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社会福祉士という資格の可能性【多様な解釈と本来のあるべき姿勢】

社会福祉士国家資格

社会福祉という世界において「一応」最高峰と呼ばれることのある「国家資格」である。「一応」と前置きしたのは、解釈によって様々なとらえ方が現存しているということ。


国家試験問題を紐解くとわかるように、「高齢者介護」「障害福祉」「児童福祉」「貧困」「医療」「心理」「矯正」等、人間社会の様々な分野が混在し、「組織論」も含めこれらの知識を横断的に理解する必要がある。

そう考えると確かに「最高峰」に近いレベルまで見識を挙げる必要があり、それなりに高貴な存在となっても良いはずなのだが、最近このような言葉を耳にした。


「社会福祉士は取っても無駄」


しかもこの言葉に同調する声もそこそこ聞かれる。


では、実態として社会福祉士を取るとどのようなことが起こりえるのか、自分の経験も踏まえて検証したい。これから資格取得を検討されている方には、これらの情報をもとに「無駄かどうか」をご自身の感覚で判断してほしい。


長くなりそうなので、前・後半に分け、後半は主にこれから資格取得を目指す人へ向けたお話(勉強方法等)をしたい。





「社会福祉士はどんな仕事ですか?」


突然だがこの問いかけに社会福祉士の皆さまはどう答えるのだろうか。実際に聞いたことはないけれど、おそらく多様な答えが返ってくるのではと思われる。


一般的に考えるとそれ自体おかしなことかもしれない。

仕事の説明が人によってバラバラなのに「国家資格」なのである。そもそもが「社会福祉」という言葉の概念だって何通りもの言い回しがある



「社会福祉」の正式な規定はどこにあるのかというと、

例えば、日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に批准するもの。

社会保障審議会においては1950年の勧告で「国家扶助の適用を受けている者、身体障害者、児童、その他援護育成を要する者が、自立してその能力を発揮できるよう必要な生活指導、更生補導、その他の援護育成を行なうこと」などとクドクド述べられている。


これらの小難しい説明はここでは割愛したい。

それよりも、これらの堅苦しく、かつかなり多義な概念があるにもかかわらず、多くの一般市民は「福祉の仕事=おじいちゃんおばあちゃんの介護」とかいうイメージが先行し続けている



私は学生の頃から障害福祉を専門とし20年以上にわたりこの分野を中心に社会福祉活動を続けているが、この間幾度となく「介護の仕事は大変でしょ?」と聞かれることがあった。

そういった方々に「就労移行支援」「ソーシャルワーク」等の文言はまず理解されない。



話をちょっと戻すが、「社会福祉士の仕事とは何ですか?」の問いに、私だったら「様々なハンディキャップを抱える人たちが少しでも安全・安心して生きていけるような環境づくりを色々な人と協力(連携)して進めるお仕事」とおおよそ答える。


結構ぼんやりとした答えかもしれないけど、答えられるのはそんなところくらいだ。もっと深く知りたいという人にはいくらでも深く話ができる。

業務独占ではなく名称独占であるこの資格を語る上では、「社会福祉士=この仕事」ではなく、「社会福祉士という存在を活かした仕事」と言うことになる。




また、社会福祉士は「相談援助職」とも言い換えられる。

実際に受験資格取得のために講義では「相談援助技術」のグループワークがあり、国家試験の事例問題では「相談援助」の事例が多く取り上げられることとなる。

この「相談援助」という言葉すら、現任者の間でも解釈は様々であり、それこそ一般の方々にとっては「個室(ブース)で待機し、そこに相談したい人が現れて話を聞く」みたいな光景だけがイメージされてしまうかもしれない。


つまり、少なくともある程度福祉の仕事をしている人であれば「相談援助=ソーシャルワーク」くらいはイメージできるが、そうでない一般の方々にとっては「相談援助職=カウンセリングやお悩み相談」みたいなイメージとなり、微妙な乖離が生じてしまう。



私は、多少福祉の勉強をされていたり、お仕事の経験がある人には、余計な忖度せずに「社会福祉士とはソ―シャルワーカーのこと」という言い方で伝えている。実際には言い切るには他に細かな分別はあるのだが、変に「相談援助云々」等の言い方をすると上記のような乖離が見られるからである。

そして、福祉に携わる以上、「ソーシャルワーク」という言葉は明確に認識してほしい。そういう気持ちである。


個室で相談を受けると言うのもその業務の一部には違いないが、私個人の想いとしては、社会福祉士は座して待つ仕事ではなく、足で稼ぐ仕事だと認識している。




「社会福祉士として独立するとどんな仕事になるのですか?」


これも良く聞かれる質問。

この場合は、やはり実態をまず知っていただかなければならない。実態とは、今の独立型社会福祉士が「成年後見」にまつわる手続きであったり、ケアマネジャーの資格を有し「介護保険」「ケアプラン作成」関連の業務を行っているケースが多いということ。


