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空きビルなし!! 「都心空室率1.82%」の理由

今朝のBSテレビ東京 日経モーニングプラス「値段の方程式」のコーナーで「オフィスビル賃料」を取り上げました。マンション価格や家賃に比べオフィスビルの賃料というのはあまりピンとこないかもしれませんが、企業業績を鮮明に反映する景気指標のひとつです。

オフィスビルの賃料を見る際には指標として「空室率」という数字が注目されます。オフィスの需要が高ければ「空室率」が下がる、つまり空きが減って賃貸料は上がる。一方、「空室率」があがると、賃貸料は下がるという構図です。

本日の日経朝刊に最新の市場動向の記事が掲載されています。

記事によると

都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の1月の平均募集賃料は、3.3平方メートル当たり2万1010円だった。前月比で0.6%(123円)上がった。堅調なオフィス需要を背景に、ビル所有者が募集賃料を引き上げている。

賃料の上昇が61カ月連続とはただごとではありませんね。いったい、オフィスビル市場になにが起きているのでしょう。

①防災対策
東日本大震災を機にBCP(事業継続計画)といって、災害が起きても企業の損害を最小限に抑えて、できるだけ早く復旧するかという防災計画を立てるようになりました。企業に「多少賃料が高くても、防災対策がしっかりしたビルに入りたい」という需要が高まりました。企業にとっては「社員にこのビルは安全に働ける」と言えることは人を集めるときにも「売り」になります。取引先に対する信用も向上します。
番組では安全に関する最新事情を映像で紹介しました。

最近のビルは「より安全に」を徹底
〇停電しないビル
災害でビルに電力が供給されなくなっても、一定の時間、通常通り電気を使える。
〇振動に強いビル。
国が定める耐震基準よりも、もっと優れた構造を採用している
〇エレベーターが自動復旧するビル

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取材で訪れたビルは地震に耐えられる強力な足場をつくった「制震構造」になっていますが、それに加えて、「中間免震」というものが備わっていました。ビルの中ほどに横揺れを軽減させる免振層がある。高いビルは上層階ほど揺れが大きくなるのではという心配があるんですが、この「中間免震」構造によって、それが軽減されます。

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エレベーターは大きな揺れを感知すると、たとえ故障していなくても止まるようになっています。止まってしまったらエレベーター業者が来て、人が点検をして安全確保ができて初めて動くようになっていました。ただ、大きな災害の際は対応すべき建物が多く、なかなか業者の手が回りません。長時間動かないケースも多いです。そこで最新のビルはエレベーターが自動で点検して、人が来なくても復旧できるようになっています。

②人手不足
人手不足や採用を意識した「働きやすいオフィス」づくりが進んでいます。不動産業界で「サードプレイス」と呼ばれる社員の交流スペースを充実させる動きが広がっています。
番組では住友不動産の麻布十番ビル内に入居する「サマンサタバサ」本社を紹介しました。バッグを中心に展開するファッションブランドだけにおしゃれなオフィスです。デスクのあるエリア以外に、カフェスペースやお寿司が食べられるカウンター、さらに東京タワーを目の前にお酒が飲めるバーカウンターまで。これが全部、オフィスの一部なんです。本当にうらやましいです。働きやすいオフィスは社員にも好評です。こうしたスペースを増やしていくと当然、当然社員一人当たりの床面積は広くなります。必要なオフィス面積が増えるため、空室率低下につながり賃料は高くなるという流れが続いています。
住友不動産は「最近は企業がオフィスを『安く抑えるべき固定費の一部』という考え方から、『業績を上げるための投資』として考えるようになっている」と話していました。

きょうの値段の方程式はこうなります。
【オフィスビルの賃料=立地・規模+災害対策・サードプレイスの充実度】

番組の最後のほうでキャスターの豊嶋広・BSテレビ東京解説委員から「中長期的には在宅勤務やサテライトオフィスの広がりが、オフィスビルの需要を冷やすのでは」と質問を受けました。
私は「サテライトオフィス用のスペースも拡大しており、オフィスビル需要を押し上げています。さらに都心に本社を構えるのは新卒採用の際に大きなアピールポイントになります。都心に限っていえばまだまだオフィスビルの需要は根強いといえそうです」と話しました。現状をみても、グーグル日本法人は渋谷へ戻ってきますし、ヤフーは千代田区紀尾井町、メルカリは六本木に本社を構えます。働き方改革で先行しているIT企業も利便性や企業イメージの点でやはり都心を好む傾向です。

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2019~23年の5年間で東京都区部に完成する主なオフィスビルは東京ドーム68個分に相当するおよそ80棟ともいわれています。ほとんどの場合、元あるビルを壊して建て替えるので、単純に増えるわけではありません。仲介会社の三鬼商事によると1月の空室率は1.82%。ほぼ空きがない状態です。景気に大きく左右されるオフィスビル市況ですが、当面は堅調そうです。

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