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牡馬相手に1800mの重賞を勝ったという事実が意味すること

現3歳馬世代が誕生した2012年における、サラブレッドの生産頭数は6828頭。そのうち牝馬と牡馬の割合はおよそ半々になるため、それぞれ3000頭前後の牝馬と牡馬が、どこかの競馬場でデビューし、相まみえて競走を行ってきたことになる。サラブレッドの競走は、人間のそれと違い、基本的には女馬と男馬が一緒になって走る。たとえばヴィクトリアマイルやクイーンSなどの牝馬限定のレースもあるにはあるが、JRAの競走でいうと全体の約15%弱程度であって、ほとんどのレースにおいては、新馬戦から有馬記念に至るまで、牝馬と牡馬が鎬を削って競走するのである。

最近ではジェンティルドンナやブエナビスタ、ウオッカ、ダイワスカーレットといった女傑であり名牝が続々と誕生したが、彼女たちは稀有なサラブレッドであり、同条件の下で走るとすれば、総体的には牝馬より牡馬の方が強い。それは性差による肉体的な発達、ときには精神的な性質の違いが理由となる。牡馬の方が骨格は大きく、飼葉も良く食べることが多いため、調教で負荷が掛けやすく、その分、筋肉がつき、馬体も大きく成長し、スピードやスタミナ、パワーに変換されやすい。そういった性差を考慮し、競走における均衡を図るため、負担重量に差をつけるセックスアローワンスがある。

日本の競馬では、牝馬と牡馬との間には2kg、つまり牝馬は牡馬よりも2kg軽い負担重量が課せられることになっている。ただし、2歳の9月までは牝馬も牡馬も同じ、10月から12月までは1kg差と、年齢や時期によって負担重量が微調整されているのも興味深い。年齢が低いうちは、牝馬と牡馬の成長の度合いにおける違いが、それほど顕著ではないということだ。たとえば人間でも、小学校ぐらいまでは女の子の成長の方が早いが、中学の高学年あたりから女の子は女らしく、男の子は男らしい肉体や精神に大きく変化を遂げるのと似ている。どこかで女と男がはっきりと分かれてしまう時点があるということだ。

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