『ハケンアニメ』最高!

 主演は吉岡里帆さん。女優さんってなんとなく『ガラスの仮面』に登場する月影千草みたいな普段は無表情で演技に関してはもの凄く厳しくて、ダメ出しをする時は何かを投げたりする印象があるのだが、吉岡さんは穏やかな女性という噂。
CMとかでもほわっとした演技が多いという印象を受ける。でも今作で叫ぶシーンが印象的。斉藤瞳監督はいろいろなところで、王子監督と比較されてしまう。

王子監督と斉藤監督

 ふたりの関係性は対称的だ。
 王子監督はアニメ界のカリスマみたいな存在だ。だが本人はその事をプレッシャーに思っていて、旅行に行っていたとか嘘をついてまで公の場から逃れようとしていた。
 斉藤監督はアニメ界に入ってから7年も経つのに、いまだに新人と呼ばれて、マネージャー的存在の行城に指示されて喧嘩みたいな空気を生み出す。しかしながら監督を任されて新作帯アニメ『サウンドバック奏の石』の制作に挑む。
 サバクと略して表現されるアニメと、王子監督の『運命戦線リデルライト』は違うチャンネルで同時刻に放送される事から、日本のアニメの覇権をどっちが取るか、各方面から注目されるようになった。

辻村深月さん原作は読んだ⁉︎

 表紙のカバーイラストはあの『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』『ちょびっツ』『✖✖️✖️HOLIC』などを生み出したCLAMP。読書が苦手だとか、小説を読むことがしんどい、ましてや最後まで読むのは、飽きるし、内容が理解出来ない!
 そんな方こそ何年かかっても読んでいただきたい。アニメ業界の裏側を描いているのだが、この映画では、絵コンテから原画からキャラクター設定まで、詳細に準備されていて、それだけでもため息が出る。
 小説が発表された時期よりも格段にテクノロジーが発達して、実際放送したであろうアニメ作品は、まさに芸術!そして『サウンドバック奏の石』と『運命戦線リデルライト』とは、ストーリー展開も違っていて、サバクは最期に希望を取り戻す作品であり、リデルライトは、不確かなものから希望を見出す作品で、それに伴う色彩も、サバクは背景にも幻想的な追憶が感じられるし、リデルライトの色彩は、前衛芸術のような少し派手ではあるものの、目の前にある壁を壊すかの様な力強さにも受け取れる。
 あと注目すべき点は声優という、日本にしかない職人の存在。特に『サウンドバック奏の石』のトワコの声のイメージに斉藤監督は初め納得がいかなかった。周りのスタッフからも「アイドルだからちやほやされたいだけなんじゃないの!?」と囁かれる。斉藤監督自身も、別の声優にすれば良かったのだろうか、と悩む描写のあたり、辻村さんの取材の賜物と考えた。
 そして神作画をつくりだすカリスマアニメーターの存在、並澤和奈。原作にも並澤の作画というだけで価値があるという描写がある。確かにアニメは何人ものアニメーターの努力の結晶である。
 実写の配役も見事だった。それぞれの登場人物も丁寧に描いている。

あらゆる設定を本当に丁寧に描いていて、そんな描写も悪くない、と思わせる映画。わたし的には拍手喝采できる映画だ。

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