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イノカの「環境移送技術」とは何か 〜サンゴベンチャーのその先へ〜

こんにちは。「環境移送ベンチャー」株式会社イノカ COOの竹内四季です。

自己紹介
竹内四季 / 株式会社イノカ 取締役COO
1994年生まれ。鹿児島県出身。ラ・サール中高、東京大学経済学部卒業。2020年1月にイノカにジョイン、同年11月 取締役就任。事業開発を管掌。
持続可能・スケール可能なソーシャルビジネスの開発、自然資本を内包する社会システムのアップデートが関心領域。好きな海洋生物はクモヒトデ。

早いもので、イノカは創業から丸3年が経過し、第4期目に突入しました。前年度はメディア等での露出の機会も増え、認知いただくことも増えてまいりました。

現在のイノカは、これまで力を注いできたサンゴという領域を超え、コアコンセプトである「環境移送」を再定義する重要な局面にあります。

今回から数回にわたり、弊社の技術コンセプトである環境移送技術に関する記事を執筆してまいります。

本記事シリーズ執筆の目的

執筆の意図としては「環境移送技術とはなにか」を改めて再考・解説することです。実はこれまで、オープンにアクセスできる情報としては、環境移送技術については限定的かつ概念的な説明しか公表していませんでした。

「環境移送技術」により水槽内に構築したサンゴ礁生態系

本記事シリーズでは、環境移送技術に関して、具体的な応用領域の事例などを挙げながら、体系的な解説を加えていく予定です。

今回、解説記事を執筆することにした理由としては、主に下記の3点です。
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① 2022年2月、環境移送技術を活用した「サンゴ人工産卵」成功を受け、技術的な独自性に確信が持てたこと。

応用可能性のある領域が複数挙がっており、何に役立つ技術なのかという認知を向上したいと考えたこと。

③ 実世界での環境課題に最前線で取り組まれている方々に、環境移送技術について知っていただくことにより、創発的に課題解決アイデアが生まれるようなありかたを模索したいと考えたこと。
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「サンゴベンチャー」としてのイノカ

これまでのイノカを知ってくださっている方々の多くは、弊社のことを「サンゴのベンチャー」と認知していただいていると思います。2022年2月には、創業当初より取り組んでいたサンゴの人工産卵実験にも成功し、世界初となる成果を残すことができました。

サンゴの人工産卵に成功(2022年2月、イノカ虎ノ門ラボにて撮影)

気候変動により、20年後には世界全体での大規模な消失が問題となっているサンゴ、またサンゴ礁生態系がもたらす経済圏や生態系サービスを持続可能にするべく、国内外の研究機関や行政との連携をさらに強めながら、サンゴ研究の最前線で貢献できるよう、引き続き技術を磨いていく所存です。

「環境移送ソリューション」への昇華を図る

一方で現在、我々は設立当初から掲げている「環境移送」を改めてコアバリューとして位置付け、世界で起きている課題を環境移送によって解決する「環境移送ソリューション」の切り口を模索しています。

環境移送」、それは自然環境を閉鎖空間内に高度に再現(=”移送”)し、複雑な環境パラメータを制御・モニタリングすることによって、空間軸・時間軸ごと”環境をモデル化”するという技術コンセプトです。

サンゴは応用領域のひとつである

これまで我々が積極的に取り組み、発信してきた「サンゴ」について、我々はあくまで、環境移送ソリューションの応用領域のひとつと捉えています。

従来、人工環境下での飼育が非常に困難とされてきたサンゴを、自然環境に依存しない形、すなわち実際の海水を使うことなく、生態系ごと再現することに成功したことは、サンゴ研究を飛躍的に進めることができる可能性を示唆しました。

そして何より、”完全人工環境下”(=空間軸)かつ ”任意のタイミング”(=時間軸)で、サンゴを産卵させるという発展的な段階まで到達したことは、イノカの「環境移送」の精度を示す証左と言えるでしょう。

環境移送技術の独自性

複雑な環境パラメータを閉鎖空間内で制御・再現することの本質的な価値とは、実際の自然環境ではデータ取得が困難な研究を、「ラボ環境において」「実験サイクルを高速回転する」ことができる点と考えています。

つまり、環境移送技術が強みを発揮するのは下記のようなケースです。
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・自然環境ではセンサーによるデータ取得が難しい、または有用なデータが取りにくい場合(ex. 海洋環境データ:天候等の影響が大きく、扱いやすいデータが取りにくい)

高度な環境パラメータの調整が必要になる場合(ex. 特定生物の生育条件の発見:最適な環境条件を高速で検証することができる)

・海洋に対する影響度調査において、規制等によりフィールドでのアクションがしにくい場合、またフィールドでの実証の前にある程度の検証が必要と考えられる場合(ex . 特定物質の影響度評価など:実際の海での検証はハードルが高い。ラボ環境では高速検証が可能)
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参考:環境移送技術を活用したサンゴの対照実験システム

本記事シリーズの予告

ここから数回にわたり、現時点で事業化・プロジェクト化に至っている領域や、今後の展開を検討している領域を紹介してまいります。

テーマ一覧

  • 海洋生体への影響度評価

  • 環境教育

  • オフィスブルー

  • ブルーカーボン生態系

  • 遺伝資源の保全

  • 陸上養殖の研究開発

  • 特定の水環境の研究プラットフォーム化 ほか

ご質問、協業可能性について意見交換したいというご要望などございましたら、イノカ竹内(s.takeuchi@innoqua.jp)宛に気軽にご連絡いただけますと幸いです。

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