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無理な規則

ワタシがインドに居座っていたのは12月から2月まで。
そして滞在地マイソールはヨガの聖地らしく、世界各国のヨギー達でいっぱいでした。
また冬のインドはヨガのベストシーズンでもあり、意味なくふらつく怪しい東洋人もそれほど目立たないぐらいガイジンだらけなのです。
当然サービスアパートもワタシ以外はヨギーづくしで、とてもにぎやかでしたね。

サービスアパートとは、長期滞在者用の安いコンドミニアムみたいなもの。
たいていは共同キッチンがついていて、各々そこで調理したり食べたりもできます。
ワタシは朝食用の卵をゆでるくらいしか活用しませんでしたが、ヨギー達は健康意識が高く、がっつりインド料理っぽいものを毎食作ったりするわけです。
なので当然時間もかかるし、それぞれのやり方で調理器具も汚れ放題、なかなかのカオス状態が続いていました。

汚れものを洗うのは、翌朝メイドさんの仕事になります。
たぶんそのメイドさんあたりからクレームがきたのでしょう。
ある朝キッチンがある屋上のドアに張り紙が張られ、きっちり施錠されていたのでした。
『キッチン使用時間は午前5時30分から午後9時30分まで』
いや、規則を作ってみんな気持ちよく使おうねって意味はわかる。
ワタシもあの汚れ方を見るにつけ、そう思ってましたから。
でも今は朝の8時すぎですよ?
この張り紙の規則なら、なんで鍵がかかっているの?

卵を持ったまま文句を言うべく、1階の事務所に乗り込んだワタシ。
そしたらですね。
従業員の男の子3人が事務所机の間にごろごろころがって、着の身着のまま寝こけているじゃありませんか。
もうね、すっかり文句言う気力を失くして、すごすご自室に引き上げましたよ。
あの調子じゃ鍵を開けるのなんてとても無理でしょう。
無理なことを規則化するなんて、無謀もいいとこじゃないですか。

翌日。
水を貰うべく、ウオーターサーバーが設置されている屋上キッチンへ再びおもむくと。
今度は大幅に時間短縮された新たなる張り紙が、でかでかと貼られていました。
『キッチンの使用時間は午前6時から午後8時まで』

いいえ、この時間でも絶対無理だとここで断言します。




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