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おうまの写真を撮っている2~2023年ヴィクトリアマイル観戦記

 ドーモ、タイラダでんです。よくいらっしゃいましたね。

 さて、前回の記事で希望していたヴィクトリアマイル観戦。当日の指定席が取れたので、東京へと遠征してきたのである。今の最推し馬であるソダシを撮るためだ。

2023年5月 東京競馬場にて

 朝5時に置き、心底嫌いな飛行機(飛行機は本当に苦手で、人類は一刻も早くでかい鋼鉄の塊が空に浮かぶなどという非科学的で非常識極まりない乗り物を撤廃し、新たな交通・輸送手段を構築すべきだと思う)に乗り、一路東京へ。
 羽田から電車を乗り継ぎ、ついに憧れの東京競馬場に降り立ったのであった。

 本日の天気は曇り時々雨。あいにくのお天気、というやつだが何にもまして寒さが厳しい。寒さをあまり考慮しない格好で赴いてしまったために、終始震えながら撮影をする羽目になってしまった。九州はあんなにいいお天気で暖かかったのに、だ。このあたり、日本の南北方向の長さというものを文字通り肌で実感できる、旅の面白いところの一つだと思う。

2023年5月 東京競馬場にて

今回取れた席は、野外席の3階部分、ゴール板を少し過ぎたあたり。最後の直線の攻防(府中=東京競馬場の名物といえば、大ケヤキと長い最終直線だ)からゴールの瞬間までを一望できるナイスポジションだ。

 さて、一息ついたところで早速レースを撮影にかかる。前回も書いたようにレースの撮影は一発勝負。メインのヴィクトリアマイルを撮る前に、少しでも練習しておきたい。
 とはいえ、それはあくまでこちらの都合。各レースの関係者、そして何より実際に走る馬たちにとっては真剣勝負の場であることは間違いない。そんなことを考えると、自然カメラを持つ手にも力が入る。

2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて

 馬は素晴らしい。キレイで、可愛くて、それでいて力強い。写真を撮りながら、そんなことを考える。それをどれだけ捉えられるか。
 そんなことを考えつつも、まあ趣味の写真だしそんなに肩肘張らなくてもいいよね、の精神も忘れぬようにしてシャッターを押し続ける。

2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて

 そうしているうちに、メインレースの時間が近づいてきた。出走するサラブレッドたちが、パドックにてお披露目される時間が近づいてきたということでもある。僕はパドックに一時間ぐらい前から張り付いていたが、僕よりも早い時間から待機している方もいたようだ。執念だ。
 観客がざわめき始めた。名馬たちのおでましの時間だ。

2023年5月 東京競馬場にて
牝馬二冠 スターズオンアース号
2023年5月 東京競馬場にて
昨年の安田記念勝ち馬 ソングライン号
2023年5月 東京競馬場にて
昨年の秋華賞勝ち馬 スタニングローズ号
2023年 東京競馬場にて
オークス3着 秋華賞2着 ナミュール号
2023年5月 東京競馬場にて
桜花賞3着 高松宮記念2着 ナムラクレア号

 ……何だこの豪華メンバー!? 
 本当は全頭の写真を載せたいところではあるが、そうするとセレクトセール(競売のことだ)の写真にしか見えなくなってくるのでここらで止めておくこととする。
 と、ここでお客さんの一部から歓声が上がる。僕はそれで何かを察知し、カメラをその方向へと向ける。

2023年5月 東京競馬場にて
阪神JF1着 桜花賞1着 そして昨年のヴィクトリアマイルの覇者
ソダシ号

 ワァ……ソダシだ……! ほんもののソダシだ!
 思わず、口から「ちいかわ」のような声が漏れてしまう。実際にこの目で見たソダシは、とてもこの世のものとは思えない存在に映った。大げさではなくそう思えてしまった。
 夢中になってシャッターを連打する。後で確認したら、ソダシだけ気持ちが悪いくらい大量に撮影していた。よほどはしゃいでいたのだろう。写真集も売れるはずだ。
 ひととおり写真を撮って、満足のうちに席へと急ぐ。パドックで騎手たちが乗馬するところまで撮影すべきだったということに気づいたのは後のことだ。慌てていたのだろうが、惜しいことをした。

 ――さあ、第18回ヴィクトリアマイルの出走だ。

2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて

 発走直前にいきなり大雨が降り始める。観客がざわめく。なんてタイミングだ。幸い、野外とはいえ屋根付きの座席だったので撮影に支障はない。
 ファンファーレが響き渡る。夢の一つであった「東京競馬場で関東GⅠファンファーレ(故すぎやまこういち先生作曲の、まごうことなき名曲だ)を聞く」がかなった瞬間である。
 いよいよスタート。スタート地点は向正面なので、いくら望遠レンズ(本来は野鳥や飛行機を撮るためのものだ)でも撮影はできない。巨大なターフビジョンに映し出された各馬の様子を、固唾をのんで見守るしかない。ソダシは2番手につけた様子。ソダシに騎乗するレーン騎手が後ろを何度も振り向く。何かあったのか?

後でわかったのだが、ソダシはスタート直後にかなり危ないコース取りで走ってしまっていたらしい。公開されたジョッキーカメラの映像にも、スタートしてすぐに他の騎手の「ウワッ」という感じの声が入っていた。レーン騎手には過怠金(罰金のことだ)の支払いという制裁が下った。勝負事なので仕方ない部分もあるのだろうが、本当に気をつけてほしいものだ。

 それでもレースは、よどみなく進んでいく。大ケヤキを越え、最終コーナーを曲がり各馬のペースが上がる。全長510メートル、坂越えも挟む東京競馬場名物の最終直線へ。カメラを構える。ファインダー越しにソダシが抜け出すのが見える。行け、ソダシ!

2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて

 絶好の手応え。ソダシが勝つ! そう思った瞬間、そのソダシに追いすがってくる一頭がいた。昨年の安田記念覇者、ソングラインだ。さらに驚異的な末脚でスターズオンアースも迫ってくる。
 ソダシとソングライン。二頭が並行するように走る。これはもう、どっちが勝ってもおかしくはない。
 ゴールの瞬間、シャッターを連打。ファインダーから目を離し、止めていた息を吐く。
 ――勝ったのは、ソングラインだ。

2023年5月 東京競馬場にて
僕はこういう写真が撮りたくて
はるばる東京までやってきたのだ

 名勝負、まごうことなき名勝負だった。ソダシが破れたことに残念な気持ちがない訳では無いが、そんな気持ちが吹き飛ぶぐらいの熱いレースであったことは間違いないと思う。おめでとうソングライン号。

2023年5月 東京競馬場にて
2023年5月 東京競馬場にて

 そういうわけで、僕は大満足のうちに初めての東京競馬場をあとにしたのであった。
 それにしても生で見る競馬は本当に良い。九州住みの社会人なので、そんなにしょっちゅう遠征するというわけにはいかないのだが、今後も都合が付くかぎり競馬場に足を運びたいと思う。
 次は夏の小倉競馬か、はたまた新たな三冠牝馬の誕生を目撃するために阪神競馬場へ赴くか。どちらにせよ楽しみである。

 あ、東京競馬場名物の大ケヤキ(ケヤキではない)を撮るのを忘れた。
 惜しいことをしてしまったが、まあそれは次回の課題ということで。

 【おわりです】


そんな…旦那悪いっすよアタシなんかに…え、「柄にもなく遠慮するな」ですって? エヘヘ、まあ、そうなんですがネェ…んじゃ、お言葉に甘えて遠慮なくっと…ヘヘ