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1月14日放送 藤川貴央ナビゲート「関西AM7局でつなぐ“いのちのラジオ”特集」

NHK大阪放送局、MBSラジオ、ABCラジオ、KBS京都、ラジオ関西、和歌山放送、そして私たちラジオ大阪の関西AMラジオ7局で作るAMラジオ災害問題協議会は、毎年1月に防災企画を行っている。

今年は、それぞれの放送局で5分間のレポートを作って、全ての局で放送。つまり各局のレポートが放送局を変えて7回放送される。

ラジオ大阪では14日(金)午後7時から8時まで『藤川貴央ナビゲート 関西AM7局でつなぐ“いのちのラジオ”特集』と題して7局分のレポートを一挙に聴いていただく。
*したがってこの日の『J-HITS RADI×MATION』はお休み。

「災害関連死をなくせ!段ボールメーカーの想い」というテーマで取材した。

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長引く避難所生活での健康維持に欠かせない存在として注目される「段ボールベッド」
大阪府八尾市の段ボールメーカーJパックスでは「災害関連死ゼロ」を目指して、段ボールベッドと段ボール製のパーテーションを開発し、普及活動に取り組んでいる。
Jパックスの社長で、避難所・避難生活学会理事でもいらっしゃる水谷嘉浩さんにお話しを伺った。

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30年間で約5,000人が災害関連死


ーはじめに避難所に段ボールベッドが必要な理由を教えていただけますか?


みなさんが「避難所」と聞いて思い浮かべるのはどんな光景でしょうか?
非常にたくさんの人が体育館の床などに直接寝転んで避難生活をしているというイメージだと思います。

ー避難所ってそういうものだと思い込んでいるところがありますね。

そうですよね。実は、直接床に長時間寝るということは健康被害を引き起こします。例えばエコノミークラス症候群。ふくらはぎの中で血栓ができて、それが移動して肺に詰まって肺塞栓を起こし突然死するなど避難所特有の病気を引き起こすことが分かっています。

ー怖いですね。これはずっと同じ姿勢でいることで起こるのでしょうか?

そうです。3つの要因があると言われていまして、まず「動かない」ということです。
“第二の心臓”と言われますが、人は歩くと足がポンプの役割を果たして血液を心臓に返していきます。雑魚寝だと、特に高齢者は昼間も夜も寝ているということで動きが非常に少なくなります。それが1つの原因です。
もう1つは水が足りなかったり、食事が不十分だったりで「脱水」になるのも大きな原因です。3つ目が「過度のストレス」
ほかには外傷ですね。ケガをすると血栓ができやすいと言われています。

ーすると、災害で生き残ったのに、避難所の環境によって命を落とすという人が出てしまうのですね。

まず避難所は安全な場所であるべきだと私は考えています。しかし、避難生活の中で亡くなってしまう災害関連死が発生しています。平成の30年間で5,000人近くが亡くなっているんです。

イタリアでは「関連死ゼロ」。日本は「災害大国」ではなく「防災大国」へ!

ー水谷社長は「災害関連死をゼロにしたい!」という想いで活動されているんですね。

関連死はプレベンタブルデス (防ぎえた死)と言われています。だから防いでいかなければならない。災害支援の在り方を学びにイタリアへ何度も視察に行きました。イタリアでは誰に聞いても「災害関連死はゼロ。ありえない。」と言うんです。日本でも関連死をゼロにできると私は信じています。

ーイタリアと日本の避難所の違いはどういうところなのでしょうか。

私たちは「TKB48」という言い方をしています。トイレ、キッチン、ベッドの頭文字でTKBです。トイレなどの衛生環境、そして食事は調理された温かいもの。さらにベッド。つまり生活空間を48時間以内にきちんと整えなさいという仕組みがイタリアにはちゃんとあるんです。     
発災後すぐは仕方がないのですが、2日以内には人間らしい生活に整えられるように政府が取り組んでいます。日本も是非学ぶべきだと思っています。

ーイタリアには専門省庁があるんですよね。

イタリアだけでなく、アジア諸国を含め、世界のほとんどの国に災害対応の専門省庁があるのですが、日本にはありません。
「災害大国」と言われていますが「防災大国」になって、人の命を守らなければなりません。変えていかなければならないと思っています。

段ボールベッド開発のきっかけは東日本大震災

ー48時間以内にトイレ、キッチン、ベッド。そのベッドですが、水谷社長は段ボールベッドの普及活動をされていますよね。きっかけは何だったのでしょうか?

