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【論文レビュー】リカートと新人間関係論:進藤(1968)

ある資料をまとめている中で、レンシス・リカート(Rensis Likert)と新人間関係論についてわからないことがあったので調べてみました。半世紀以上前の論文ですが、なかなか濃厚な内容でリカートが何を私たちにもたらしたのかを垣間見ることができました。

進藤勝美. (1968). 人間組織の価値: リカートの所論を中心に (森順次教授還暦記念論文集). 彦根論叢, (第 132・133 号・人文科学特集第 23 号合併), 255-272.

リッカート尺度

本論文で扱われているレンシス・リカートは、あのリッカート尺度を開発した人です。

「1:全く同意できない、2:同意できない、3:どちらともいえない、4:同意できる、5:非常に同意できる」というような5件法で測定する、アンケートなどで使われる心理検査的回答尺度です。企業でのエンゲージメントサーベイや、なんらかのマーケティング調査でもお馴染みの尺度でしょう。

組織価値を規定する3つの変数

リカートは、人間関係論を乗り越えるために科学的手続きを適用したとされます。そこで組織価値を明らかにするために、①基本変数、②媒介変数、③結果変数という3つの変数を設定しています。つまり、現代における実証研究の萌芽となる存在であるとも言えるでしょう。

システム4

リカートが提唱した概念の中で最も有名なものの一つにシステム4というものがあります。これは、組織の管理システムを比較分析し、システム1(独善的専制的)、システム2(温情的専制的)、システム3(協議的)、システム4(参加的)という4つの種類に分類できるとされており、組織はシステム4へと改めるのが望ましいとしています。

 システム4の経営を特徴づけている基本変数は、(1)支持的関係(supportive relationship)の原則と、(2)集団的な意思決定と監督の過程、及び(3)高い達成目標(high performance goals)の三つである。

p.260

人間関係論の考え方を引き継ぎながら、それをいかに組織への価値として科学的に可視化するかに取り組んだことが読み取れるようです。

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