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作品「白兎と黒兎」とNew Zealandの野ウサギのはなし

私は24歳のころに1年間ワーホリでニュージーランドに住んでいて、その時に本格的に独学で絵を始めたこともあって、New Zealandでの経験は自分の作品に大きな影響を与えている。今でも自然や植物、動物などをモチーフに創作しているのもそのころの経験があったからだと思っている。

ここ最近の作品の一つ「白兎と黒兎」は、ウサギモチーフの版画デザインなのだけど、ウサギは自分にとってニュージーランドでの滞在時にかかわることが多かった動物の一つなので、当時の記憶を思いだしながら制作した。

そして、そのウサギにまつわる自分の記憶は、どちらかというといい思い出ではなかったのです。


白兎と黒兎

まずはウサギの作品の紹介。(是非上のInstagramから作品をご覧下さい🙇🏻‍♂️)

Procreateでデジタル作画をした後に、トナー転写をして版にデザインをうつした。トナー転写については↓↓

今回ウサギモチーフで描いたのは、3歳の長女が「ウサギ描いて」と言ったから。そして、絵を描いたり版にうつしたりしてるうちにニュージーランドにいたときのことを思い出した。

New Zealand南島の町 Cromwell(クロムウェル)の話

私が1年間のNZ滞在のうち、1か月ほど過ごしたのが南島のオタゴ地方のど真ん中に位置するクロムウェルという町。

近くにはゴールドラッシュでかつて栄えた町や、1時間ほど車を走らせるとアウトドアアクティビティで有名なクイーンズタウンという町がある。

このクロムウェル自体はワイン畑や果物で有名だけど、特別なにか面白味がある町ってわけではなく、私は友人たちと乗り合いで南島を旅しつつ、仕事が見つかれば短期で働いては別の町に移動するという生活をしていて立ち寄った町の一つだった。

私はドイツ人、フランス人、チリ人の3人と一緒に移動し、この街にたどり着いてインフォーメーションセンターの掲示板に貼られている「vineyard worker(ブドウ畑で働く人) 募集!」の張り紙を見て即連絡。「俺たち超経験豊富だから!」と若干誇張して売り込み仕事をゲットしたのでした。

初めの数日は労働者が短期滞在する小屋みたいなところで寝泊まりしたのだけど、1週間ほど働いたのち、不動産屋に行って空き家を短期でレンタルしてシェアしながら住むことに。

すると、一緒に旅してたドイツ人男性が「自分ひとりだと筋トレが長く続かないから、一緒にやらない?」と言って誘ってきたこともあって、それ以降ブドウ畑で夕方まで働いた後に約6~7km弱の距離を畑から走って帰る&帰宅後1時間の筋トレ、、という日々を過ごすことになってしまった。

忘れられたころに出てくる「ウサギ」のはなし

そういえば話のはじまりは「ウサギ」だったのだけど、なぜ自分がウサギの絵を描いてこのクロムウェルで過ごした日々を思い出したかというと、

仕事終わりにジョギングして帰宅するとき、道路わきに野ウサギが巣を作っていて、走る振動で頻繁にウサギが飛び出してくるのだ。

New Zealandでは、野ウサギによる害が結構深刻で、数年前には国を挙げてウサギ駆除に乗り出したほど

私のジョギングコースのいたるところに巣穴があって、飛び出すたびに車に轢かれるという惨劇が起こるのです(※New Zealandで車を運転していると、数十メートルおきに動物が轢かれた死骸が転がってることがよくある)

