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日銀の利上げでメガバンク株はどう変わるか

今回の記事でも銀行株の検証を続けたい。前回の記事では国内銀行という趣旨でりそなHDを例に挙げた。


【8308】りそなHDを例に利上げで銀行株が恩恵を受けるのか検証する |タゴノウラ投資ちゃんねる (note.com)

海外収益が多いためメガバンクは国内金利上昇の恩恵は地銀に比べれば小さいと思われるが、一方で健全なバランスシートを保持しているため金利上昇局面では魅力があるのも確かである。

今回は日銀が0.25%まで政策金利を引き上げた想定で、メガバンクの収益がどう変わるのか検証する。

三菱UFJFG

まずはバランスシートの確認である。

決算説明会資料より

前回記事と同様だが、プラスの影響を受けるのが変動の貸出金と日銀当座預金、マイナスの影響を受けるのが負債の方の預金である。また保有している国債のデュレーションが長い場合は、国債の金利上昇に伴って含み損が拡大するため留意する必要がある。

円貨ベースの貸出金61兆円のうち固定金利が34%とあるため、残りの66%が変動金利と考える。

決算説明会資料より

市場金利連動と当座預金がTIBORベース、プライム連動と個人ローン等を短期プライムレート連動と仮定する。0.25%に利上げに伴ってTIBORは0.3%上昇、短期プライムレートは0.25%上昇すると仮定すると以下のような計算になる。

TIBORベース:61兆円×42%×0.3%=769億円
短Pベース:61兆円×24%×0.25%=366億円

合計で1,135億円貸出金収支が改善することになる。

次に日銀当座預金を考えたい。三菱は日銀当座預金が巨額のため、こちらの大きな収益源に変貌する。

78兆円の巨額の日銀当座預金に0.25%の金利がつくと、1,950億円の利息収入が発生することになる。マイナス金利時代は日銀当座預金のうち4割に0.1%の付利がなされていたと想定すると、利息収入は312億円だから、差し引き1,638億円の収益増となる。

一方で、預金は156兆円とある。この調達コストが0.1%上昇すると考えると、1,560億円のコスト増となる。

上記の収益増と差し引きすると、1,213億円の収益改善となる。

法人税率30%を勘案すると849億円の増益だが、今期の三菱は純利益ベースで1.5兆円を超える勢いなので増益幅は5%程度となる。

ちなみに、保有している国債のデュレーションは1.5年と極めて短期であり、国債の金利上昇にともなって含み損が拡大する懸念は少ない。

三井住友FG

決算説明会資料より
決算説明会資料より

貸出金のうち市場連動が50%とある。当座貸越が外貨建てとまとめられてしまっているので、うち半分がTIBOR貸出と想定する。短期プライムレート連動は住宅ローンと合わせて17%とする。

TIBORベース:62.7兆円×57%×0.3%=1,072億円
短Pベース:62.7兆円×17%×0.25%=266億円

合計で1,338億円貸出金収支が改善することになる。

57.3兆円の日銀当座預金に0.25%の金利がつくと、1,432億円の利息収入が発生することになる。マイナス金利時代は日銀当座預金のうち4割に0.1%の付利がなされていたと想定すると、利息収入は229億円だから、差し引き1,209億円の収益増となる。

一方で、預金は124兆円とある。この調達コストが0.1%上昇すると考えると、1,240億円のコスト増となる。

上記の収益増と差し引きすると、1,303億円の収益改善となる。

法人税率30%を勘案すると911億円の増益となり、今期は通期で9,200億円の純利益を見込んでいるから約10%の増益幅となる。

ちなみに、保有している国債のデュレーションは2.2年と三菱同様にかなり短期であり、国債の金利上昇にともなって含み損が拡大する懸念は少ない。

みずほFG

決算説明会資料より

みずほはTIBORベースが60%、短期プライムレートベースが20%とのことなので、以下の計算になる。

TIBORベース:56兆円×60%×0.3%=1,008億円
短Pベース:56兆円×20%×0.25%=280億円

合計で1,288億円貸出金収支が改善することになる。

42兆円の日銀当座預金に0.25%の金利がつくと、1,050億円の利息収入が発生することになる。マイナス金利時代は日銀当座預金のうち4割に0.1%の付利がなされていたと想定すると、利息収入は168億円だから、差し引き882億円の収益増となる。

一方で、預金は118兆円とある。この調達コストが0.1%上昇すると考えると、1,180億円のコスト増となる。

上記の収益増と差し引きすると、990億円の収益改善となる。

法人税率30%を勘案すると693億円の増益となり、今期は通期で6,400億円の純利益を見込んでいるから約10%の増益幅となる。

ちなみに、保有している国債のデュレーションは0.7年とかなり短期であり、国債の金利上昇にともなって含み損が拡大する懸念は少ない。

結論

メガバンクは海外部門の収益貢献や、非金利収入の貢献が大きいこともあり、政策金利が0.25%上昇した想定での増益幅はSMBCとみずほで大雑把に10%、三菱は5%程度といったところに落ち着きそうである。

SMBCとみずほがそれぞれ上記のシミュレーションのように増益するとROEが7%を超えてくるため、いよいよPBR1倍が正当化される段階に入ってくる。

現状はSMBCが0.85倍、みずほが0.77倍なのでアップサイドは20%程度はありそうということになる。投資判断としては利上げを2回(0.5%までの引き上げ)が見えればメガバンク株も買い判断になるだろうが、利上げ1回(0.25%までの引き上げ)で20%のアップサイドだと微妙といったところだろうか。

※本記事は、あくまで筆者の株式分析、企業分析の記録であり、投資活動の勧誘または誘因を意図するものではありません。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。また、本記事は不特定多数の者へ無償で情報公開されるものであり、投資助言に該当するものではございません。




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