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【論文レビュー】日本企業は組織としてなぜ学べないのか?:リクルートワークス研究所(2023)

日本のビジネスパーソンは本当に学ばないなと思います。学べない理由をこれでもか!と列挙して正当化する状況をよく目にしますが、そこまで言い訳を言わなくても良いのではないでしょうか。学ばないことが、個人にとって、組織にとってどのような影響を及ぼすかについて、リクルートワークス研究所さんは示唆のあるレポートを出されています。

リクルートワークス研究所. (2023). なぜ人は自主的に学ばないのか 学びに向かわせない組織の考察. Works Report 2023.

学ばない日本のビジネスパーソン

言い古されていることではありますが、日本のビジネスパーソンは学ばない方が非常に多いです。リクルートワークス研究所さんのデータでは、OJT、Off-JT、自己啓発、のいずれの形態においても実施割合が低いことが経年で明らかになっています。

p.6

日本の古き良き時代に盛んであったOJTの比率が機能しなくなった後、それ以外の学習手段も伸びていないというなかなか厳しい状況であることがよくわかります。

学ばない理由

では、なぜ個人は学ばないのでしょうか。リクルートワークスさんは2022年の調査で以下のように示しています。

p.8

学習意欲がないわけではなく、何を学ぶべきかわからず、手段や方法がわからないから必要性を感じていない、というあたりでしょう。一番下にある「周囲・上司に学びを阻害されている」というのも、就業時間後に講義を受けたいのに「仕事を優先しろ!」と言われたとか、昼食休憩時のオンライン学習がダメと言われた、とかその辺りが理由でしょう。学びの多様な手段がわからないがゆえの他責的な理由の提示のように思えます。

組織の吸収能力

個人として学べないという事態は組織として学べない状態を生み出します。神戸大の服部先生は、組織の吸収能力(absorptive capacity)を提唱したコーエン&レヴィンサールを踏まえて、組織がなぜ学べないのかについて以下のように述べています。

彼らの議論が重要なのは、組織としての学習の失敗を、情報を理解するための「事前の情報/知識」の欠如に求めている、ということだ。情報に接したとき、その重要性に気づき、それを理解し、自社内に取り込んで利用するた めには、それを理解するための「事前の情報/知識」、いわば学びのための「レディネス(学びの前提条件)」が、組織の中に担保されていなければならないのである。

p.20

この点、企業で働いていると、なるほどー!と納得感があります。あるサーベイデータを同じように見ていても全く示唆を出せない組織というものは、残念ながらあります。

「なんでこのデータから自身の業務テーマとつながると考えられないのだろう?」と不思議に思うことがあるのですが、服部先生の引用箇所を踏まえると、レディネスがないために①データから何を見出すのか、②その示唆が自分たちの業務にどのように結びつくのか、を考える土台がないのでしょう。

ビッグデータやGPT-4の扱い方の怖さ

こうしたレディネスのない組織が仮に人事部門だったとしましょう。この場合、とても恐怖に感じるのはビッグデータGPT-4をどのように活用するかという点です。

おそらく、学習習慣のなく業務への当て嵌めを考えない方にとっては、ビッグデータやGPT-4は正解をくれるものという位置付けになってしまうのではないでしょうか。要はビジネス書と同じ位置付けです。ビジネス書には著者の意見の理由が書かれているので結論の背景を辿ることができますが、ビッグデータやGPT-4はブラックボックス化されている領域が大きいです。出された結論だけを鵜呑みにした企画が通ってしまうことは、今後の恐怖とも言えるかもしれません。

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