4.坊やだからさ

ついに生まれて初めてダンスをする日を迎え、意気揚々と名古屋女子大に乗り込んだ私だったが、先輩が発したのは「パーティーダンス」という人生で初めて聞くワードであった。

パーティーダンスって何?

社交ダンスとどう違うの?

という皆さんの疑問に答えるべく、ここで少し説明をさせて頂こう。

社交ダンスは大きく分けると、スタンダードダンス、ラテンダンス、パーティーダンスに分類される。アメリカンスタイルもあるがここでは割愛させて頂く。

スタンダードダンスはワルツなど、もともとは王侯貴族により宮廷で踊られていた「コート(宮廷)ダンス」を起源とするもの。

ラテンダンスはチャチャチャやサンバなど、ラテンアメリカ諸国などで踊られていた民族舞踏がイギリスで標準化されたもの。

パーティーダンスはその名の通り、パーティーで踊る為のダンスであり、初めて会った人とでもすぐに踊れるように簡単なステップで構成されたダンスである。

つまり、パーティーダンスは社交ダンスに内包されているのだ。


「では早速やってみましょう。最初に皆さんに覚えてもらうのはブルースという種目です。」

ほほぅ、「ブルース」とな。聞いたことあるようなないような。

「ではまず私達が実際に踊ってみせますね。」

先輩方が見本を踊って見せてくれる。

ゆったりとしたテンポの4拍子の曲にあわせて、男女が向かい合いながらジグザグに移動していくものの、ステップはほぼ前進と後退しかない。

「ね、簡単そうでしょ。」

確かに。これくらいならすぐ出来そうだ。

「では早速やってみましょう!」

男子は男性の先輩から、女子は女性の先輩からそれぞれステップを習い、ひと通り覚えたところで

「じゃあ、一緒に組んでやってみよっか!」

ついにキター❗この瞬間が!


男子は女性の先輩と、女子は男性の先輩と向かい合う。

「ではまず向かい合った人と両手を繋いで下さ〜い!」

マジすか! いいんすか!? (心の声)

さっそく目の前のセクシーな色気ムンムン(あくまでも主観である)の女性の先輩の手を握る。

うわっ、柔らけ〜! (心の声)

大丈夫? これ犯罪にならない? (再び心の声)

「じゃあいくわよ、坊や。」

(私にはこう聴こえた)


はい!お手柔らかにお願いします!

早速さっき習ったばかりのブルースのステップを踏み出す。

私は前進から、女性は後退から。

スロー、スロー、クイック、クイック。

スロー、スロー、クイック、クイック。

おっ、イケるじゃん。

「初めてのわりには上手いじゃない、坊や。」

(私にはこう聴こえている)


あざっす!

ある程度出来てくると余裕も生まれてくるもので、それまでステップに夢中で気付いてなかったのだが

女性との距離がエグい❗


女性の先輩との距離はわずか30cmである。

初対面にしてすでにパーソナルスペースに侵入成功である。

そして顔が近い!

4Kだったら耐えられない近さである。

嬉しさを通り越して恥ずかしさでつい顔を背けてしまう。

何故かつい腰も引けてしまう。

そうこうしている内に

「はい、じゃあそこまで〜。次の人と組んで下さーい。」

と声が掛かる。

「なかなか良かったわよ、坊や。」

(くどいようだが私にはこう聴こえている)


そう言って私にとっての初めての女性は颯爽と去っていったのである。

そして私は多少の未練を残しつつ、しかしワクワクしながら次の女性を迎えたのである。

・・・

これが私の初めてのダンス体験である。

ここまで読んで頂いた男性の中には、一刻も早く社交ダンスを始めたくなった輩も多いに違いない。

これがちゃんと踊れる男性だったなら引く手あまたなのも想像に難くないだろう。

さて次はいよいよ実戦デビューである!

初めてのパーティーやいかに!





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