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【論文レビュー】シェアド・リーダーシップを促すマネジャーの関与のプロセスと行動とは?:堀尾・中原(2023)

中原研の先輩である堀尾さんと中原先生との共著論文を読みました。シェアド・リーダーシップをテーマとした内容です。職場のシェアド・リーダーシップに影響を与えるメカニズムについて、企業における管理職のどのような行動がどのようなプロセスによって促進するのかを明らかにされています。

堀尾志保, & 中原淳. (2023). 管轄チームの共有型リーダーシップ促進に向けた企業管理職の行動過程と行動内容に関する探索的研究. 日本労務学会誌, 24(2), 21-41.

共有型リーダーシップとは

まず共有型リーダーシップという概念から見ていきます。孫引きでスミマセンが、著者たちはZhu et al.(2018)に基づいて共有型リーダーシップの特徴は以下の3つであるとしています。

  1. メンバー間の水平方向の影響力である

  2. チームを単位とする創発的現象である

  3. リーダーシップの影響力がチームメンバー間に散在する状態である

共有型リーダーシップを促す企業の管理職のプロセスと行動について、15名のマネジャーを対象としてインタビューを行い、M-GTAで考察するという研究概要です。

共有型リーダーシップを促進するプロセス

本論文では、共有型リーダーシップを促進するプロセスとして3つのフェーズがあることを明らかにしています。1つ目は①場づくりフェーズです。つまり、直接的にメンバーに対して影響を与える前に用意周到な準備として職場における場づくりの段階が必要であるということです。

企業におけるリーダーシップやマネジメント研修では、何をメンバーに対して行うか、タスクをどのように付与するか、といった内容がほとんどですが、共有型リーダーシップを促進するには準備段階が必要不可欠である、という点はとても示唆的です。

準備の後には、②共有型リーダーシップ醸成着手フェーズ、③共有型リーダーシップ促進フェーズ、というように続きます。文字で伝えるのには限界がありますので、J-STAGEでオンライン公開されたらぜひ結果図をご覧ください。

マネジャーの行動

3つのフェーズはそれぞれ複数のカテゴリーから構成されます。本研究の結果として明らかになった行動のうち、変革型リーダーシップなど先行研究では見出されなかった以下の4つの行動がカテゴリーとして抽出されたとしています。

  1. 社会・事業・チーム・自身のありたい状態を内省する

  2. 自己研鑽と自身のケアを行う

  3. 誰もが安心して意見表出できる場をつくる

  4. 誰もが安心して意見表出できる場を維持する

これらのうち1〜3がプロセスにおける①場づくりフェーズに位置付けられています。そのため、プロセスと組み合わせて考えますと、場づくりフェーズにおける準備の行動が求められるというのが本論文の理論的示唆であり、実践的示唆でもあると考えられそうです。

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