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パソコン捨てて、市場に行こう

こんにちは 👋
ウーオ CPOの土谷(@taihaku0415) です。2023年初めてのnote投稿です。

私はウーオに入社した2019年1月末から水産業界に身を置いて、丸4年が経ち5年目に突入しました。

元々水産業出身ではない私にとって「ウーオが価値を提供したい水産業界のユーザや周辺の環境についていかに把握、理解するか」はプロダクト開発という文脈でとても重要なテーマでした。

入社1ヶ月後に行った鳥取港での作業の様子

また、今回のnoteでは、ここ数年で私自身が顧客理解、事業ドメイン理解をするために意識していたこと、実践していたやり方について紹介したいと思います。

このnoteの内容は、プロダクトづくりの中でも”ユーザの利用文脈とユーザ体験の把握”(=ユーザ調査)のフェーズの中で、特に現場に出向いたり、ユーザに直接ヒアリングする際の話に絞って説明をしています(一部、そういうのが難しい場合の事例も書いています)。


最近、SmartHRさんの記事で紹介されていたドメインエキスパート等、社内にユーザの生態系に詳しい人を置いてサービス開発を進めていくというやり方もあると思います。

このように専門家を社内に置くやり方は開発者自身がそのドメインの専門家ではないBtoBでのプロダクトづくりに非常に効果的だと思います。一方、中々そういう方を採用されているケースもまだまだ少ないと思うので、この記事が「今は自分の未知の業界に飛び込んで開発している」どなたかのお役に立てば 🤲


一歩踏み込む

1) ユーザが言ってくれることと、実際にやっていることには大きな乖離がある

言ってくれないよりは、言ってくれることの方が情報が増えてとても有難いです。一方、言ってくれることをそのまま鵜呑みにしてわかった感覚になりますが、自分からアウトプットしてなるべく答え合わせをしていきたいところです。

その時の答え合わせの方法はいくつかあります。大体は下記をやることが多いです。

a) 図を共有して、自分の理解が正しいか、すり合わせをする。
手書きでもなんでもいいので、インタビューさせてもらっている人と一緒に図を書き足したり、修正したりする。特に、時系列でフローを共有すると、根本的な順番の間違いや、追加の情報を精度高く修正することができます。

何はともあれマップを作りがち


b) アプリのデータを元に、事実関係の質問をしていく。
(a)で述べたフローにする場合、まだ抽象度が高い場合が多いです。その場合、「先週はどうでした?」「今日はどうでした?」と一歩具体性を持った質問をしていきます。
例えば、「ブリを10ケース今日は買っていたけど、これも同じフローですか?」と聞くと、大抵「あー今日は違って、、、」と、その時の事実をきちんと話してくれることにもつながることが多いです。

こういう質問をするためにも、ウーオではヒアリングの前には事前に行動ログや蓄積データを集めて、その方にまつわるデータを頭に叩き込んでおくのを進めています。前者はMixpanel、後者はSQLで抽出して、ドキュメントにまとめていったりします。


c) 実際のメモや作業で使っているデータを見せてもらう。録音してもらう。

よくあるのが、紙で書かれた注文表や、FAXの写真等。ただこの情報も、単にその情報を得ることに終始するのではなく、その前後の業務でやっていること等その紙を使ってやることや、そのデータを生成するまでの過程を根掘り葉掘り聞くために活用しています。

紙やFAXや黒板に書かれたものは、最終成果物であり、これらはヒアリングの精度をあげ、課題をさらに深ぼるために利用していきます。

個人的に面白かったのは、普段の何気ない会話を録音してもらうやり方です。テキストで伝えられるとカットされる内容がリアルに伝わるし、意外とそういう会話内容が開発に活きたりします。

セールスのメンバーに共有してもらった際のもの。
商談以外にも、天候状況や翌週の水揚げ状況等、多くの情報が会話されていることがわかる。


2) イレギュラーケースにこそ課題が多い

ユーザが省こうとする説明、複雑だからスキップしようとする説明こそ大事だと思っています。基本的には説明の容易さを優先してくれたり、親切心から基本形ばかり教えてくれることが多いです。