走るたびに飛び出してくるもんだから、本当に心臓に悪く、マジでやめてくれって思いながら走っていた記憶がよみがえる。

そういえば、クロムウェルの町では週末のバザーでウサギ肉が沢山売られていたなぁ

ウサギの巣穴探し中に同僚が神隠しにあった

私はNZ滞在中にブドウ畑での仕事は3か所の町で経験した。そして数ある仕事の中で一番奇妙な作業をしたのがこのクロムウェルの町のブドウ畑だった。

ある日、いつもの畑とは違うところに連れていかれ、雑草が自分の背丈以上にまで伸びた場所で降ろされ、上司が赤い塗料のスプレー缶を手渡しこう告げた。

「おまえたち、これからこの畑の端から一列になってスプレー缶をもって歩け」

「雑草が伸びているから見渡しが悪く、ウサギの巣穴があるとトラクターがハマって出られなくなるから、まずは人の足で巣穴を歩いて見つける」

「ウサギの巣穴があったらスプレーで目立つように色を付けろ!いいな?」

普段の仕事から比べると、「ただ歩いて穴を見つけるだけ!」「なんだ、今日の仕事超楽じゃん!ラッキー」、、、なんて思っていた自分は数分後に後悔することになったのだ。

さあ、仕事スタート。

まず所定の位置につき、隣の人と手を伸ばせば届くくらいの距離感で歩き始めたわけだけど、身長175cmの自分でも隣の人が見えないくらいの高さに伸びた雑草は、視界を遮るので思っていた以上に何も見えない。藪漕ぎをしてる気分だった。

たとえて言うなら、まるで巨大迷路の中を目隠しで進んでるかのような感じ。

自分の隣を担当したおばちゃんは地元出身の人で、普段の畑でも一緒に仕事をしたことがある顔見知りだった。彼女は、物腰も柔らかくいつも笑顔でお菓子とか差し入れしてくれる人で、最初は

「あはは、何も見えないねぇこりゃ」とか「今日はちゃんと朝飯食ってきたかぁ~?」とか話をしながら歩いてたんだけど、突然おばちゃんが

「ぎゃあぉわあぁああ~~~!!!」

と叫びだした。

どうやら足元をウサギが横切ったらしい。ジョギングの時と同じだ。

急に近寄ってくる足音で驚いたウサギが、まったくもって視界の悪い足元を猛スピードで走り回ってる。

ウサギと言っても結構デカく、多分日本の狸くらい、小型犬よりも少し大きいくらいのサイズなので、足元をビュンと通り過ぎるとマジで怖い。

これはやばい、めっちゃ恐怖

落ち着いて耳を澄ますとあちこちで叫び声、、いや悲鳴が上がってる。自分にも何度もウサギの突進があり、足元を見えない何かが「ダダダダダッ!」と何度も過ぎ去った。

さっきまでの世間話をする余裕はなく、隣のおばちゃんに関してはずっと叫んでテンションがおかしくなっていた。どうやら足元に巣穴が沢山あるらしい(自分は運が良かったのか足元に巣穴はあまりなかった気がする)。

大変そうだなぁと思っていると、なんとなく横目に見えていたおばちゃんの姿が一瞬で僕の視界から消えたのだ。

「Fxxkin' bloody rabbits……..(この、、糞ウサギが!!!!)!!!」

そう、あの優しいおばちゃんがブツブツ言いながら、地面から這い出てきた。ウサギの巣穴に落ちたらしい。のぞかせてもらうと自分の腰くらいまで埋まる1mくらいの深さの穴があって、普通に人2,3人はすっぽり隠れられるくらいデカい巣穴だった。

ナニコレ、マジデコワイ

視界が悪く、足元を猛スピードでウサギが走り回るだけでも恐怖なのに、人が一瞬で消えるくらいの深さの穴があちこちに点在しているのだ。

確かにこんな畑にいきなりトラクターが入ったら確実にタイヤはハマるし、大事な事前作業であることは分かった。

とまぁ、こんな具合で私がNew Zealandに住んでいた時の仕事の経験から、ウサギを見るとこの時のことを思い出すのです。

まとめ

普段の作品に関しては、モチーフごとに特別思い入れを込めて制作に携わることはないのですが、今回はウサギの絵を描いていて懐かしく感じたので、海外滞在時の話を書いてみた。

今後も、モノづくりを通して思い出した昔話など書くことがあるかと思いますが、絵の方を見てもらって応援していただけるととっても喜びます。

https://www.instagram.com/noahsartgallery/

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