インスタントフィクションに挑戦

今日私はお気に入りの白いシャツを着る。
柄やプリントなんてとんでもない。
真っ白の無地のシャツ。
そこに一点のくもりもない。

白は「純粋」の色。
白は「無垢」の色。
白は「素直」の色。
白は「処女」の色。

白を着た私は誰がなんと言おうと完ぺきなまでに清い。
立ち居振る舞いだって優雅になる。
昼のワイドショーの報道だって、未だ増える未知のウィルスに感染した人を想い胸を痛めた。
ランチを買いに外に出て、理不尽に降った雨にさえも微笑んで対処する。
かつての恋人を水たまりに映し、「どうか幸せでいますように」とつぶやいた。


白は「光」の色。
黒の「闇」とは真逆の性質。
黒の死は、“闇に向かう”というイメージで死んでいく。
白の死は“光へ向かう”というイメージで「再生」のために死んでいく。
白は間違ったものをもう一度まっさらな状態にするというイメージで、「リセット」をする。

白を着た私は一歩一歩生まれ変わる。
スーパーに向かう足取りの中、細胞が新陳代謝を繰り返していることを感じよう。
昨日の私は今日の私ではなく、今日の私は明日の私ではない。
さっきの仕事のミスは忘れよう。


白を着た私にランチは洋食に違いない。
チーズインハンバーグはどうかしら。
目玉焼きがのっているロコモコ風。
なぜか切れない”どこからでも切れるマジックカット”にだって腹は立たない。
今日の私は白いから。

切れない、切れない、切れない。
力をこめて引きちぎった小袋から、ソイソースが勢いよく飛び出した。


っっざけんな、何してくれてんじゃゴルぁぁっ!!!!!!!!!

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