ウーオは、すでにある程度確立されたビジネスオペレーションに対して入り込むプロダクトを作っていきます。

そのため、「痒いところまで手が届く」体験はとても大事で、半ば「ここは複雑だから諦めている(からやらなくていいよ)」とユーザが思っているものに対して、圧倒的な強みを作っていけるチャンスが転がっています。

"このケースあんまりないから" と言っていたケースが実は頻度を具体的に聞いていくと意外と多く行っていたりすることもあります。

とある日の観察記録。
ユーザが省こうとした数量指定方法が、実は発注全体の30%くらいを占めていた。

3) わからないことはわからないと伝えてもらう

どうしても、接するユーザの業務の習熟度や、分野外のことで実は不明なことはたくさんあるはずです。事実なのか、そうではないのか、をきちんと見極める必要があります。何より、取引先がヒアリング対象なので、その人の解釈であったり、自分の質問に”うまく”答えようとしてくれます。

自分の中で違和感がある場合、下記の手法を取ることが多い

a) 最初に「将来こういう仕組みを実装するため、なるべく今のありのママの事実を知りたい。わからなければわからないと伝えてください」と丁重に共有する
b) 複数人に同じ質問をして差分を知る(後述)
c) 誰に聞けば正解を知っていそうか、教えてもらってその人に聞きにいく

個人的には、最近全く未知の業務フローを観察する機会があり、(a)の手法を実践してみたが、「なんとなく理解した」状態にならないためにもとても有効でした。
違和感というと個人の感覚になってしまいますが、その人の勤続年数等で判断することができることが多いです。

そもそも水産業界の歴が長いか、水産業界は長いが、その会社は1年未満、等。

極端に振る

4) 真逆な人に同じ質問をして、差分を学ぶ

複数人に対して質問をする際も、真逆の属性の人に質問をしていくことで得られることは多いと思います。特に、「この差はなぜ生まれるのか?」と考えもう一段ユーザの理解が深まるし、「どっちに合わせて価値を提供するべきか?」に頭が使われる感覚があります。

ウーオで言うと真逆の属性はいろんな部分で発生します。

水産業のユーザは多種多様

例えば業態の違い。

  • 大規模なロットを扱うスーパーバイヤー と 少量多品種を取り扱う 飲食店シェフ

  • 全国から魚を集めることがミッションの 卸売業者 と 基本は卸売業者から魚を買う仲卸業者

他にも、同一会社内や同一業態内での人によるリテラシー(習熟度)の違いもあります。新卒社員と、10年目社員等。

真逆の人に聞いていくことで、(3)で書いた、事実のすり合わせもできますし、単なる事実のすり合わせではなく、プロダクト価値に直結する気づきや発想が生まれることが多いです。

よくあるのが、ベテランと呼ばれる人が息を吸うように行っている作業が、入社年次が若い社員にはできないことがわかったりするケース

こういう場面では、プロやベテランの方向けではなく、ジュニアな人が"ベテランたちと同じアウトプットが出るような"価値提供していくことで、実はプロやベテランの人も「使いやすい」等想定していないユーザにとっても助かる、というケースがウーオではとても多いです。

5) 真逆な状況を観察して、差分を学ぶ

インタビューや現場観察をするタイミングと頻度も非常に重要。
例えばですが、天然鮮魚というのをメインの事業領域に置いているウーオにとって、水揚げ量が多い日と少ない日で現場観察をすると、全く違う様子を見ることができます。

水揚げが少ない日と多い日だと、例えば関わる人の数も違う


以前のブログに詳しく書きましたが、1週間張りこんで水揚げ量によっての業務負荷の差分を観察することも初期にはしていました。

ストップウォッチを持って、各工程にかかる時間を計測


例えば、水揚げが少ない時にしか観察していなかった場合、そもそも業務負荷が低いのでプロダクトによる課題解決をしよう、という発想にもなりにくいです。一方、水揚げが多い時は、どの作業に負荷がかかるか、どんなミスが発生するか、得られるものはたくさんあるのと、「どれだけ大変か」という臨場感も得られます。

