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DNAのふるさとへ ~山形県最上町でふるさと納税が可能に~

僕の父は、関東を転々としていた。
川崎で生まれ、しばらくして祖父の勤め先の寮があった杉並区へ引っ越し、そしてそのまま沿線の別の駅に引っ越してきたのが旧東京オリンピック以前。以来、いま祖父母から相続した家が、父にとっての実家だった。
僕自身の実家はこの祖父母(というより僕の誕生とほぼ入れ替わりに祖父が亡くなっているため、実質的には祖母)の家に程近く、祖母が亡くなってしばらくしてからは両親が住んでいる。
ただし、最寄駅は変わらない。

両親が住んでいる今の家から500km離れた山形県と宮城県の県境にある最上町という、the田舎が母の故郷だ。
1時間に1本、2両編成のローカル線が走っていく牧歌的な風景。
ものごころついたころにやっていたスーパーは軒並み潰れて、コンビニとコメリ、そして遠くのバイパス沿いのイオンに持って行かれた。
スキー場と温泉こそあるけれど、大型のリゾート設備はなく、中心地(といっていいのか?)から奥まったところにある牧場が、僕ら家族にとっての癒しだ。

どうせなら自分に縁がある市区町村に納税したいと考え、実はずっと山形県最上町への納税機会は探っていた。
けれど、ネット上で覇権を争っている様々なサービスのどこを見ても、山形県最上町は「現在取り扱いをしていません」の表示のままだった。
寄付がいらないなんていう財政状況なはずはない。
申し訳ないが、どこをどう切り取っても教科書通りの過疎山村にしか見えない地域だ。

そんな最上町が令和5年の確定申告に間に合うタイミングで昨年、ふるさと納税を始めた。
覗いてみると、見たことも聞いたこともないブランド牛「最上牛」なんていうのが目玉になっている。
ブランドというのは、名乗ったものが勝ちらしい。
お肉は返礼品の王道ということで、すき焼き用と焼肉用をそれぞれ頼んでみた。
後で母に話してみたら「きっと〇〇畜産が絡んでるわよ、商売上手だから」とうそぶいていたが、蓋を開けたらその畜産会社だった。

牛脂は不飽和脂肪酸が多いのか、熱しても溶けきることはなくプルンと残っていた。
肉の油もしつこくなく、一方で臭みもなくて食べやすい。
ちょっと前にオージービーフでシチューを作ったけれど、味の好みで行ったら完全に勝負が決まる。

こんな美味しい肉を、あの過疎山村はなぜ今になって出してきたのか。
ふと送られてきたお礼状を読んでみると、合点が行った。
役場はふるさと納税事業をアウトソーシングしており、その会社は正直いって村の議会よりも力を持っている地元有力企業の系列にあった。
こうやって、まるで人工臓器のように町の至る所に入り込み、このグループなしではやっていけない町になっていくのだろう。
それがあの町の生き残り策であるのなら、僕らが払った税金はいったいどこへいくのだろう。

きっとこれは起死回生の一打ではない。
何かが変わるそのスイッチなんだ。
まあ、母の家族が住んでいるのと、沿線と車窓の風景と温泉はやっぱり好きなので、もしも街が残る一助になるというのなら、焼け石に水をかけ続けたい。

なお、100万円の寄付で最上牛定期配送というプランもあった。
そのくらい寄付できるパトロンは、ふるさと納税ではなく別の形で札束を持ち込めば、町は大歓迎するんじゃないかなあ。

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