トランスジェンダリズムと「ジョグジャカルタ原則」『活動家ガイド』

 ●トランスジェンダリズムに疑問を持つ理由 

 昨日論考を紹介した駒澤大学非常勤講師の森田成也氏(マルクス経済学)がトランスジェンダリズムに疑問を持つに至った理由の第一は、主として海外の情報から、とりわけラディカル・フェミニストに対してひどい攻撃や脅迫と暴力を振るっていることを知ったこと。第二は、熱心なトランスジェンダー派ほど、売買春肯定、ポルノ肯定であることを知ったこと。第三に、トランスジェンダーとは性同一性障害の人のことと思っていたが、実際には後者はトランスジェンダーのごく少数の一部に過ぎないことを知ったこと。第四に、2020年6月にJ.K、ローリングさんが、トランス当事者に対して非常に配慮しつつも女性の「身体的性別に基づく権利」の重要性を訴えた声明文(https://note.com/f_overseas_info/n/nb9dee80c5f82)に対して、全世界のトランス活動家と左派が信じたいほど暴力的で誹謗中傷的な攻撃をしているのを目の当たりにしたことである。
このような過激なトランス活動家たちの暴力性こそが多くの人をトランスジェンダリズム批判に向かわせているのであるが、批判が広がっているのを見て、LGBT活動家やジェンダー学者やリベラル派の新聞記者や政治家たちは、トランス差別がますます広がていると憂えて見せる。まさに典型的なマッチポンプである。これらの人たちがなすべきは、トランス活動家の暴力性やカルト性を徹底的に批判して、それと一線を画すことだが、実際には両者はなれ合っており、持ちつ持たれつの関係になっているのである。

トランスジェンダリズムのソフト・ハードバージョン

 注目すべきはアメリカのリベラル新聞『ニューヨーク・タイムズ』やイギリスの左派系新聞『がーディアン』などが相次いで、子供の拙速な性別移行措置に対する強い懸念を示す記事を掲載したことである。ローリング攻撃に加担してきた両紙が全面的擁護に一変したのは画期的といえる。
 トランスジェンダリズムには、「生物学的性別」を認めつつ、それとは異なる「心の性別」ないし何等かの生得的な「性自認」が存在するとみなし、後者を前者よりも優先させようとするソフトバージョン(自治体や国際機関などの公的機関など)とハードバージョン(ジェンダー学者、トランス活動家など)がある。
 ハードバージョンは「身体の性別」すなわち「生物学的性別」の存在そのものを認めず、「性自認」「性表現」等の曖昧模糊としたものが唯一絶対の性別決定要因であるとみなす。トランス活動家たちはトランスジェンダリズムへの異論を「差別者」ないし「ヘイタ―」の誘惑として、読むな、見るな、議論するなと主張する。彼らはトランス当事者のために運動しているのではなく、トランスジェンダリズムというイデオロギーのために運動しているイデオロギー優先の「カルト集団」と見做すべきである。
 かつては「性転換手術」と呼ばれた「性別適合手術」という言い方もトランス・イデオロギーに基づくものである。これは、「性自認」による「性別」こそが「真の性別」であるという考え方に立脚しており、「元の身体に戻る」というカルト的なニュアンスを持った言い方をして、「真の性別」に適合するように身体や外性器を手術するということを意味している。正しくは「性自認適合手術」と呼ぶべきである。なぜならそれは、自分が自認する性別に似せて身体を外科的に変える手術に過ぎないからである。

●「ジョグジャカルタ原則」と『活動家ガイド』に書かれていること

 クビー著『グローバル性革命』によれば、2007年にインドネシアのジョグジャカルタで29の「ジョグジャカルタ原則」が作成され、それを実行するためにJGBT活動家のための200頁の『ジョグジャカルタ原則の活動家のガイド』ハンドブックが作成され、「混乱を招く方法」「LGBT問題の目標を実現するための具体的な実行方法」等を明示した。
 同原則の序文には、「どのような類型の性的嗜好や行為も、小児性愛、近親相姦、一夫多妻、不特定多数との性的関係あるいは獣姦までも排除されない」「『ジェンダーアイデンティティ』とは、各個人が深く感じる内面的で個人的な経験を言い、肉体に対する個人的な感覚を含んで、出生時に付与される性別や衣装、言葉遣い、マナーなどを含むその他のジェンダーの表現と一致することも、一致しないこともあると理解するものである」と書かれている。
 これによれば、性同一性は科学的根拠に基づく生物学的性別によって定義されておらず、主観的な「感覚」の問題である。これはジュデス・バトラーが主張した「同一性転覆」のジェンダー理論の基礎であり、人間の存在に与えられた「両性の解体」を意味する。
 生物学、医学、脳科学研究、ホルモン研究、心理学、社会学その他の科学的研究結果は、細胞の一つ一つまでも男女の性差を正確に記述している。しかし、同原則の序文は、「女性と男性という両性に対する偏見と固定観念」に基づいているから、世界的に蔓延している男女の性別に関する偏見の除去が必要としている。
 このジェンダーイデオロギーを実現するために、同原則は以下の事項を要求している。
⑴ 結婚と親になるといういかなる地位も人間の性同一性を法的に認めることを防ぐ方式で適用されてはならない
⑵ 国家は必ず立法的行政措置を含め、必要なすべての措置を取るべきである
⑶ 各個人が自ら定めた性同一性を十分に尊重し、法的に認めなければならない
⑷ 個人のジェンダー/性を表示しなければならない国が発行するすべての身分証明書に自ら定めた性同一性を反映することができる手順を確実にしなければならない。
⑸ 自分の性的指向とジェンダーアイデンティティに関する情報をいつでも、誰に、どのように公開するかを日常的に選択することができる権利を保障しなければならない


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