大変か、という定性面だけではなく、計測できるのであれば定量面でどれくらいの業務負荷かは可視化できるといいです。

  • 課題と言っているが、具体的に何時間かかっているのか

  • 機能がリリースされた結果、どれくらいの数字改善が見込めたか

定性的な課題を、定量的なデータで得られる根拠が裏付けてくれ、その領域に価値を提供するための後押しになります。


いくら「良さそう」とユーザが言っていても、実は裏では苦労をしていたり、数字が改善されなければ(余計に作業が増えてしまえば)持続可能な価値を提供できているとは言えないので、定性面と定量面を混合して検証していくことも時には効果的な手法だと思っています。

作業の各工程を計測し、機能リリースの前後で効果を検証(上の図だと5月初めにリリース)


飛び込む

6) 弟子入りする、現場に身を置く

やはり自分でやってみる、ができるのであればそれに越したことはない、と思っています。ヒアリングでは、各業務を細切れで聞いていくし、断片的な情報しか入ってこないです。

これも、後ろについてまわる、質問するだけではなく、「弟子になったつもりでまるっと魚を買って売るところまでやってみる」ができたら最高です。

水産業でいうと、仕入れをして、販売して、売上を計上して、と流れるような連続的な作業の営みがオペレーションであり、その一つ一つを実際にやってみることで、「このデータを何のために使うのか」「なぜ今これをしないといけないのか」「誰に渡して、受け取った人は何をしているか」自分の仮説や論理を強く肉付けしてくれる。あ、そういうことだったのね、とよくなります。


7) 言葉を覚える、使って話す


郷にいれば郷に従え。なるべくユーザが会話で使用する言葉を覚え、それをベースにヒアリングを進めることもあります。開発チームと話しをするとき等は一般的な単語に変換したり、どういう概念か当然説明しますが。水産業で課題解決しているからこそ、ユーザに馴染みのある言葉を違和感なく扱っていきたいです。

漁師の方の作業の手伝いながら、今と昔の水産の違い等聞けることも

個人的には「ヒアリングされているなー」と構えられるのではなく、自然と会話していくような感覚でインタビューやヒアリングをしていきたいと思っています。忙しい現場作業の合間等で聞くことも多いですが、こちらが専門の単語を交えて会話をしていくと「お、こいつわかっとるな、勉強しておるな」とノって詳細まで話をしてくれることが多いです。

伝える

8) 共有する、自分が質問を受ける、解説する

せっかく学んだことは、なるべくすぐに共有していく。
特に意識していることは

  • 図におこす、フローに起こす、時系列で可視化する

  • 説明する、質問をうける

  • 温度感(みたいなもの)を伝える

です。
例えば観察したオペレーションを時系列で並べてみると、「あれなんでこの作業をしているんだっけ?」「これやってからこれだっけ?」と事実をいかに曖昧に覚えているかがわかりますし、辻褄が合わない箇所が出てきます。

あと、自分が感じた温度感って結構大事で、事実を箇条書きで書いているだけだとその現場を観察していない人にとって「どれが重要な情報なのかわからない」ことがよくあります。
そのため、議事録でBoldしたり、赤字にしたり、その場で社内に実況をして「ここめっちゃ強調して伝えたい」を温度感高く伝えます。

観察協力していただいた方の作業の様子を許可いただいて動画で実況

パソコン捨てて、市場に行こう

いつかの会話です。
広島のオフィスから東京出張に行くときに、PCをカバンに入れ忘れて、広島空港行のバスに乗ったところで、COOからメンションが。魚河岸か。

PC捨てて、市場に行こう

2023年も頑張っていきます 👋


そんなウーオでは現在、エンジニアやデザイナーを絶賛募集中です。

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