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自宅ピンチョスはビルバオを超えるか?んなワケないか。

自宅でバゲット作成に初挑戦。中の気泡が大分少ないバゲットになりましたが、それなりに食べられるレベル。自家製のホンモスと鶏レバーペーストも作ったので、これらと色んな素材を組み合わせてピンチョスにしたらどうかって話になりまして。どんなピンチョスにしたかは文末で。

ってわけで、今日はピンチョスの思い出話です。

2009年4月13日、南米アルゼンチンから空路でバルセロナに入り、4月20日から新車をリースしてキャンプ生活をした時の事です。


〇新車がリースできる「オープン・ヨーロッパ」とは?

当時、フランス自動車メーカーのプジョー、ルノー、シトロエンはEU圏外のユーザーを増やす事を目的に、「オープン・ヨーロッパ」というプロモーションを始めていました。EU圏外在住のEU外国籍の人に向けて、EU圏内で新車を無税でリースするという内容です。2008年夏に利用して、あまりにも快適で面白かったので2009年にもやってみる事にしたのでした。

我々が2009年にリースしたのはプジョーのパートナーという車種で、荷物がたくさん詰めるタイプ。1日22ユーロ程度でした。フランス国内でリースして返却すると追加費用はかからないのですが、この時はバルセロナでリース・返却するので140ユーロ追加費用がかかりました。

因みに2008年はスペインのバルセロナでリースして返却はミュンヘン。1日32ユーロ支払ったのは、情報を知ったのが遅くてリース手続きが出発の直前だったのが原因でしたね。早いうちに日本のサイトから手配したら安くなる事を知って2009年は安くなりました。

「当時」と書いてたのですが、調べてみたら2024年2月現在、今も「オープン・ヨーロッパ」はやっているみたいです。円安なので旨味が少ないかもしれませんが、キャンプで宿泊コストが抑えられるし、車に傷がついても追加費用なし。例えば、フランスナンバーでイタリアに入ってイタリア人に傷つけられた車体の傷も、イタリア人にパンクさせられて予備タイヤを使ってしまったのも全て費用にインクルーシブでした。

今からリースする人、どこまで費用でカバーしてくれるか要確認かもしれませんが、プロモーションなのでいい印象を持ってもらいたいというフランス自動車メーカーの意気込みは、当時はバリバリにありました。

〇「タパス」VS「ピンチョス」

さて2009年4月20日にバルセロナを出た夫と私の旅は、6月26日までの約2か月半で、バルセロナから時計回りにスペインとポルトガルを巡ってバルセロナに戻るというものでした。

スペイン・ポルトガルは観光として魅力的な国でした。突飛な絵画や建築の芸術家が多く、フラメンコを始めとする舞踊や音楽も幅広く、そして何よりもご飯が口に合う。その上で「タパス」と「ピンチョス」があるんですよ。素晴らしい。

ヨーロッパやアメリカを旅していて時々思う事。それは「色んな物を食べたいのに、一食の量が多すぎて食べきれない」問題。特にアメリカとドイツは、例えば白アスパラガスを注文すると15本くらいがピラミッド状になって出てくる。いやいやいや、何なら1本でいいんですけどって話です。

それに対してスペイン南部、アンダルシア地方のタパスは直径15cmくらいの小皿におつまみ的な気の利いた美味しい物が出てきて価格も安い。2-3皿注文してグラスワインを飲んで次の店に行ける気軽さが、日本の居酒屋をハシゴする楽しさに似て、思わずぐっとくる文化でした。そしてスペイン北東部のバスク地方に行くとピンチョス。小さなパンの切れ端の上に美味しい料理がおつまみ程度に乗っていて串刺しになっている。こちらもハシゴできるサイズです。

タパスとピンチョスの違いは?と聞かれるなら、私としては「ビジュアル」だと答えるでしょう。

アンダルシアの土着の素朴なビジュアルのタパスに比べて、ピンチョスはそれはもう「あたしはイケてる」というマウント合戦のお店がそこここにあって、見た目がより楽しいって事になっていました。

