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独占して来たもの、まだ手にしていないもの:🇨🇭スイス(チーム ティリンツォーニ)

ここでは、2023年女子カーリング世界選手権で、日本代表ロコ・ソラーレが第2戦目で対戦する🇨🇭スイス代表について、思うことをつづってみました。

独占して来たもの:女子世界選手権王者の座

女子世界選手権であることを考えると、このことには触れない訳にはいきません。

スイス代表であるチーム ティリンツォーニは、女子カーリング世界選手権3連覇中(2019, 21, 22)のチームです。女子では、過去に唯一カナダが4連覇(1984〜1987年)を遂げたことがありますが、今回のスイス代表はそれに挑戦することになります。

スイス代表はそれ以前にも1度、大会3連覇(2014〜2016年)したことがありますが、2017年の「4連覇チャレンジ」には失敗しています。

ただ、上に挙げた過去のカナダの4連覇やスイスの3連覇とは、1つ大きな違いがあります。これが同じスキップでの3連覇だということです。同じスキップが世界選手権を3連覇以上したのは、男子の🇸🇪ニクラス・エディン(Niklas Edin; 2018, 19, 21, 22)だけです。

ちなみに、スイスの2回の3連覇の間には2年の空白がありますが、この2年、世界選手権を制したのはどちらも🇨🇦カナダだったので、2014年以降、🇨🇭スイスと🇨🇦カナダしか世界選手権を勝っていません。その2カ国が独占して来た結果として、🇸🇪ハッセルボリにも🇯🇵ロコ・ソラーレにも世界選手権優勝の経験がない訳です。

ちなみに、2020年には女子世界選手権は中止となりますが、実はチーム ティリンツォーニ、この年のスイス選手権決勝で敗れています。つまり、この世界選手権が開催されていたら、チームとしての連覇は途絶えていたことになります。(世界の強豪でも、国内では思うように勝てないのは、他の国でもあることですね。)

新チーム結成がすぐに結果につながった世界選手権

チーム ティリンツォーニの他の選手は、その3連覇および4連覇チャレンジに関わっています。大会2連覇を決めたチームと大会4連覇を逃したチームのスキップを務めたのは、現在フォース/バイスのペーツ選手(Alina Pätz)です。また、セカンドのホヴァルト選手(Carole Howald)は、3連覇すべてにオルタネイトとして参加していましたが、4連覇チャレンジとなる大会には参加しませんでした。代わりにオルタネイトとして参加したのが、リードのシュヴァラー=ヒューリマン選手(Briar Schwaller-Hürlimann)でした。

一方で、サード/スキップのティリンツォーニ選手(Silvana Tirinzoni)は、2013-14シーズンからの4年間、世界ランキングこそ常にトップ10付近を維持し、グランドスラム初勝利(2015年ツアーチャレンジ)もあげますが、スイス代表や世界選手権とは縁がありませんでした。翌シーズンの2018年には平昌五輪にも出場しますが、結果は7位とふるわず。

そんな経験が、2018-19シーズン前のペーツ選手との新チーム結成につながったのでしょう。前シーズン末の時点で、当時のチーム ティリンツォーニは世界ランキング4位、チーム ペーツは12位でしたが、そのシーズンから(リードから順に)バルベザット(Melanie Barbezat)、ノイエンシュヴァンダー(Esther Neuenschwander)、ティリンツォーニ、ペーツの4人でチームを組み、そのシーズンから世界選手権3連覇が始まります。スキップとして経験豊富なティリンツォーニ選手と、「世界一のフォース」と呼ばれることもあるペーツ選手。結果から見れば、良い選択だったと言えるでしょう。最近のスイスのトップチームでは、スキップがフォースを投げないチームが多い印象ですが、このチームの成功に倣っている部分もあるのかと思います。

新チームで挑んだ今シーズン

今シーズンは、フロントエンドの2人が一線から退いたため、実妹とのチームでフォースを務めていたシュヴァラー=ヒューリマン選手がリードに、そして、五輪などでオルタネイトに入っていたホヴァルト選手(吉田知那美選手と共演したCMでもおなじみですね。)がセカンドに入りました。結成直後にチャリティカレンダーの表紙になったことも話題になりました。

新メンバーとの連携を高めるために、今シーズンは8月末から積極的に遠征を行い、10月末までにグランドスラム「ナショナル」を含む4大会で優勝するなど、圧倒的な成績を残します。しかし、11月に優勝大本命と目されていた欧州選手権で準優勝に終わると、その後のグランドスラム2大会では合わせて8試合で1勝しかできず、不安な一面をのぞかせました。ただ、結局、1月末からスイスでの大会で優勝し、スイス選手権も制するなど、いつもの強さを見せ、今大会に望みます。

3月上旬に行われたスイスミックスダブルス選手権でも、(ともにプライベートでもパートナーの選手と組んで)シュヴァラー=ヒューリマン選手のペアが優勝、ペーツ選手のペアが準優勝となりました。一時的な不調だっただけなのかもしれませんね。

まだ手にしていないもの

世界選手権も連覇中、世界ランキングも現在(22-23シーズン第32週目)の時点で2位と、すべて順調に行っているように見えるかもしれませんが、やはりこのチームで手にしていないものと言えば、オリンピックのメダルということになるでしょう。

北京五輪で予選1位からメダルを取れずに4位になったのは、記憶に新しいですが、バックエンドの2人は2回ずつ五輪に挑戦して、まだメダルには届いていません。スイスとしても、過去7回あった五輪の中で、女子はソルトレイクとトリノの銀メダルが最高。金メダルは獲得していません。

今回の世界選手権は、五輪出場に直接関係があるものではありませんが、すでに世界最高レベルのプレーを3年後までにさらにアップグレードするためにも、今回の世界選手権でさらに連覇を継続し、次のステップへのはずみにしたいのではないでしょうか。引き続き、精度の高いプレー、想像を超えるスーパーショットなど、見ていて面白い試合を期待したいと思います。

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