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【振る舞いのプレゼンス】楽しく仕事をするために心掛けていること

起業5年目を迎え創造活動の幅を拡げている弊社POV。最近よく訊かれる質問で「POVでは営業とかマーケティングはどうしてるんですか?」というのがあります。「特にやっていません」というのが最もシンプルな答えになります。元々仕事を増やそうというより、自分のやりたいことを楽しく仕事にしたいと思っているからかもしれませんが、人の繋がりが自然と仕事に発展していくのが殆どです。カフェでの世間話が仕事に発展する場合もあり、今日はそんな、ベイエリアの日常で、楽しく仕事をするために心掛けていることについて話をしたいと思います。

SVらしい危機感と表裏一体の楽観的マインド

シリコンバレーには独特の雰囲気やカルチャーがある。殆ど雨が降らない温暖な気候や豊かな自然に囲まれているとついつい暗示に掛かって陥る「万一無収入になってもすぐ死ぬことは無いだろう」(笑)という楽観的マインド。そして、周囲を見渡せば多くのスタートアップが日々鎬を削る中、無我夢中で仕事にフォーカスするエンジニアやデザイナー。そんな環境にいると所謂Can Do Cultureと呼ばれる「自分にも出来るんじゃないか?」という空気感がベイエリア全体を包み込んでいるように感じます。

一方で、サンフランシスコなどに行けば世界でも最も苛烈な格差社会を目にする。どんなに成功している人でも一度見当を見誤ったり、努力を怠ったりすれば忽ち足元を掬われて職も資産もステータスも一夜にして全て失いかねない危機感と常に隣り合わせても居ます。この危機感と表裏一体の楽観的マインドの織りなすスリルと豊かさのコントラストは、シリコンバレーならでは創造的マインドの源泉になっているように思います。

セレンディピティを掴む日々のプレゼンス

マインド醸成以外にもベイエリアらしい創造の風土があります。自分を表現する機会。実際にこれまでの5年ほどの間にカフェなどでたまたま知り合った方との会話からビジネスに繋がったことが少なからずあります。自動運転車両のデザインや、特殊なセンサーを使った全く新しい防犯システム(!)や、面白いところでは大麻吸引グッズのECサイトのデザイン(これは丁重にお断りしましたが(笑))など、多岐に渡ります。禅寺で知り合った方からワークショップを頼まれたこともあります。

話の発端は様々で、たまたま私がカフェで拡げていたスケッチに興味を示して「Are you an artist?」と近寄って来られたり、いつもカフェの前にフェラーリを横付けする投資家とはクルマの話をキッカケにして会話が始まったり。基本、米国人は話し好きなので、いつも会話のキッカケを探している。そんな話し好きの中にエンジェル投資家が居たり、会社を幾つも経営する実業家が居たりする。そうした人達に「コイツ何者?」と思わせる何かがあれば彼らは必ず話しかけてくる。その意味では自分の日々の振る舞いがプレゼンテーションになるということでしょう。経験上、過剰に誇張されたものは簡単に見抜かれる。むしろ「自然と醸し出される然り気無いスゴ味」のようなものが最も響くように思います。

リスクテイクと未来志向の身軽さ

仕事の頼まれ方やスタートの仕方も独特のものがあります。日本だと契約する際には機密情報や知財権の扱い、利益配分、問題が起きた場合の対応など全て詳細に取り決めてからでないと締結できませんが、此処で経験するのは非常に軽やかなビジネスの始まり方です。最低限の取り決めだけ、ただし相互のリスクテイク(特に“ヘッジ”でなく“テイク”)に十分な時間と知恵を注ぐことで限りなく速くビジネスをスタートさせようとします。

あるプロジェクトはプロセスを最大限簡素化し、報酬もお金に拘らずストックとして上場後の事業成長でリベニューを拡大する取り決めだけしてスタートしました。初めから利益に固執したりリスクを避けようとすれば課題だけが増えますが、将来に向けてリスクを取り合った未来志向な進め方なら相互にモチベーションも上がります。やる前からやった後を不安がるのではなく、速く行うことで不安を減らしていく。そんなマインドの違いも感じます。

何でも自分でやろうとしない

リスクテイクによる楽観とスピード感、そして日々の振る舞いそのものがプレゼンスとして機能していることで、特段のプロモーション活動なく仕事を獲得する。自分を過剰に売り込むことよりも、等身大の自分を見つめ、自分に出来ることと出来ないことを明確にして、出来ない部分は積極的に人を頼るという正直でオープンな姿勢も大切にしています。

前回も触れたデザイン思考のルールで「Build on the other’s ideas」(他人のアイデアに乗っかれ)というのがありました。日本人の価値観からすると「他の人が考えたアイデアはその人に権利がある」と考えがちですが、コチラでは逆で「人の考えには限界がある。だから常に衆知を募って高め合う」のが基本となっている。イーロン・マスクがハイパーループ開発をオープンソース化していることも象徴的です。

日本人は個人の能力や限界を超えた努力(根性)に過剰に期待する傾向があるように思います。人一人に出来ることの限界を知り、人の持つポテンシャルの掛け合わせでこそ無限の創造を可能にする。そのために等身大の自分と向き合ってこそ、誇張無く人を魅了する創造が可能になると信じています。

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