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【論文レビュー】私たちは組織をどのように認識するのか?:山田(1993)

組織アイデンティフィケーションに興味を持って調べていく中で、著者の一連の論文が出てきました。数年前にも一部読んでいたものもあるのですが、改めて読んでみて興味深い内容でいくつか読んでみることになりそうです。

山田真茂留. (1993). 組織アイデンティティの現代的変容. 組織科学, 27(1), 15-25.

境界で組織を認識する!?

私たちは、自分が勤めている企業や部門をどのように認識しているのでしょうか?たとえばオフィスという物理的な空間をイメージするかもしれません。しかし、他社から買収された後も同じオフィスに勤めるという場面を想定すると、買収される前のA社ではなく買収された後のB社に勤めているという差分があります。つまり、物理的な環境だけでは組織を認識することは必ずしもできないということになります。

では、物理的な環境そのもので認識できないとしたら、どのように組織というものを捉えられるのでしょうか。

具体的な諸事象も,抽象的な境界に結びつく限りにおいては,組織の形成や統合や独自性に関してそれなりの役割を果たし得る. ならば,組織間の差異性を抽象的に表わしている境界それ自体が,組織アイデンティティを基礎づけているのではなかろうか.

p.18

著者は、抽象的な境界が組織をどのように認識するのか、という組織アイデンティティの礎になっているとしています。普段、あまり自覚しない組織アイデンティティだからこそ、そこを自覚することによって気づきを得られるものは多いのではないでしょうか。本論文でもアンダーソンの『想像の共同体』にも言及されていますが、このあたりは社会学と密接に関連するようです。

組織文化論へ

上でみたように、個人が組織をどのように認識するかについて、社会的アイデンティティ論自己カテゴリぜーション論を基に著者は前半で整理されました。その上で、組織に属する人々の認識を包摂する組織からのアプローチとしての組織文化論が1990年前後の一連の研究群で言われるようになったとしています。

組織内に堆積している具体的な諸事象に訴えかけることによって,外的な適応と内的な統合を促進しながら,組織アイデンティティの増強を図るというのが,組織文化論の提唱する戦略にほかならない.

p.19

この辺りの議論は、著者も実証主義パラダイムのものであると述べておられるように、組織文化を実体的なものとして捉える強い文化として、組織が社員に上から浸透するというアプローチのものを想定しておられるようです。組織アイデンティティの一つの側面としてこうした作用があることを理解しておくことは重要でしょう。

実証主義的アプローチと解釈主義的アプローチ

他方で、実証主義的な強い文化論と対比する形で、解釈主義的なアプローチで組織文化を捉えるものもあります。坂下先生の一連の論考に詳しいのですが、たとえば『組織シンボリズム論』ではざっくりと以下のようなことが書かれていますので、ふんわりと理解されたい方は私の簡単なまとめをご笑覧ください。


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