なぜバスクのピンチョスがビジュアルに賭けているのか?私なりの分析ではバスクにサン・セバスティアンがあるからだと思っています。

我々が訪れたのはバスクのビルバオという街ですが、お隣のサン・セバスティアンは美食の街として世界的に有名な街。スペインのカタルーニャ地方で分子料理で有名なレストラン「エル・ブジ」を開いていたシェフ、フェラン・アドリア氏をして「食事の平均的な質やレストランの質という観点では、サン・セバスティアンが世界でもっとも優れた町かもしれない」と言わしめた街だそうです。

我々が訪れた当時もスペイン国内で一番ミシュランの三ツ星レストランの数が多い街でしたが、2023年7月時点でも、スペイン国内でミシュランの3つ星レストランが11、うち3つがサン・セバスティアンにあるということで、いまだにブッチギリで美食を貫いているようです。

こんな街がお隣にあるのですから、影響を受けないわけにはいかないでしょうね。

〇ビルバオでの観光

我々はビルバオから15km離れたキャンプ場を拠点に、ビルバオを訪ねたりキャンプ場近所のビーチで寛いだりして、計5泊をここで過ごしました。

キャンプ場でテント生活
キャンプ場から徒歩で行けるビーチ

ビルバオの観光の目玉はグッゲンハイム美術館、あのNYのグッゲンハイム美術館の姉妹館です。時間的にバスクは1都市だけと思っていたのですが、サン・セバスティアンではなくビルバオを選んだのは、この美術館があるためでした。建築はフランク・ゲーリー。世界一周の旅の始めの年、2005年に訪れたロサンジェルスのダウンタウンでギラギラと輝くフランク・ゲーリー建築の「ウォルト・ディズニー コンサートホール」を見た時は、その奇抜な建築デザインのインパクトに驚いたものです。

その衝撃を思い出す、やはりギンギラギンの建物を再び見たい!という思い出ビルバオを訪れて、変わらぬインパクトを楽しみました。

ビルバオ グッゲンハイム美術館
ビルバオ グッゲンハイム美術館

また、この時の美術館の特別展「ムラカミ・タカシ」での体験が面白かったんです。学芸員さんがガイドしてくれるグループツアーに参加したのですが、ムラカミ・タカシの作品についての解説が一般的な日本人の我々からすると非常に奇妙でした。

例えば「タイムボカンシリーズ」というタイトルの作品。我々からみると、あのアニメの「タイムボカン」の最後に上がるキノコ雲を描いた作品なのですが、学芸員の説明は「人類で唯一被爆した日本では、こうした悲惨な体験をアニメの世界でコミカルに描くことで、その苦しみを乗り越えて来たという意味で、非常に社会的意義のある作品です」という説明。子供の頃、あのアニメを見てそんな事を思った子がいただろうか?

他にも水木しげるの妖怪風な作品やゲームに出てくる少女の実物大のフィギュア作品など、私から見ると子供の頃から慣れ親しんだ世界について、ツアーに参加している諸外国のアート通の方々が「おお、ZENカルチャーですね」とか「ピュアな精神性なんですね」などとしたり顔で日本人の私に相槌を求めてくる。彼らが思うような高い芸術性や精神性と作品から私が受ける印象が非常に乖離していて妙な気分でした。

まぁ、そんな体験の後、いよいよピンチョス巡り。

最初はよくわからなくて老舗のカフェを訪ねたのですが、ピンチョスのお店が集まっているのは旧市街にあるPlaza Nuevoの周囲だとわかって行くと、広場を取り囲む回廊沿いにわんさかとピンチョス屋。そこで引き続き3軒をハシゴ。1日の午後だけで計4軒をハシゴしました。

