「いじめ重大事態」と不登校・いじめ緊急対策一「誰一人取り残されない学びの保障」

    文部科学省は10月4日、小・中学校の不登校児童生徒数と小・中・高校で発生した生命や身体に重大な被害が生じた疑いのあるいじめ(いじめ重大事態)の件数が、いずれも過去最多となった調査結果を公表した。

●「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」
 この深刻な状況を受け、「誰一人取り残されない学びの保障」に向けた取り組みを緊急強化するため、「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を取りまとめた。
 10月4日に公表されたのは昨年度の調査結果で、小・中学校の不登校児童生徒数が約30万人。そのうち、学校内外で相談・指導などを受けていない児童生徒数が約11万4千人に上ることが分かった。
 いじめ重大事態の発生件数も923件となり、さらに、そのうちの約4割が事前にいじめとして認知されていなかったことも判明した。
 新型コロナウィルス感染症の影響が続き、感染を予防しながらの生活の中、不安や悩みが従来とは異なる形で現れたり、一人で抱え込んだ利した可能性を踏まえ、同省は「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を策定。
 子供たちが誰一人取り残されず、安心して学ぶことができる環境を整えるため、不登校児童生徒の学びの場の確保や心のSOSの早期発見など、各教育現場での取り組みを支援するための緊急対策を取りまとめた。
 具体的には、自分の学級に入りづらい不登校児童生徒に対して、学校内の落ち着いた空間で自分に合ったペースで学習・生活できる「校内教育支援センター」を設置することや、アプリなどによる「心の健康観察」を推進。
 また、いじめの重大事態化を防ぐため、一人一台端末を活用した相談窓口により子供の小さなSOSを早期に把握し対処することに加え、いじめの早期発見・自治体支援に向けたサポートチームの派遣などを速やかに進めていくことを掲げた。
 
●いじめ被害者に支援が届く学校システムの構築

 いじめは担任個人で解決するものではない。多くのいじめ事件が担任によって抱え込まれ、チーム対応が欠落していたために,機能的な解決ができなかったのである。
 私が原案を作成したいじめ防止対策推進法第23条第1項には、いじめの事実が疑われるときには、校内の委員会によって事実を把握し、いじめをやめさせ、支援しなければならない、と明記されている。
 いじめが起こったら、学校内の連携、チーム対応によっていじめを解決することが大切である。教師は学校や教育委員会のいじめ防止やいじめの早期発見の基本方針を確認し、いじめの相談を受けたり、いじめを発見したら、誰にどのように連絡するのかについてしっかり認識しておく必要がある。
 スクールカウンセラーについても同様である。いじめの被害者は相談しにくい。いじめの被害そのものが、被害者の自尊評価を低下させ、無力感、孤立感に陥らせ、自分自身を「透明化」してしまう。
 いじめの被害者は、構造上、相談できないのである。いじめ被害者のありようをスクールカウンセラーが学校の状況に即して、日常的に発信することが重要である。チーム対応によって、いじめを発見しやすい、いじめの被害者に支援が届く学校システムを構築することが大切である。
 大阪教育大学の水野治久教授によれば、保護者の援助要請の難しさには、子育て問題の捉え方、運所要請の様々な特徴、子供の発達段階などがある。また、夫婦間の養育態度の不一致が援助要請の抑制要因になるという指摘もある。保護者の援助要請には様々なタイプがあり、そもそも人に相談しないタイプの人もいる。
 援助要請が難しい保護者について、無理に學校に相談することを勧めるより、保護者が相談できる場所があればそれを勧める方が現実的である。勤務している市区町村や関わっている学校の周囲にどのような相談窓口があるか、インターネットで調べてみるとよい。教育センターなどの他に役所にも相談できる窓口を開設しているところがある。

●援助に抵抗のある子供・保護者への対応のポイント

 教員への相談、援助、スクールカウンセラーのカウンセリングに抵抗のある子供や保護者は少なくない。「共感的理解」は自分ができていないところ、うまく行っていないところの気持ちを汲み取ることになるので、自分の弱みを他人に開示することに抵抗のある人に対して、共感をベースとする面接は難しい。
 教員やカウンセラーが提供する援助サービスは、サービスを受ける子供や保護者が抵抗のない方法で受け散ればよい。子供や保護者の抵抗感に応じた援助を提供するために、以下の4点が重要であると水野教授は指摘する。

⑴ 児童生徒がスクールカウンセラーとの相談に抵抗のある場合は、教員に仲介をしてもらう。同席してもらってもよい。同席も抵抗がある場合は、廊下での立ち話の提案をする。
⑵ 教員の提供する学習支援場面に同席をお願いしてみる。スクールカウンセラーが学習面の支援をしてみる。教育心理学の知識は、学習支援に役立つ。
⑶ 教員が行う家庭訪問にスクールカウンセラーとして同行し、保護者と会う。
⑷ 児童生徒・保護者が情報提供を求めていたら、その情報を積極的に提供する。子供の支援窓口の情報提供、ストレス対処法の心理教育を行う。えんじょ
 


  


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