持ち帰る必要もないのです。便利性についてはECのほうが高いかもしれません。

購入のために店舗に行く必要がないということは、何のために店舗に行くのでしょうか。アパレルでは、ECでの商品試着は不可能なので、実際に商品を見てみたり、着てみるためにリアル店舗に行くことがあります。この商品確認は今後のリアル店舗の存在意義の1つになります。ただ、商品確認(いわゆるショールミング)のためだけにリアル店舗を展開するのは、リアル店舗の役割としては小さすぎです。

今後のリアル店舗の役割として重要なキーワードは「体験」です。リアル店舗では、ブランドや会社の価値観を顧客に体験してもらうことが重要になっていきます。そして「その店舗に行かないと体験できないこと」を作ることで、その店舗の存在意義を高めていきます。顧客が「行きたい!」と思う店作りが必要です。例えば、美術館や展覧会などで体験できるコーナーや実演見学などがありますが、面白い体験ができるものだとお客さんがたくさん集まります。そのような体験や見学ができる「半分展覧会」のような店舗も顧客体験としてはよろしいのではないでしょうか。

アパレルではNIKEがデジタルを利用した新しい顧客体験ができるリアル店舗を作成しています。またアパレルではありませんが、先日Googleが初となるリアル店舗「Google Store」をニューヨークに出店しました。Amazonもリアル店舗も出店しています。そして、「アップルストア」は商品も販売していますが、「顧客体験」や「ブランドバリュー」を提供する店舗として頂点にいるのではないでしょうか。

このような「顧客体験」が重要視される店舗の場合、店舗のスタッフの役割は何なのでしょうか。商品を販売することが1番の目的ではないので、店舗スタッフが顧客に提供すべきものは「体験」や「価値」になります。そのようになると店舗スタッフは「販売員」ではなく、「ブランド・アンバサダー」に近くなると思います。店舗に来店するお客さんに、自分のブランドの価値観や世界観を、商品や体験によって伝えていくことが店舗スタッフの目的になってくると思います。

「ブランド・アンバサダー」的な役割が重要視されると、接客することでお客さんに「ワクワク感」・「ドキドキ感」を与える技術や能力が必要になってくるでしょう。そのために、今後はより「コミュニケーション能力」や「ブランド(会社)の専門知識」が必要になっていくと思います。「販売する」ことよりも「共感を与える」ことが求められる時代になってくるのではないでしょうか。


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