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先輩 – DAY2

DAY 2

幸先よく週明けに泳いだかと思えばもう週末だ
本格的に減量に取り組もうと意気込んだ今週も数字としては2回
わたしは自分にとことん甘い

今日は水が淀んでいる気がするタイルも前回ほどキラキラとしていないように思う

淀んでいるといえばあの頃
シノサキ先輩を思い出せば必然的にあの頃に引き戻され
嫌でもチームメイトや学校生活を思い出さざるを得ない

入学式から気になった同級生のムライ
軽蔑され利用され、からかわれていた頃
それでも何事もないように笑って過ごした日々

そうされていることだけが全ての理由ではもちろんないのだが
夜になればわたしがわたし自身を卑下し毎日布団の中で少しずつ伸びる脚を抱えて泣いていた頃だ
わたしは「私」のことが好きで
そして嫌いだった

気まぐれのような優しさと苛立ちのような怒りをみせるムライとは
高校まで一緒だったが高校ではほとんど絡みはなく
卒業から5年後くらいに偶然再開し意気投合した

と思ったのもつかの間、完全に縁を切ったのだった

最後、忘れもしないあの日、電話の先に同級生が大勢集まっている中「うっせぇホモ野郎!」と怒鳴るように言葉をぶつけられたが最後
ブチっと電話が勝手に切れた

大人になったことで関係を築けると信じようとした自分の愚かさと久々にきいたその言葉に
悲しいと思うまもなく泣いた
涙したことを電話先のかつてのチームメイトやムライに知られなかったことだけが救いだ

わたしはもがくように泳ぐ中で
息継ぎをしてその苦しさから逃れるようにわれに返った

シノサキ先輩があの廊下での出来事のあと
何か確信的なことを伝えてくれていた…
ような気がする

しかし思い出そうと何度25m先の壁を蹴っても
彼の声が聞こえることはなかった

例え聞こえたとて、はっきり認識しなかったこと、あのとき回収しなかったことは
どうしても埋まることはない
埋まることがあるのだとすれば
それはなかったものを作ったに過ぎない

絵柄もはっきりと見ずあの時はめなかったピースは
2度とはまることはない
その夢の先も見ることはない
ないものはない と分かっている

この話はここ止まり これきりなのだ

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