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進撃の巨人から考える壮大な「トロッコ問題」について~進撃最終話を迎えて~

今日は、今春ついに完結を迎えた『進撃の巨人』について語りたいと思います。

『進撃の巨人』の連載期間は、「2009年9月9日 から2021年4月9日」。

同世代の97'年生まれにとっては小学5年生の年から、社会人1年目まで連載されたため、まさに「青春」とともにあった作品でした。

そんな思い出深いこの作品ですが、今回は「トロッコ問題」の観点からこの作品について語ろうと思います。

どういうことか。

これを解説するには最終章のあらすじを理解する必要があります。
(ネタバレが嫌という人はぜひ今から全巻お読みくださいw)

ここからは最後まで読んだよ、という方かちょっとのネタバレならOKという方のみお読み下さい。

(一応、進撃の巨人のあらすじを書きますが、「分かるよ」と言う方は次の■までとばしてください。)

「人類が巨人により滅亡しかかっていて、壁の中に残された人類が巨人と戦う物語」

という所まではなんとなく覚えている方も多いと思います。

その後どうなるかというと、主人公エレンが属する調査兵団はそのまま巨人と戦い続け、物語で冒頭に失った領地「ウォールマリア」の奪還に成功します。

エレンが巨人化できるのは皆さんも知っての通りかと思いますが、”エレンが巨人化できる理由”や”外の世界の情報”が奪還した「ウォールマリア」内の”エレンの家の地下室”にあるとされていました。

「ウォールマリア」奪還後、エレンの家の地下室に行く調査兵団ですが、そこにあった世界の情報は驚くべきものでした。

なんと、壁の中の人類は人類のほんの一部に過ぎず、壁の外には多くの人類が住んでいたのです。

壁の中の人類は簡単に言うと「迫害」されており、壁の外の勢力により定期的に巨人が送り込まれていたのでした。

そして、壁の外の人類の中で一番大きい勢力が「マーレ帝国」。

この帝国は過去の歴史から壁の中の人類を憎んでおり、同時に畏怖の念も抱いていました。

その畏怖の理由とは、「壁の中の人類は巨人化できる体質を持っている上、その気になれば世界を滅ぼす力(地鳴らし)を持っている。」という事でした。

簡単に言うと、壁の中の勢力は世界で最も憎まれ、かつ小さな勢力ではあるが、「核兵器」のような一撃必殺の兵器を持っていると考えてください。

その発動のスイッチを持っているのが主人公「エレン・イエーガー」その人だったのです。


壁内人類はこの理由から壁外人類に恐怖されると同時に、「氷瀑石」というこれからの技術発展に重要な天然資源も保有している事も分かりました(現実で言うとメタンハイドレードみたいな物)。

さらに、大昔に壁内人類が壁外人類を迫害した歴史があり、「マーレ帝国」はこれを憎んでいました。

壁外人類である「マーレ帝国」が壁内人類を占領・虐殺するには十分な理由があったのです。

「マーレ帝国」は壁内への侵攻を虎視眈眈と狙っており、エレンたち壁内人類の残り時間はあまりに少なく、彼らにとって「どうすれば世界と渡り合えるか」は喫緊の課題でした。

エレンは「世界を滅ぼす力(地鳴らし)を使う」以外に壁内人類を救う道はないかと模索しますが、「世界との対話」「地鳴らしをちらつかせた上で壁内人類の技術発展を待つ」などの選択肢が現実的ではない、あるいは仲間の犠牲が必要な事を知り、エレンの覚悟は次第に決まっていきます。

まさに、エレンは「(世界人類の大半である)敵を皆殺しにする」「仲間を見殺しにする」かの究極の選択をしたと言えます。

上記は、トロッコでエレンの力の継承先について話し合うアニメFinal Season10話のシーンですが、「トロッコ問題」を連想させる狙いがあったのは間違いないでしょう。


ここまで読んだ方なら言わずもがな、エレンが選択したのは「壁外人類の大半を地鳴らしで虐殺する」事でした。

エレンには、「大半」の壁外人類を虐殺する事によって壁内人類と壁外人類の勢力を均衡化させ、自分は「地鳴らし」を止めに来たアルミンたちに殺されることで彼らを英雄にする狙いがありました。

壁内人類であるアルミンたちを英雄にすることによって、壁外人類との対話の可能性を残し、その後の争いを最小限にしようとしたのです。

「そこまで徹底的にしなくていいんじゃない?」という意見もあるとは思いますが、徹底的にやらなければ壁外人類からの報復は免れなかったでしょう。

これはある種、エレンの「仲間を救いたい」と言うエゴを世界に押し付けた結果と言えます。

「仲間」「世界」を秤に掛け、「仲間」を取ったのがエレンなのです。

世界からすればただの大虐殺者でしかないですが、物語を感情移入しまくっている自分からすれば、エレンの選択は「否定できない」と正直思います。

ただし、私が当事者でも壁外と壁内のそれぞれのポジションでしか物を言えないのだろうな、などと。。。

色々考えてしまいますが、エレンが仲間を大切に想っていたのは確かだし、仲間を何より大切に思えばあの選択肢しかなかったのは間違いありません。

以上です。

本当に面白く、色々考えさせれる作品でした。

そんな進撃の巨人の最終巻ですが、別マガの本誌とは違う加筆がしてありますので、ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか?

さて、今日はこの辺で。

参考資料の購入や取材費、その他活動費用に充てさせて頂きます。