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「じゃない写真」読了。


著者:渡部さとる
梓出版 2020

Youtubeの2B チャンネルでおなじみの渡部さとるさん。

『「こんなの写真じゃない!」と思ったら読む本』という副題通り、昨今の現代アート化した写真を広く浅く(悪い意味ではなく)把握できる本。

知人のパリ在住写真家が「『写真とは何か』を考えていくと、どんどん写真じゃなくなっていく」と言っていたことが納得できたり、最近自分自身の中で『綺麗な写真』を撮る意味がわからなくなってきたことに関して、その理由の一端がよくわかった。

「伝える」という役割を動画に奪われた写真。絵画が写真の登場をきっかけに具象画→抽象画へと移行したように、現在の写真は「対象を写して何かを伝える」という役割から、もう一段階先に進もうとしているように思える。

以下要約。

・写真が「被写体から自由になる」とはどういうことか。

・美術館に展示されるようなポートレイトは、なぜ皆「仏頂面」なのか?

・「主観」「私写真」から離れ、「私」の視点が画面から消えていくとは。

・メッセージが一方通行ではなく、写真家、作品、鑑賞者、空間が揃って初めて、「場」が立ち上がる展示。

・茶の湯と共通する「現代アート」

・再び時代は「プロヴォーク」へ。皆の思い込みや、共通の概念、記号を引き剥がそうとする試み。

その他、多くの具体例と共に現代写真を考える構成になってる。

「伝える」役割を終え、主観も消えていき、写真は「物体」としてインスタレーションに近づいていく、、好き嫌いは別として(笑)。

とは言え自分は、なかなか「物語」から離れられない。

個人的には巻末にある、渡部さんの学生時代から現代に至るまでの道のりが面白かった。

おすすめです。

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