東日本大震災の時に、私は東京にいて非常に怖い思いをして、その後「自分に何ができるだろうか」ということを考えました。その時に避難所で、低体温症で亡くなる、つまり凍死されている方がたくさん出ているということを聞いたんです。
段ボールって何となく「温かい」というのは皆さんご存じだと思います。その温かい段ボールで寝床を作れば凍死を防げるのではないかと考えたのが最初です。

ーそれから設計図を作って…

ほとんど走り書きでササっとやって試作して大急ぎで仕上げました。2011年の4月1日には石巻市の赤十字病院に200台届けました。

ー素晴らしい行動力ですね。

なんとか力になりたいという一心で、あのころは無心になってやっていました。

ー大阪から段ボールをトラックに積んで、何回も往復して…何千もある避難所にベッドを届けるのには限界があったのでは?

土日しか休みがないので、ほとんど徹夜で仙台まで行って徹夜で戻って来るみたいなことを毎週のように繰り返していました。
やはり1人でできるわけなくて、色々助けてもらいました。
例えば大手の段ボール会社とか業界に声をかけて、段ボールに携わるプロフェッショナルが集まれば何とかなるのではないだろうかと考えて、早い段階で設計図を無償で業界団体に提供しました。

ー段ボールベッドを届けた避難所での反応はいかがでしたか?

被災者の皆さんには非常に喜んでいただきました。ただ、どうしても避難所の入り口で職員の方に「ダメだ」と断られ続けました。9割くらいの避難所で断られました。

ーどういう理由で断られたのですか?

避難所を管理している行政に「ベッドを導入する」という概念や仕組みが当時無かったんです。「前例が無いことをやるというのは非常に難しい」ということで断られ続けました。
悲しい気持ちと言うよりは「怒り」の方が強くて、何としても届けたいと
諦めずに活動を継続しました。

新型コロナウイルス感染症の拡大で変わった避難所の姿

ー2021年は東京オリンピックの選手村で段ボールベッドが使われ、さらに新型コロナウイルスの感染拡大もあって注目されたということはあったのでしょうか?
    
新型コロナウイルス感染症対策という、今まで経験したことのない厄災。
目に見えないものが蔓延するという点で、避難所もクラスターになり得るということで、行政の中にも雑魚寝ではなくて床から距離を取る「ベッド化」を進めよう、パーテーションを作ることによって感染をできるだけ予防していこうという動きがありました。

ー一方で、避難所にベッドがあって間仕切りがある風景というのは、欧米の避難所では100年前からすでにそうなんですよね。

そうなんです。実は写真があって、100年前の写真にベッドと間仕切りが写っています。やっと100年たって日本も追いつきました。
「雑魚寝は異常だ!」と一般の方に思ってもらえるようになって欲しい。

7㌧の重さに耐え、床より10℃温かい段ボールベッド。インフラとして活用を

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ーJパックスの「暖段はこベッド」特徴を教えていただけますか?

まず「段ボールって紙でしょ!?強度は大丈夫なの?」とよく言われますが、均等荷重で約7㌧。7,000㎏に耐える設計になっています。

ー7㌧!?そんなに頑丈なのですか!?

実は先日、10年ぶりに東北へ行ってきました。陸前高田市の92歳の女性が、東日本大震災の発生当時から9年間、段ボールベッドを使って下さったということで会ってきました。9年間毎日使えるほどの強度がありますし、特に寒冷地では体育館の床に比べてベッドは約10℃温かいということが分かっています。体育館の床は体温を奪っていくので、低体温症を引き起こすなど危険な状態を招きますが、段ボールは保温してくれます。

ー当時の避難所の床は、氷のように冷たかったです。

そうですよね!本当に5分も耐えられないくらいの冷たさです。強度があり、温かく、かつ段ボールは非常に生産しやすい。うちの会社でも1日1,000台は作れますし、大手なら5,000台くらい作れます。
さらに段ボール会社は全国に2,500社くらいあるんです。本当にたくさん各地に段ボール会社があるので、もしどこかで災害が起こっても、その近所の段ボール会社がベッドを作って届けることができる。インフラという意味合いで段ボールベッドを捉えると、使わない手はない。

ーしっかり使っていきたいですね。

これが当たり前になっていってほしいです。

ー最後に改めて、水谷社長が目指していることを教えていただけますか?

この10年間、段ボールベッドの普及活動に取り組み、随分広がってきたと思っています。ただ、ベッドがあれば避難所はそれでOKなのか?というわけではないと考えています。食事の改善やトイレが衛生的かどうかなど課題はたくさんあります。今までのようにおにぎりやカップラーメンが延々続けて出るということではなく、調理された温かい食事を提供することで、栄養面はもちろん、前向きな気持ちになる、元気になるような食事の提供ができるような仕組みづくりにも今取り組んでいます。
トイレ、キッチン、ベッドを48時間以内に届ける「TKB48」活動を継続して「災害関連死ゼロ」をこれからも目指していきますよ。

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水谷社長、お忙しい中お時間をいただきありがとうございました!
1月14日(金)午後7時からの『藤川貴央ナビゲート 関西AM7局でつなぐ“いのちのラジオ”特集』も是非お聴き下さい。

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