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企業の「値上げ力」が問われる時代へ

企業業績から見えた異変

今月の企業決算シーズンを見ていてある変化に気づきました。
それは物流を展開する企業の決算資料に書かれていたコメントです

セイノーの決算説明資料
ヤマトグループ決算説明資料

どちらも共通して言っているのは、物価高により想定以上に消費者の購入が減っているということです。
さらにセイノーの資料では物価高が原因で家計消費支出が弱まっていることがグラフ付きで紹介されています

昨年来の円安や原油などのコスト増によって多くの企業が過去にない大幅な値上げをおこなってきました。デフレが30年続いた日本では時代の転換点と言える出来事ですが実質賃金指数の定価が意味しているのは「日本国民の賃金の伸びが物価の上昇に追いついていない」ということです

値上げしても売れる企業と値上げで業績が落ちる企業の二極化時代へ

つまり日本の賃金水準が上がらない限り今後
値上げしても選ばれ続ける好業績の企業と値上げした結果買い控えで業績が落ちる企業に分かれるということです

値上げしても選ばれ続ける好業績企業

今回の決算で大幅な値上げをしたにも関わらず業績が好調だった例として日本マクドナルドや東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが挙げられます

マクドナルドは大幅な値上げをほぼ全メニューでおこなっていますが直近の決算では過去最高の売上高と利益を記録しています

マクドナルドのハンバーガーの値段は5年で70%アップ
マクドナルドの売上と利益が過去最高を記録

オリエンタルランドも過去4年で50%近くチケット料金が上がっていますが過去最高の利益を発表しています

好業績企業の共通点とは

このほかにも同じように値上げを行った結果、大幅な業績アップを実現した企業はありますが共通しているのは大きく下記に分けることができます
①インバウンドの取り込み
②本質的な価値の提供
③デジタルの活用

①インバウンドの取り込み

マクドナルドは特にインバウンドについて触れていませんが店舗のロケーションや手軽さ、味を知っている安心感からかなりのインバウンドが数回は立ち寄っていると考えられます。日本人旅行者が海外で日本食が恋しくなることがあるように訪日外国人もファーストフードなど手軽な食事をします、特に2週間以上の長期滞在傾向が強い欧米諸国の旅行者は一回はファーストフードを食べているのではないでしょうか
東京ディズニーについては売上高の項目で海外ゲストについて主な要因として触れています
冒頭の実質賃金は日本人の賃金のことですので海外ゲストにとっては昨年から3割以上の円安は値下げを意味しています。また海外でもインフレによって賃金も大幅に上がっているので購買力は日本人より高く、そういったお金のある利用者を取り込んでいるのはビジネスとしては必須になりそうです

② 本質的な価値の提供

少し抽象的な書き方になってしまいましたが、言い換えると「今まで安売りだった商品」は値上げしても買い控えの対象にはなりにくいです。東京ディズニーランドなど行くと、まさにゴミ一つ落ちていないどころかスタッフのレベルも海外では考えられない水準です。
また観光系では、ドーミーインを展開する共立メンテナンスなどは「ドーミーイン芸人」という企画で番組が組まれるほどコアなファンが多いため他より値段が高くても宿泊先として選ぶ人が多いです
過去30年の日本では値上げは悪だと捉えられていたので企業は値段を上げることが容易にできませんでした。なので本質的に魅力のある商品は値上げをしているのですが、より本来あるべき金額になってきていると捉えた方が良いです
裏返すと、安かろう悪かろうの商品や値段以外で競争する余地のない商品は今後真っ先に買い控えの対象となります

コアなファンの多いドーミーインは32%の売上シェアながら共立メンテナンスの利益の64%を叩き出す

③デジタル技術の活用

どんなに支持される商品でも料金を上げることは需要減少のリスクにつながります。また大幅な人手不足の日本では働き手の確保が企業の業績を左右します
そのため、デジタル技術を利用した効率化は費用の面からも競争優位性の面からも必須と言えます。
東京ディズニーで展開が始まったプレミアアクセスは利用者の単価向上に貢献するだけでなく、長時間並びたくない利用者の満足度の向上にもつながっています。
またマクドナルドのモバイルオーダーや最近導入が広がっているセルフオーダーのシステムもレジスタッフがいなくても利用者の注文を取ることができます

レジが完全になくなった海外のマクドナルド店舗

企業の値上げ力が問われる時代へ

以上のように日本においては今後、付加価値の向上やデジタル技術を活用した効率化mなどによってインフレなどの値段を価格に反映することができる商品か否かが企業の優劣を分けていきそうです
観光系の企業については過去の安くしないといけないという過去の常識からまず自分たちを解き放つ必要があります

今後の励みになりますので今回の内容気に入っていただけたらいいねをお願いします!

また2月28日に旅ナカについてのウェビナーも行う予定です。インバウンドの取込みかたとしての旅ナカについて興味がある方はぜひお申し込みください

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