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こんな歌があればいい。

気だるい午後の始まりは
酒臭いお月さんとの談笑
寝ぼけた時計が仕事を怠けたせいで
今また夢の向こうから裸の女が手招きする

俺は愛したんだ
俺は愛したんだ
影も日向も抱き込んで
俺は愛したんだ
俺は愛したんだ
愛なんて雑に呼びつけて
独房みたいな部屋に放ったらかしのまま。

窓開けると、寒がりな空の抱擁
忘れてしまいそうで、でも忘れたくないものが
痛みって添加物を加えて誰の部屋にもあるらしい
それならそれで鍵は南京錠にでもすればいいさ

俺は愛したんだ
俺は愛したんだ
窮屈で怠惰な日常を抱き込んで
俺は愛したんだ
俺は愛したんだ
愛を模造した指輪が
やたらと綺麗に見えて仕方が無いんだ。

形あれば、いつか壊れる
何もなければ、悲しい顔する
どれだけ真実をばら撒いても
事実を騙すことなんて叶わなかった
雪飾る夜に消えた願いみたいに
煙草の灰がすきま風に散って行く

俺は愛したんだ
俺は愛したんだ
愛と自負するすべてを手当たり次第に
俺は愛したんだ
愛されていたかったんだ

気だるい午後の始まりは
酒臭いお月さんとの談笑
俺はまだ出掛けるための一張羅を選べずにいる
誰かがいたような残り香のする
斜陽に預けたその部屋で。

『こんな歌があればいい。』

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