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【論文レビュー】「ほめ」がもたらす多くの効用とわずかな危険性について:青木(2005)

本論文では、ほめが何に対してどのような影響を与えるのかについて、先行研究をもとにまとめてくれている大変ありがたい存在です。動機づけ自尊感情に対する影響と、危険性についてまとめていきます。

青木直子. (2005). ほめることに関する心理学的研究の概観. 名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学, 52, 123-133.

動機づけとの関連

ほめが影響を与えるものとして最も検証されているものは動機づけです。社会的承認やポジティヴなフィードバックは動機づけを維持・促進させるという研究が紹介されています。

ほめと動機づけの関連については、言語によるほめ物質を与えるほめとに大別し、それぞれを比較しながら動機づけとの関係が実証されてきているようです。幼少期や学齢期のほめについての研究群が多いのですが、本論文で紹介されている内容からすると、こうした研究での知見がマネジメント研修でも活用されているのだなと理解できました。

感情的側面との関連

また、ほめは感情的側面にも影響を与えることがさまざまな先行研究で明らかになっていると著者はしています。こうした感情の中でも多く実証されているのが自尊感情です。

ほめは、短期的には笑いや笑顔といった情緒的反応を引き起こし、その上で中長期的には自尊感情に対してポジティヴな影響を与えるとされています。幼少期や学齢期の子どもを対象とした先行研究がいくつか載っていますが、教師をはじめとした周囲の人々からのほめの自尊感情への影響の強さはなかなかすごいものがあります。

ほめることの危険性

まず、Dweck(1999)を挙げて、生徒が教師からほめられるということに対して依存的になってしまい、受動的な態度を生徒に促してしまうというリスクがあるとしています。小学校の頃を思い返してみてください。教師からほめられることを目的として行動する生徒っていましたよね。たしかに受動的な行動になってしまったり、外的報酬がない時に意欲が低下したりといったモラルハザードの問題もあるかもしれませんね。

教師の観点に立った時のリスクを提示しているのがKohn(2001)です。生徒がほめを求めるということを逆手に取り、教師にとって望ましい行動をとらせるために手段としてほめを活用するというリスクもあるとしています。ただ、こうしたリスクはあるものの、ほめそのものには子どもの発達にとって重要な作用があるというのが著者の主張であり、危険性を自覚した上で行うものなのでしょう。

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