「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術


 稲村悠著「元公安捜査官が教える『本音』『嘘』『秘密』を引き出す技術」を読みました。著者はタイトル通り元警視庁公安捜査官で、大手金融機関勤務を経て現在は安全保障・地政学リスクに主眼を置いたコンサルティングを行っている方です。「公安」という言葉に惹かれて手に取りました。

 「公安」に惹かれた割には、そもそも「公安」についての自分の知識が曖昧でした。「相棒」とかに登場する「公安」は、なんて言うか秘密裏に行動している警察の別動隊みたいな感じですが、免許証などを管轄しているのも公安委員会なんて言いますが、同じものではないでしょう。冒頭、それについて解説がありましたが、著者が所属していたのは「警視庁公安部」で、暴力主義的な破壊活動や国益を侵害するような行為、あるいはそれをくわだてる可能性のある団体や敵対国の諜報活動に関する情報収集や取り締まりを行う部署だそうです。そういえば、公安の調査対象になっている政党があったなぁとつけ加えおきます。警視庁には「公安部」がありますが、それ以外の道府県の警察では「公安」は「警備部」に属しているということでした。それ以外に国家公安委員会とその下に各都道府県の公安委員会、そして法務省の外局という位置づけで公安調査庁というものがあるそうです。公安委員会は風俗営業の許可や免許証関連、警察に対する苦情の受付などを管轄しており、公安調査庁は暴力で政治的な目的を遂げようとする団体から国の安全を守るための調査を行っている機関だということでした。

 情報収集の手法としてオシント、ヒューミント、シギントという3つが挙げれラれていましたが、どれも聞き慣れない言葉です。オシントは「OSINT=open-source intelligence」で公に知られている情報を分析すること、ヒューミントは「HUMINT=uman intelligence」で情報源となる人物に接近して秘匿情報を聞き出すこと、シギントは「SIGINT=signals intelligence」で、通信や電気信号を傍受することとありました。

 ここからヒューミントを中心に、対象者から情報を引き出すテクニックを解説してくれますが、相手の懐に飛び込んで、信頼関係を築くことで情報が得られるとのことでした。しかしながら、そうしたことを「テクニック」としてとらえてしまうと、いやらしいというかなんというか、ちょっと共感しづらいところです。

 面白かったのですが、個人的にはヒューミントよりもオシントにもっと言及してほしいと思いました。あ、あと「相棒」のように捜査一課と公安は仲が悪いわけではないようです。

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