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熱く語らせて! 2018年の心揺さぶる音楽映画

是枝裕和監督の「万引き家族」のカンヌ国際映画祭 最高賞・パルムドール受賞や、社会現象にもなった「カメラを止めるな!」など、話題に事欠かなかった2018年の映画界。

一年を通して常に魅力的な作品が上映されていたという印象がある昨年は、「今週はどこの映画館で何を観ようか?」と、ずっとスケジュール帳とにらめっこしていた気がします。

そんな中で注目したのが「2018年の音楽映画」。これは良かったなぁ! という作品を振り返ると、「音楽映画」が多いことに気付きました。

「音楽映画」と聞くとそのほとんどが、取り上げている音楽のジャンルやミュージシャンの「ファンの為の映画」と捉えている人が多いと思いますし、実際に私もそういうイメージをもっていました。

だからこそ! 今回ご紹介する3作品は、そのフィルターを一切排除して観ていただきたいのです。映画という「エンターテインメント」として申し分なく、また、映画に出てくる音楽やミュージシャンの事をよく知らなくても、それを新しい発見としても楽しめる懐の深い3作品を厳選しました。


目次:
1. やっぱり外せない!! Queenの「ボヘミアン・ラプソディ」

2. ドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』で、東京が作り上げたカルチャーの奥深さを知る

3. キューバ音楽に全身全霊を捧げた喜びと勇姿に胸を打たれ涙…。ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』

1. やっぱり外せない!! Queenの「ボヘミアン・ラプソディ」

公開前から話題沸騰、11/9公開後大ヒットとなり、テレビやラジオ、街中…そこら中でQueenの曲が流れていましたね! Queenの事は知っている曲が数曲あるぐらいだった筆者ですが、あまりにも周囲の人々の評価が高かったので、公開後すぐに観に行き大正解。

「ボヘミアン・ラプソディ」は、シンプルに言ってしまえばQueenがスターダムに駆け上がるまでのサクセス・ストーリーです。
しかしその裏側には、私たちも自分ごととして捉えることができるヒューマンドラマが詰まっていました。

レコード会社の社長に「Queenと他のバンドとの違いはなんだ?」という問いに対するフレディの答えには…グッときました。

また、挫折しそうな時や崩壊寸前だった時に、必ず誰かに救われていたという事。フレディにとってはとてもショックだった、恋人であり生涯親友だったメアリーからの告白に、フレディーがふりしぼってメアリーにかけた言葉。ライヴ・エイドの出演が史上最強の親孝行になった事。

曲が素晴らしい、ライブパフォーマンスが圧倒的、Queenの魅力はたくさんありますが、世界的規模でここまで多くの人たちの心を動かすのは理由があるのだと、映画を観て感じる事ができました。

クライマックスシーンである最後の20世紀最大の音楽チャリティイベント“ライヴ・エイド”のステージは、まるで自分もその場に入り込んでしまったような迫力。
見た後には爽快な達成感を得られます! 周りで泣いている人もチラホラいました。(これから観る人はライヴ・エイドの映像⬇︎で予習をしておくことをオススメします。)

余談ですが、フレディは大の愛猫家。劇中では猫を6匹飼っているのですが、ライヴ・エイドでのフレディの雄姿を自宅のテレビをで猫たちが見守っている場面にはほっこり…。
(猫達にも見てもらえるようにと、フレディがテレビをつけおいたんだろう…と勝手に思っています。)

上映終了後、Queenファンの人たちが夢中で当時の記憶と映画の場面と答え合せをしている姿がとても楽しそうでした!

2. ドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』で、東京が作り上げたカルチャーの奥深さを知る

かつてスピッツ・エレファントカシマシ・氣志團などもステージに立ち、The White Stripesの初来日のステージもここだったという東京の老舗ライブハウス「新宿JAM」が2017年12月に閉店。
2016年に結成30周年を迎えた日本を代表するロックバンド「THE COLLECTORS」もかつて新宿JAMを通過したバンドの一つ。

新宿JAMはかつて「モッズカルチャー」の礎を築いた文化があり、THE COLLECTORSもこの地からロックやモッズファッションを発信し、今もそのスタイルを追求し続けています。

「モッズ」とはロンドン近辺で1950年代後半から1960年代中頃にかけて流行した音楽やファッションをベースとしたライフスタイル。そのアイコンとして代表的な「モッズコート」やスクーターの「Vespa」は聞いた事があるという人は多いと思います。