4軒で食べたピンチョスは8種類、ビールは1回だけ、あとはワインを頂きました。どれも1つEUR1.5からEUR2という気軽な値段なのでどんどんいけちゃいました。

当時訪れたお店は2024年2月現在も健在のようでしたので、トリップアドバイザーの情報をリンクしました。最新の情報についてはそちらをご参照ください。ピンチョスのスタイリッシュな写真を見ているだけでも楽しくなってきます。

〇1軒目 Cafe Iruna

最初に訪れたのは1903年から営業している老舗カフェ。ここではクリケットの下に生ハムをひいたピンチョスと生ハム・チーズ・マヨネーズミックスのようなピンチョスの2種。午後2時の店内はそりゃぁ混んでいて常連客でにぎわっていました。シードルとピンチョスという組み合わせの人が多かったです。

〇2軒目 Gure Toki (Plaza Nuevo付近)

干しダラのスライスを使ったものが面白そうなので2種頂きました。パン、赤ピーマン、干しダラ、マヨネーズ、パセリ。ハムマヨネーズの上に干しダラ、マヨネーズ、赤い粒の魚卵、パセリ。干しダラは優しい味で他の具との相性も良く見た目が握り寿司みたいでしたね。

https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g187454-d1901056-Reviews-Gure_Toki-Bilbao_Province_of_Vizcaya_Basque_Country.html

〇3軒目 Bar Urdina (Plaza Nuevo付近)

ここではバスク地方名物の干しダラのグリーンソースがあったので試してみました。グリーンはオリーブオイルの色だそうで、作るのは大変そうですが、その割に味にパンチがなく残念。1つ干しダラの赤いソースもあったので、こちらもついでに試したのですが、こちらも今一つ。お値段は一つ1.5ユーロとかなりお安めなんですが、お味がね。このお店ではタラよりも、ブルーチーズとクルミが魅力的でした。

〇4軒目 SORGINZULO (Plaza Nuevo付近)

お値段が2つでEUR5.6と、これまでのお店と比べると高めなんですが、どのピンチョスもよく考えてスタイリッシュにデザインされているお店でした。中でも凝ったデザインの2種は薄いクレープにチキンと玉葱とパプリカを炒めた物を巻いて焼き目をつけた春巻き風。パリッとした皮の香ばしさが美味しかったです。もう1つは茶色のパンの上に血のソーセージと米の団子の中にクリームチーズを入れた天ぷら、生ハム、赤と緑のパプリカ天ぷら。デザインが秀逸。

https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g187454-d2366288-Reviews-Sorginzulo-Bilbao_Province_of_Vizcaya_Basque_Country.html

そうそう、渋谷の宮下公園後にできた商業施設「MIYASHITA PARK」の中に、サン・セバスティアンのピンチョス有名店「グラン・ソル」の支店があります。一度行ってみましたが、気合の入ったビジュアルのピンチョスでバスクの息吹を感じる事ができるお店でした。

最後に自家製ピンチョス、こんな風に楽しみました。


★ 『自家製ピンチョス』
<材料>

  • バゲット 1本

  • ホンモス 適宜

  • 鶏レバーペースト 適宜

  • タコ、ハム、ミニトマト、シイタケのバター焼き、ブロッコリー、オリーブ、しらす、ブルーチーズ


<作り方>

  1. バゲットをスライス(大きい場合は半分に切る)

  2. ホンモスあるいは鶏レバーペーストを塗る

  3. 適当に具材を乗せて頂く

鶏レバーペーストとホンモスのあいがけにハラペーニョ、赤いパプリカパウダー
ブルーチーズとタコも以外に相性がいい
ホンモス、椎茸バター焼き、トマト、しらす、ブロッコリー
ホンモス、ハム、しらす、トマト、オリーブ
鶏レバーペーストにハラペーニョ。おススメです。

ホンモスは優しい味わいなので、ほぼ何を乗せても大丈夫でした。鶏レバーペーストはインパクトが強いので酸味や辛味が強い物と合わせると面白いと思いました。皆さんもお好きな具で自分のピンチョス世界を探してみてくださいね!


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