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レビュー「雨音多一著:初夏の芸術論」

 全12篇の短編小説に通底するのは、現代の文明社会が「失ってしまった何か」への希求である。携帯電話を持たない絵画教室の先生、田舎暮らしを始めた主婦、、万年筆で手紙を書き始めた青年……。

 主人公たちは、それと同時に「美とは何か」を求めながら日々の生活を送っている。そこにあるのは、美への飽くことなき探究心と、芸術への情熱である。

 例えば、女子高生「江戸川 ひさき」の美への思いは、ギャラリーでバイトをしながらデッサン教室にも通おうとする。その姿に、過去の読者の姿を想起することも有るだろう。面映ゆい思い出は、若き青春の1頁である。


 もう一度、若い時代=「人生の初夏」を思い出したい方に、お勧めの一冊である。


 A5サイズ、174ページ。税込1595円。
 著者:雨音多一(本名 鈴木太一)。
 2020年9月1日、Next Publishingさんより出版。


https://www.amazon.co.jp/dp/B08GB6TQRY/

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