もちろん上記以外にも独自に事業展開を進める事業主も見られる。

胸を張れるわけではないが私自身もそうだ。

私の場合は、これまで培ったキャリアをもとに、支援にあたる側のサポート(支援者の支援)や経験の浅い要職者の不安解消のための外部アドバイザーとしてのサポートを軸に様々な事業展開をしている。


(私の事業の一つ「障害福祉支援アドバイザー」)

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アイデアはいくらでもある。ただしそのアイデアが「収入が得られるか」が大きく影響されるのは言うまでもない。そこに触れるのは今回はしない。別の機会でいくらでも語ることができるであろう。

ただ、私のような「個人事業主」あるいは「フリーランス」として独立を検討される場合は、「社会福祉士国家資格」という看板は「信頼性」に強く直結する。それだけでも「持っておくべき」と言えるレベルである。




社会福祉士の仕事についてに話を戻すと、これらのさまざまな解釈や概念が渦巻く中で、忘れず伝えたいのは、その「対象者」のこと。

先程述べたように「おじいちゃん・おばあちゃん」だけではない。障害を持つ人(障害でも「身体」「知的」「精神」「難病」などさらに細分化)、子ども、生活貧困者、ひとり親家庭、外国人、前科者などもこれにあたる。対象「者」ではないが「地域」そのものも対象だ。




余談だが、毎年夏に某テレビ局で夜通し放送されるチャリティ番組については、毎年のように疑問が投げかけられている。

番組内容はもちろんだが、先述してきたように「福祉=●●」の概念がとても狭いからである。障害者一つとっても「身体障害者」がフューチャーされやすい。最近でこそ「知的障害者」も多く出演するようになったが、「精神障害者」からは「自分たちを無視か」などの声が上がることもある。これには別の社会的側面もあるかと思われるが、きりがないのでここでは割愛させていただく。個人的には、いちテレビ番組にそこまでの理念を求めるのはそれこそ「無駄」ではないかと思うところはある。

ちなみに私自身はこの番組はまともに観たことはない。



また、昨今ようやくとりあげられるようになってきた「障害と認定されない障害者」つまり、グレーゾーンの界隈に対する支援も少しずつ必要性を帯びてきた。これは良い傾向だ。社会福祉士である以上は、表舞台ばかりでなく、このようにグレーの界隈にも目を向け、必要な援助を施すべきであろう。



実際のところはどうなのか。

例えば、全国に点在する医療少年院では社会福祉士の配置が進んでいる。医療少年院の目的は矯正と自立なので、矯正後の生活支援に力が添えられるのは本来の目的に沿うものであろう。

また、ブリーフセラピーのように、大切な人を亡くした遺族のケアやその後の生活(気持ち)の立て直しに対して寄り添う役割としても社会福祉士の見識は生かされるはずである。何も心理療法だけが求められるものではない。





ついでながらこちらについても一応触れておく。「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」(仮称)



新たな国家資格を増やし、さらに概念が細分化されることで、社会的な認識は大きくゆがめられてしまうリスクがある。であるならば、既存の資格を柔軟に有意義に拡充することの方が有効なのではとひたすら思ってしまうが、現場経験のない国会議員ではそういった見識を育むこと自体むずかしいのであろう。




このように、「社会福祉士の仕事とは」というテーマで語ると限りなくまとまりがないコラムとなってしまうが、逆の言い方をすると

「整理されていない数多くの要素一つ一つを丁寧に拾い上げる作業」こそが社会福祉士の仕事

である。

数理学のように明確に「答え」が出せるものではない。ただその分だけ一つ一つの要素に「可能性」が無限に秘められている。その可能性を引き出す作業を、本人と一緒に進めていくことの喜びややりがい。このあたりが社会福祉士(ソーシャルワーカー)の醍醐味である。


だからこそ、ありきたりの昔ながらの「福祉」ではなく、今の時代・これからの時代に合った「社会福祉」の在り方を構築できる・可能性を広げられる社会福祉士がこれから増えていくことを期待している。また私自身もその思いでひたすら精進しているつもりである。


「無駄」なんてことは決してない。ぜひ多くの方々にチャンレジしてほしい。


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長いだけでわかりにくかったかも。

何度も言うように、社会福祉士とはその人の数だけ解釈があるもの。その中の一人の実践者としての社会福祉士の見解として、参考となれば幸いである。



では、社会福祉士(他の福祉系国家資格も含む)の取得のためにはどのように勉強していけばよいのか、そのあたりを自身の経験から次回話していきたい。

最後までお読みいただきありがとうございました。皆様のお役に立てるようなコラムを今後も更新してまいります。ご縁がつながれば幸いです。 よろしければサポートお願いいたします。