大海

技術系企業の法務で、契約レビューと社内教育を担当しています。

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最近の記事

インサイダー取引の例

「インサイダー取引」という言葉をニュースで聞いたことはあっても、どんなルールなのかよく分からないという方もいるかと思います。 そこで本記事では、具体的にどのような行為がNGなのかについて、架空の事例を使って紹介します。 1.自社の情報をもとに株式を売買するケース◆概要 ◆ポイント ①未公表の重要な事実を知った場合、その事実の公表前に売買を行うのはNG 会社の従業員などが、投資家の判断に重大な影響を与えるような重要事実(もしも投資家がその事実を知れば、株式の「売り」や「買

    • プロジェクトマネジメント義務とは

      システム開発のプロジェクトが失敗した場合、「失敗の責任はベンダにある」として、ユーザがベンダに対して損害賠償を請求することがあります。 その際に、ベンダに責任があるかを判断するうえで、「ベンダがプロジェクトマネジメント義務に違反していたかどうか」が問題となることが多いです。 そこで本記事では、プロジェクトマネジメント義務の内容について解説します。 1.プロジェクトマネジメント義務とは簡単に説明すると、「システムの完成に向けて、ベンダが自社の開発体制や進捗状況を管理したり、ユ

      • 法務研修の参加者満足度を高めるためのポイント

        社員教育の一環として、「法務研修」を実施している会社も多いのではないでしょうか。 せっかく多くの人が集まって研修を行うので、参加者にとって有意義なものにしたいですよね。 本記事では、法務研修の満足度を高めるためのポイントをまとめます。 1.参加者が内容を理解できること①伝える内容を絞る 法務担当者は正確性を重視するあまり、説明が長くなる傾向があります。しかし、説明が長くなると、本当に伝えたい内容が相手に伝わりにくくなってしまいます(西岡 p50)。 説明が長くなりそうな時

        • 契約書の体裁-表題(タイトル)-

          契約書をはじめて作成する時、表題の書き方について悩むことがあります。そこで本記事では、表題の意義や、よくある誤解、一般的な表題の決め方についてまとめます。 表題の意義①契約書を読みやすくするため ビジネスメールでは、メールの目的と内容を読み手にわかりやすく示すため、件名を「具体的かつ簡潔に」書くことが推奨されています(柴田=神藤 p41)。 契約書も同様に、内容を一目で把握できる表題とすることが望ましいです。それによって、読み手は「取引の対象」「取引に適用される法律」「

        インサイダー取引の例

          内向的な人が仕事で疲れすぎないために-書籍『「静かな人」の戦略論』-

          はじめに内向的な人は悩みや不安が絶えない 「知らない人やたくさんの人と話すのが苦手」 「新しい場所や環境では緊張する」 「ギスギスした人間関係が耐えられない」 こうした内向的な性格の人は、仕事や人間関係で多くの悩みや不安を抱える傾向にあります。 たとえば、初対面の人に明るく振る舞おうと無理をする、取引先との食事会でうまく話せずストレスを感じるなど。そうして一日の終わりにはクタクタということも多いのではないでしょうか。 内向的な性格と向き合うのは大変 私自身も内向的な性格

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          民法と契約の関係

          お客様との間で契約交渉を行う際に、お客様から「民法第〇条では~と定められているから、それに合わせるべきだ」と言われることがあります。 このとき、法務部のメンバーであれば、「民法第〇条は任意規定であり、当事者の間で自由に取り決めることが可能です。今回の取引では~という理由から…」などと冷静に対応することができます。 しかし、法律の知識があまりない方は、先方の主張が正しいと思い込み、契約内容の修正をそのまま受け入れてしまうケースもあるようです。 そこで本記事では、民法と契約が

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          システム開発契約のトラブル事例③

          前々回、前回の続きです。 5.納期の遅延を理由に、損害賠償を請求された事例◆概要 ◆ポイント ①ベンダにはプロジェクトマネジメント義務がある ベンダには、契約に従った業務を行うことに加えて、信義則上の義務として「プロジェクトマネジメント義務」というものが課せられます。 この義務には、①ユーザが適切な判断ができるように必要な情報を提供する、②ユーザで行うべきタスクの内容や期限を示す、③計画からの乖離が生じた場合にはユーザと誠実に協議する、といった内容が含まれます。 ②ユ

          システム開発契約のトラブル事例③

          システム開発契約のトラブル事例②

          前回記事の続きです。 3.システムに必要な機能が備わっていないとして、代金の支払いを拒否された事例◆概要 ◆ポイント ①システムの要求仕様を明確にする たとえ仕様に明確な記載がなかったとしても、その機能が無ければユーザの業務に支障をきたすことが明らかである場合には、契約内容として認められるケースがあります。 ベンダとしては、要件定義の段階で「ユーザの業務に必要な機能が何か」を十分に分析し、その機能を実現する方法やメリット・デメリットを提示して、ユーザに決断してもらうこと

          システム開発契約のトラブル事例②

          システム開発契約のトラブル事例①

          システム開発のプロジェクトを成功させるためには、具体的にどのようなリスクがあるのかを理解したうえで、リスクを回避するための対策を適切に講じることが重要です。 そこで本記事では、システム開発でよくあるトラブル事例について、ベンダ目線でまとめてみたいと思います。 1.契約書の締結前に業務を開始して、代金の支払いを拒否された事例◆概要 ◆ポイント ①「口頭による契約の成立」を立証するハードルは高い 原則として、契約は口頭であっても成立します。しかし、裁判となった場合には「言っ

          システム開発契約のトラブル事例①

          秘密情報の具体例

          お客様と新規取引を開始する際に、お客様だけでなく自社からも秘密情報を開示する可能性がある場合には、双方が秘密保持義務を負う形のNDAを締結する必要があります。 しかし、営業部門に配属されて間もない方は、自社の秘密情報の重要性に対する認識が低く、自社のみが秘密保持義務を負う形のNDAで契約締結を進めようとしてしまうケースも見受けられます。 そこで本記事では、「どのような情報を秘密情報として保護する必要があるのか」について、簡単にまとめてみたいと思います。 1.製品の製造技

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