見出し画像

就学前教育の重要性

□景色
学業や仕事など人生のさまざまな側面で成功や失敗を生み出す多様なスキルがある。スキルは別の新しいスキルを生み出すので、ライフサイクルの観点に着目して役立つ能力や意欲の性格特性、スキルの根源を築くのがいつなのか追ってみた。

アメリカではマイノリティの経済的貧困が社会問題で、なぜ所得格差が起こるかを分析すると「学歴の違い」が浮かび上がる。
そこでマイノリティの大学進学率を高めるため様々な補助政策が行なわれるが(人々が自発的にさまざまな選択をした結果から得られる現実のデータを用いた場合に自発的選択によって生じる計測の歪みを修正する方法を開発しノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授が研究した結果)、その効果は小さいことが分かった。では、いつの段階で公的な教育支援をすれば、所得格差の縮小につながるのか。

□本

画像1

『幼児教育の経済学』
ジェームズ.J.ヘックマン 東洋経済新報社 2015年

目次
パートⅠ 子供たちに公平なチャンスを与える
パートⅡ 各分野の専門家によるコメント
パートⅢ ライフサイクルを支援する
解説

要約
大学へ進学するかどうかの強力な予測因子を母親の学歴別に筆者らがまとめたところ、子どもが小学校へ入学する時点で格差は明白だった。

画像2

サラ.マクラナハンは、どんな家庭に生まれるかによって子供は「運命の別れ道」に直面するという。
小児期の逆境的経験がもたらす悪影響は著しい。

画像3

また幼少期に親密なふれあい体験が欠落すると、脳の発達に異常が生じる。

画像4

子供の不利益を決定する主要な原因は、たんなる経済状況や良心の有無よりも生育環境の質にある。

恵まれない子供の幼少期の環境を充実させる試みは数多くあるが、中でもペリー就学前プロジェクトは意義深い。3歳4歳のアフリカ系アメリカ人の子供たちを対象に、毎日平日の午前中を学校で教育、週に1度午後に先生が家庭訪問して指導にあたるのを2年間実施し、約40年追跡調査を行った。

画像5

画像6

就学前教育を受けた子供は、受けなかった子供よりも学力検査の成績が良く、学歴が高く、特別支援教育の対象者が少なく、収入が多く、持ち家率が高く、生活保護受給率や逮捕者率が低かった。

子供が成人後に成功するかどうかは幼少期の介入の質に大きく影響される。スキルがスキルをもたらし、能力が将来の能力を育てるためだ。

0〜5歳の就学前教育は、その後の人生に大きな影響を与える。またIQに代表される認知能力だけでなく、忍耐力や協調性、計画力といった非認知能力も重要である。幼少期に投資を集中し、その後の投資でフォローアップすれば、公平性と効率性の両方を達成できる社会政策を実施できるであろう。

□ひとりごと
後日、音声公開予定

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?