新宿JAMの閉店をきっかけに30年という時間を巻き戻し、音楽・街・ファッションなど、THE COLLECTORSをつくっていったルーツを、音楽ファンから絶大な信頼を得る川口潤監督が丁寧にたどっていきます。

新宿JAMとは、当時をリアルタイムで体験した人たちにとってはどういう場所だったのか? リリー・フランキーさんや峯田和伸さんなどの豪華メンバーも証言者として登場し、当時を懐かしく振り返ります。

THE COLLECTORSのドキュメンタリーではありますが、バンドやモッズカルチャーに深く入り込んでいくのではなく、今まできっかけが無くて深く知らなかった事を、素直に教えてもらいながら紐解いていくという川口監督の目線が、観る側に新鮮さを感じさせ「知らなかった!」「そうなんだ!」と、どんどん夢中になって引き込まれていきます。

「モッズ」はファッションや音楽のスタイルであることはなんとなく知っていて「THE COLLECTORS」も昔から知っていたけど、数曲聞いたことがあるぐらい…という感じだったのですが、この映画を観て「THE COLLECTORS…曲が全部すごく良い!」(早速CD買いました)ということを知れたり、東京に自分が知らない「モッズカルチャー」という文化があって、その流れを汲んでいる文化が今も続いていて、その影響を受けたミュージシャンが今活躍しているんだなあ…と、「ちゃんと知ろうとしていなかった歴史が実は面白かった事をだいぶ大人になってから知った」みたいな気持ちになっていたら、あっという間に映画が終わっていました。

ずっと住んでいる東京にも、まだまだ知らない事が沢山あるんだなと、街に対して感じた気持ちがとても新鮮で嬉しかったです。

3. キューバ音楽に全身全霊を捧げた喜びと勇姿に胸を打たれ涙…。ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とはキューバに実在した会員制音楽クラブの名前。
アメリカのギタリスト、ライ・クーダーがキューバに旅行した時、地元のミュージシャン達が創り出す音楽に触れた事がきっかけとなり、50年代のキューバの大物ミュージシャンを集め復活させたビッグバンド(筆頭になったギタリストはなんと当時90代!)のバンドの名前でもあります。

彼らがつくった同タイトルのアルバムは当時グラミー賞を受賞し、ワールド・ミュージックとしては異例の世界的大ヒット。
その後、音楽とメンバーの人柄に惚れ込んだヴィム・ヴェンダース監督(代表作は「パリ、テキサス」など)がドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を制作。映画はアカデミー賞®︎長編ドキュメンタリー部門にノミネートされ、日本でも2000年に公開され大ヒットしました。

あれから18年経ち、現メンバーがステージでの活動に終止符を打つと決めて“アディオス”(さよなら)ツアーを決行することに。最後の彼らの勇姿を収めるべく、ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』が完成しました。

それぞれのメンバーのルーツに迫るなかで、音楽に失望し一旦音楽から身を引いたという事、いつになっても終わらない人種差別の壁、タバコ工場で働きながらなんとかハバナ行きの費用をつくった事など、今の栄光の「光」が強い分、色濃い「陰」の部分が浮き彫りになっていきます。

誰一人として順風満帆ではないし、豊かではなかったですが、いくつ歳をとろうとも冷める事がない音楽への情熱、音楽に一切妥協しない姿には胸を打たれます。

何十年も経って掴んだ栄光。「こんな歳になって、遅すぎるのでは?」という声に、ボーカルのイブライム(享年78歳)は言います。「ことわざにある。“喜び事に遅きは無し”」と。

この映画は、キューバ音楽を世界に届け、音楽に対してひたむきに情熱を注いだミュージシャン達の大切な記録です。彼らが残してくれた音楽に、エンドロールの最後の最後まで酔いしれてください。

<まとめ>
音楽って、親しい人に勧めてもらったりする以外には、あまり興味が無いものに足を踏み入れることってなかなか無いと思うんです。

思いがけず、自分が今まで知らなかった世界を知ってしかもそれがめちゃくちゃ良かった…なんか得した気分…いや、今まで知らなかったから損してたのかしら?という、なんとも説明しがたい嬉しい気分を、ぜひみなさんも味わってください!

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