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本マグロ アジア需要鈍化で値下がり

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。きょうのテーマは「輸入 本マグロ アジア需要鈍化で値下がり」です。 本マグロの正式名称は「クロマグロ」。マグロの中でも最高級品とされています。 大型で脂のりがよい大トロが取れることで有名ですね 。そんな本マグロが今、お買い得なんです。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

地中海産が豊漁

水産庁によると本マグロの輸入量は3万1000トン、国内は生産量は3万3000トンです。日本で出回る本マグロの半分が輸入ものです。 主な産地は地中海沿岸のマルタやモロッコ・スペイン、トルコ 。近年、地中海産は豊漁と言われており、 これエリアからの輸入が増えています。

こちらは東京都中央卸売市場の本マグロ(輸入)の価格。2022年12月には1キロ4200円を超える高値をつけていました。23年12月には3220円と1000円近く下落し、約2割安い水準にあるんです。今年に入っても3000円台前半の取引が続いています。足元で円安が進行しているのを考えると、見た目以上に下がっている印象です。

武蔵小山商店街にある「魚河岸 中興商店」は豊洲市場などから仕入れた新鮮な魚介類を扱う専門店です。マグロの売り場で目についたのが「輸入本マグロ、相場下落中!」のポップです。

店頭価格は4割安

赤身は100グラム880円、中トロは980円で販売しています。1年前はそれぞれ1380円、1580円だったそうで4割も安く売られていました。安くなって売れ行きは好調です。「 出る量としては倍以上で売れています」(売り場の担当者)。マグロを買いに来たお客さんも「 マグロは安いと思う。 今までは高級品ってイメージだったが、買いやすくなった。 手が届きやすくなったので助かっています」と話していました。試食もさせてもらいました。しっとりとした食感、口の中で甘さとマグロの風味が広がり、おいしかったです。

食料品の値上がりが続く中、消費者にとっては朗報ですね。 マグロはどうして今、値下がりしているのでしょうか。要因の1つはアジア需要の鈍化です。 以前は地中海のマグロを日本と韓国が競り合ってきました。韓国は日本食ブーム。和食店や寿司店が数多くオープンし、マグロの消費量が増えたためです。 さらに韓国は地中海諸国と貿易協定のない中国のマグロ調達も担ってきたとされ、マグロを爆買い。 価格はどんどん上がり、日本は買い負けしていた時もありました。

韓国の景気低迷でその状況が一変しました。 韓国では2021年から中央銀行が政策金利を段階的に引き上げた影響や、不動産価格の高騰に伴い家計負担が増しました。マグロも値上がりし消費者が値段についていけなくなり需要が低迷。韓国勢のマグロの買いが減り、相場が下がりました。ダブついた韓国内の在庫が日本に流れています。日本でもコロナ禍が明け、外食にお客さんが戻りました。急激にマグロの需要が高まり価格も高騰したため、徐々に消費者が離れてしまいました。業者が在庫を抱えてしまい、在庫過多になり価格が安くなったという状況です。

ここで、きょうの値段の方程式です。

本マグロ(輸入)の値下がり=韓国の景気悪化+在庫過多

「お買い得」いつまで

マグロの「お買い得な時期」はいつまで続くんでしょうか。業者の在庫が持つのはもって数カ月という見通しです。過剰な在庫が解消されれば再び値上がりに転じる可能性があります。加えて韓国の景気が回復してくれば需給が引き締まってきそうです。

さらに注目したいのが中国の動きです。これまで中国は地中海諸国と貿易協定を結んでおらず、日本や韓国からマグロを買っていました。原発の処理水放出を受けて日本からの水産物を全面的に禁輸にしました。それを受けて中国は昨年12月、マグロの主要産地であるマルタと中国と輸出に関する覚書を取結びました。 日本や韓国から買い付けるのではなくて、中国が自ら地中海産を直接買い付ける可能性が高くなる可能性もあるとみています。 今後、国際的な需給を巡る動きと、 相場の変動に注目していきたいです。


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